共和党スター誕生
共和党大会は9月1日から4日間ミネアポリスで開催される。 同じ日に大型ハリケーン・グスタフがメキシコ湾からルイジアナに上陸するとあって3年前のハリケーン・カトリスによる大被害の二の舞にならないようニューオルリンズの住民は強制避難させられることになった。 TVはこの報道に貼り付けとなって共和党大会は急遽予定を変更せざるを得なくなった。 共和党としては出鼻をくじかれる不安なスタートになった。
注目はなんと言っても数日前に発表された副大統領候補サラ・ペイランの氏名受諾演説である。 彼女のことはほとんどの人が知らないしVP候補として発表された直後に彼女の17歳の娘さんが妊娠5ヶ月であることが報道されこれが保守派 (いわゆるSocial Conservatives) の代表と目される彼女の家庭に “起こりうる“事なのか閑閑諤諤大騒ぎになってしまった。 彼女の問題だけでなくマッケーンが前以てこれを知っていたのか、知っていてなぜ彼女を指名したのか誰もが疑問に思うところである。 取り扱いを間違えば共和党が戦う前に沈没しそうな爆弾ニュースであった。
しかしこんな不安とプレッシャーの重なる中で彼女の受諾演説はすべてをぶっ飛ばすほどの素晴らしい出来栄えであった。
目だった経歴もなく知名度も低い(全国的には阿智得たことだろう無名に等しい)一人の女性が一躍大政党のVP候補として登場し堂々と国民を納得させるような演説をした。 これがアメリカの底力である。 もっともこの素晴らしい演説を書き上げたスピーチライターが居るに違いないがそれを数日で立派にこなすのは十分な才能である。
演説内容の8割は国家の安全保障とエグゼクティブ・マネージメントの経験に費やされた。 オバマのイラク戦争に対する姿勢を敗北者として捕らえ国家の重大事に関して判断する経験の無さを大統領としての資格なしとこき下ろす戦略である。 同時に自分の家族を紹介するにあたり自分を“Hocky Mom”と称し自分の夫は漁師であり息子はイラク戦争に参戦中、二人で5人の子供を育ててきた普通の家族であることを強調した。
つまり大都市を除くアメリカの大部分のスモールタウンのスモールファミリーと同じクラスであることを強調してこのクラスを取り込もうとする作戦である。 これは過去2回の選挙でブッシュがとって成功した選挙戦術でもあるのだ。 共和党が練りに練った完全な選挙演説といってよいであろう。 彼女もその役割を十二分にこなしたので共和党はじめメディアの承認を勝ち得たことと思う。
しかしこれはあらかじめ描かれた塗り絵をきれいに仕上げたに過ぎない。 今後メディアのインタビューとVP同士のディベートが待っている。 その時が彼女の真価を問われるぶっつけ本番の試練である。
これで民主党対共和党の勝負は五分五分となった。 次回のPollの数字を見るのが楽しみである。