2009年1月29日木曜日

「いま」日本ができること、やるべきこと

大前研一 「いま」日本ができること、やるべきこと (日経Online)

大前さんの説明は数字とグラフを駆使してわかりやすく論理明快、しかも他国(特にアメリカの)内部事情に明るい。 説得力がある。
悲観主義者の集まりの日本の中で「日本は、変わるための手段(資金や技術)をすべて内側に持っていて、外国から借りてくる必要がない。現在、こういう国は日本だけである。」という積極的な意見を持っているのはお前さんだけだ。
「変わるための手段を持っている日本が、実際にこうしたことをやるかどうかは、リーダーシップ次第である。・・・・・日本の、そして世界の救済に入ると明言してくれるリーダーの出現を、今年はいつも以上の期待を持って待つことにしよう」といわれるがここが問題である。 
待っていても良いリーダーは現れそうにない。  森元総理がキングメーカーになって送り出した3人の首相の体たらくを見れば今の政治の貧困の原因がわかる。 森さんのような人が日本の政治を牛耳っているようではまだまだ日本の将来は開けない。自民党では渡辺喜美元行革大臣クラス、(もう自民党ではないが)民主党では前原誠司元民主党党首クラスがトップになって政治を行えるようにしなければならない。
全国の有権者よ 自民党でも民主党でもかまわない。具体策は次回の選挙で長老クラスを全部落選させて新人に置き換えることだ。 次回の選挙は自民党が勝つか、民主党が勝つかが問題ではない。 日本の国民が本当に国の将来を見据え自分たちの生活を守れるかどうかは国民一人ひとりの市民度による。 愚痴ばかりこぼしているときではない。 大事な一票を行使して今こそ Change! “Yes We Can”  

2009年1月23日金曜日

オバマ政権の実務と演出

オバマ政権 実務と演出

大統領就任式の翌日1月21日には上院でクリントン新国務長官が圧倒的多数で承認され1月22日には早速国務省入りしてホールに国務省の職員を集め、オバマ大統領のもとでバイデン副大統領や国防省、CIAなどと一致協力して国家の安全と国益を守るため外交を進めてゆくと基本方針を演説した。
この日の彼女は笑顔がいっぱいの晴れやかな顔をしておりロビーの階段の中段から時折ジョークを交えながら1000人を超える職員に呼びかけた。 
“I believe with all of my heart that this is a new era for America," Clinton told her colleagues. "President Obama set the tone with his inaugural address. ... Robust diplomacy and effective development are the best long-term tools for securing America's future.”
何度も言うがヒラリー・クリントンの抜きん出た頭脳、不屈の闘志、ねばり、卓越した弁舌は予備選キャンペーン中に証明済、しかも弁護士、アーカンソウ州知事夫人、クリントン大統領夫人、NY州選出上院議員と30年近く政治の中枢にいて人脈も豊富。 国際的にも最もよく知られた有能なアメリカ人女性でありいかなるポジションにつこうと右に出るものはいない。 特に内外とも厳しい情勢にあって彼女は国務長官として最適であり実績を上げるものと期待している日とは多い。
今日の圧巻は午後3時ごろオバマ大統領とバイデン副大統領が国務省を訪問しクリントン国務長官が新任のミッチェル中東問題担当大使(N.アイルランドとイングランドの紛争を仲介・調停を纏め上げた)とホルブルック・アフガニスタン・パキスタン担当公使(全国連大使、国務省次官)を紹介した。その後バイデン副大統領が外交問題の重要性を力説しミッチェル大使とホルブルック代表がそれぞれ豊富を語った。 いずれのスピーチも示唆に富み経験豊かな専門家であることを確認した。 上の5人がひな壇に並べば圧巻である。 これ以上強力な外交チームはありえない。 オバマ大統領の外交への意気込みが感じられ国務省の職員は大いに鼓舞されたことと思う。
最後に演壇に立ったオバマ大統領は一般外交演説とも取れる重要な演説を行った。 
-ブッシュ時代の一国主義を退けて国連および諸外国と協力して世界の問題解決にあたること。 
-イスラエル・パレスチナ共存を支持しそのための援助は惜しまない。 ハマスの暴力は断固退ける。 
-テロとの戦いのキーはアフガニスタンの対タリバン・アルカイダにあり早期に作戦を展開する。

これに先立ってオバマ大統領は国際的に評判の悪いキューバ・ガンタナモ基地にあるテロリスト収容所を閉鎖することを発表した。 リスクを冒して収容所を閉鎖するのはアメリカは変わろうとしているまず最初に印象ズけるためだと思われる。 イラクにせよアフガニスタンにせよ諸外国の協力なくしては解決できないし財政的にもアメリカに重い負担なっている。 まず自ら率先実行し相手を協議に引き込もうとするオバマ流のやり方だ。

いずれにせよオバマ政権は矢継ぎ早に政策を実行に移しアメリカ国民と世界にアピールしている。 心憎いばかりの演出である。 いくら良い政策を策定しても国民の理解と支持を得なければ実効は難しい。 オバマ政権は実務と演出を見事なスピードで実行している。

このようなオバマ新政権を見て麻生首相、内閣、自民党、小沢民主党はどう考えているのだろうか? 普通の人ならこうありたいと誰もが思うはずだが何が原因で彼我の差がこんなにあるのか? いずれの新聞論説やコラム、ブログの意見を見ても日本の政治の体たらくを嘆くばかりで政治を変えるためにどうすればよいのかの具体案を提唱する人はいない。
行動できる人も今は渡辺元行革大臣のみ。 これではいつまでも日本にChangeはやってこない。

2009年1月21日水曜日

ベッドミンスター 冬    (雪景色)

1月20日 オバマ大統領就任式の日 Bedminster New Jerseyは昨夜からの雪もやんで朝から薄日が差し始め時間が経つにつれて青空が広がった。 首都ワシントンの熱気はないが町の人々は静かにこの日を祝っているのが軒下や道端に星条旗が掲げられていることで伺われる。














2009年1月20日火曜日

就任式と就任演説

就任式と就任演説

1月20日 オバマ大統領就任式。 ついにこの日がやって来た。
 
2007年の9月に候補者のディベートが始まったとき バラック・オバマという1人の黒人候補がいることを知った。 初めはスピーチも滑らかでなくあまりシャープとは思わなかったし当時の私の頭では黒人候補が民主党の指名を獲得することさえ難しいと思っていた。
ほぼ1年前の2008年1月3日 最初の予備選アイオワ・コーカスで大方の予想をひっくり返して1位に躍り出て一挙に注目を集めた。 アイオワは中北部の農業が中心の白人州である。 保守的な田舎の州というイメージがある。 そこで1位になった理由はどこにあるのだろうか。
コーカスとは少人数の集会でペーパーの投票ではない。 各候補者の支持者がお互いに支持する理由を話し合って自分の支持者を絞ってゆく。 (詳しい選挙の方法はここでは省くが)対話という民主主義の原点がここにある。 
オバマは人柄が穏やかで一方的に自己主張するタイプではない。 対話が得意だ。 直接話を聞いたわけではないが自然に引き込まれる人間的魅力があるといわれている。 町から町へオバマは対話を繰り返した。 権威を振りかざすことなく他人に耳を傾ける。 若者に人気があるのは当然だろう。 その若者たちが地道に草の根運動を展開した。 今までにない大統領候補だった。 予備選で1位になっても驕らず負けても変わりなく選挙民に媚びずあくまで信条を訴え挑発に乗らず中傷にめげず常に落ち着きぶれない候補だった。 ついに大統領の地位を勝ち取った11月4日、誰もが歴史的瞬間だと歓喜の渦に巻き込まれていた時さえオバマは一人厳しい顔をしていた。 大統領になると決まった瞬間から厳しい試練が待っていることを自覚しているような雰囲気であった。 しかし”Change”は言葉だけでなく本物になったのだ。
 
昨日の氷雨がすっかり上がって気温は零下ながら朝から冬の空は晴れわたった。 早朝から歴史的な大統領就任式を自分の目で確かめようとする人が集まってくる。 宣誓式が始まる2時間前にはCapital Hill(国会議事堂)まえのThe National Mall広場からLincoln Memorial広場にかけてすでに200万人の人で埋め尽くされた。 

宣誓式が終わると注目の就任演説が始まった。 
演説はレトリックもフレーズもなく予想されていたリンカーンやM.L.キング牧師の演説からの引用もなかった。
理想よりも現実に目を向け精神よりの方針を説いた。 就任演説というよりも施政方針演説(State of Union Address)に近かった。 現在の経済への対応や世界情勢への対応は一刻の猶予もない。 経済の厳しさを国民と共に理解し克服する。他国とは文化や宗教の違いを理解して対話する。しかしテロなど破壊主義者とは対決する。 特にイスラム世界に直接メッセージを送ったのには驚いた。 それだけ本気でイラク・アフガニスタン問題とパレスチナ問題を解決しようという姿勢の表れか?- 現実主義のオバマ方針を如実に表現した演説だと思う。

「さあ明日から一気に仕事にかかるぞ!」といわんばかりの明確に方向を示した演説であった。

2009年1月18日日曜日

オバマさんの手紙

オバマ大統領就任式が後2日に迫った。 ワシントンではすでに就任式の祝賀行事が始まっている。

本屋やスタンドではオバマの関連の雑誌がぎっしり並べられ雑誌の表紙はオバマさんの顔ばかり。 
全米どこでも日曜版の新聞におり込まれている”Parade"という小さな雑誌がある。わずか24ページの雑誌だが発行部数は全米No.1 紙面の半分はコマーシャル・広告で占められているけれどその時々のトピックやスター・有名人のゴシップとニュース、料理、健康、漫画、クイズと盛りだくさんで結構見るところがある。 コラムは短いので読みやすい。

今日の”Parade"の表紙はオバマ一家、”What I Want For You-And Every Child" -A Letter to My Daughters- By President-Elect Barack Obama
このコラムはParade用に書かれたのもと思うが一読に値する。 

<拙訳>
Dear Malia and Sasha

この2年間、二人とも選挙キャンペーンに参加したりピクニック、パレード、収穫祭に行ったり親としては進められないいろんなジャンク・フッドを食べたりして楽しかったと思います。

2年の長い間私は家を空けていたから穴埋め新しい子犬をかってあげるのではありません。 私自身も君たちに合えずに寂しい思いをしたのです。 

今日は君たちになぜ私が家族一緒に次のたびに出かけるのか説明しようと思う。
私が若い頃は世界は私のためにあって私の道を進んで成功しほしいものを手に入れる、それが人生だと思っていました。 ところが君たち2人が私の世界に現れたとき君たちの好奇心、いたずら、笑顔などすべてが私の心を満たし私の人生を明るくしてくれた。 同時に私の大いなる願望などたいして重要ではないと思うようになりました。 私の人生の喜びは君たちの中にあることに気がついたのです。 私が君たちの幸福と満足を保証できなければ私の人生は意味がない。 同じようにこの国のすべての子供にもできなければと思った。 これが私が大統領選挙に出た理由だよ。

私はすべての子供が身の回りにある世界の不思議に挑戦しやる気をだし知識を吸収できる学校に通うことを希望しています。 そして家が貧しくとも大学に進学することを希望しています。 いい給料が支払われ健康保険などの福祉厚生がととのっているいい仕事、子供たちと過ごせる余裕と品位のある余生が送れるような仕事を得ることを希望しています。 制約を取り除いて新しい技術と開発を推し進め生活の改善とクリーンで安全な地球を実現する。 また人種、宗教、性別、地域ヲ乗り越えて最善状況にもって行きたい。 
時には国を守るため若者を戦場や危険な地域に送らなければならない。 しかしそのときは正当な理由がなければならず平和的な解決を目指して最大の努力をはらい兵士の安全を確保します。 私はすべての子供たちにこの兵士たちを祝福するのは無償ではないことを知ってほしいと思う。 偉大な国家の市民になることは大きな責任を伴うことを知ってほしい。
私が貴方と同じ齢のころ君たちのおばあさんは(アメリカ)独立宣言のオープニングの部分を読んで平等を掲げてデモ行進している人々は200年前にここに書いてあることを信じて行動しているのだと教えてくれました。 おばあさんはアメリカが偉大なのは完全であるからではなく常に良くなるように努力しているからだと、まだ達成されていない仕事が私たちに引き継がれ私たちの子供に手渡され年代を追って理想のアメリカに近づいていると。
君たちが間違いを正しながらこの仕事を引き継ぎまた他の人にもチャンスを与える。 それは私たちの家族がその恩恵を授かったからではなく君たち自身の(人間としての)義務なのです。 そして自分自身がより大きな自分になるためにチャレンジする時に必要になるでしょう。 
君たち二人には限りない夢と目標を持ち、この世界に思いやりとを持って成長することを期待しています。 そしてすべての子供たちが同じように学び夢見ることが出来る、また豊かに生活できることを希望しています。 これが私の家族をこの冒険に連れてきた理由です。
私はあなた方をとても誇りに思っています。 私は君たちが思っている以上に君たちを愛しています。 私は君たちがじっと辛抱したり、すましていたり、優雅に振舞っていたり、冗談を言い合ったりしているのをみていると毎日が楽しくなります。 さあホワイトハウスでの新しい生活に入りましょう。
<拙訳終わり>

オバマ大統領の就任演説を聴けるのは明後日だが就任演説を聴かずとも上記の手紙を読めばオバマさんの意図するところは充分にれ理解できるしどの親にしても気持ちは同じこと。 
アメリカ国民がオバマ新大統領を支持してアメリカ再建に取り組むことを願ってやまない。

2009年1月15日木曜日

クリントン新国務長官

1月20日に発足するオバマ新政権で最も重要な閣僚は国務長官と財務長官だろう。
1月13日に新国務長官に指名されたヒラリー・クリントン承認のための公聴会が上院外交委員会で行われた。 
大統領予備選では民主党の指名獲得をめぐって熾烈な選挙戦を戦ったオバマ大統領のライバルであり未だに強い影響力を持つビル・クリントン元大統領夫人であること。 しかも次期上院院内総務の候補にも挙がっている実力派上院議員とあっては国内のみならず海外からも大いに関心を集めていた。
大方の懸念は実力上院議員であり個性の強いヒラリーがオバマ大統領の下で一元化したアメリカ外交を展開できるのだろうかというところにあった。
指名を受けてから1ヶ月が経つがイラク&アフガン戦争以外にもイスラエル・パレスチナ紛争、ロシア・ウクライナ石油輸送問題、アフリカ各地の民族闘争・内乱など国際情勢が厳しさを増している。 この間ヒラリーは殆ど姿をみせず発言もしなかった。
夫ビル・クリントンがクリントン・ライブラリーに集めた海外からの巨額の寄付金が夫人であるヒラリー国務長官の職務に影響を及ぼさないかという懸念はあったもののほぼ国務長官就任は確実視されていたのでおそらく新スタッフの採用と国務省の運営構想に時間を費やしていたに違いない。 また日々変化する国際情勢を踏まえながら多くの国務省スタッフからブリーフィングを受けなければならない時期だ。 公聴会に現れたヒラリーの顔は額にしわをよせ目の下に隈をつくっていかにも疲れた様子だった。 国務長官はスタート前から激務である。 
新外交委員長J. Kelly以下各委員は彼女の基本的な外交姿勢やイラク・アフガニスタン・イラン・北朝鮮に対する対処の仕方など広範囲にわたって突っ込んだ質問をしていたものの総じて友好ムードで外交委員会としても党派を超えて政権と国務長官をサポートしようという姿勢が感じられた。
ヒラリーは外交政策の基本姿勢と具体的な対処は大統領と国防省との関係もあって明確な答は避けていたが大統領や補佐官、国防長官との連携を強調して外交政策の一本化を確信させるに充分であった。 国務長官の自身のアプローチの仕方についてはさすがに雄弁さを取り戻し持論を展開した。 外交は本来地味な仕事であって常に国益を前提に発言、行動しなければならない。 表に立つことが好きで個性の強いヒラリーがオバマ大統領の考えに沿って柔軟な外交を展開できるかどうか心配する向きが多いが私は目標がはっきりしているかぎりヒラリーは有能さを発揮すると思う。 ヒラリーはイデオロギー色が薄くブッシュJr.のような自由主義、カーターのような人権重視を押し付けることはしないだろう。国益重視の実務外交に徹することが今のアメリカに最も大事で外国にも判りやすいのだ。 ヒラリーは適任だと思う。

2009年1月8日木曜日

オバマ新大統領の本質

オバマ新大統領の本質を右か左かで論ずることは正しいアプローチではない。 彼の本質は原点(サウスサイド・シカゴでの活動)がコミュニティ・オーガナイザーであったように問題を国民の理解と協調によって解決しようとする基本姿勢があるので選挙中にも“対決よりも融和”を訴えてきた。 したがって組閣にあたっては政権移行を円滑に行い新政策実行に最も適した最大公約数を選んだわけでイデオロギー的な考えは非常に薄い。 勿論人種・性別のバランスや大統領選での論功行賞的な面も含まれてはいるがおおむね実務内閣といっても良いと思う。

国内/世界の経済問題、イラク・アフガン戦争・中東紛争、教育、エネルギー、移民などかってないほど根深い問題が山積しているがアメリカ国民の理解と意識変化なくして問題は解決しない。 オバマ新大統領が目指すのは政権の“チェンジ”だけでなくアメリカの“方向転換”と国民意識の“チェンジ”だからアメリカは当然内向きになるだろう。
アメリカがイラクから手を引いたあと世界はもっと多極化し混乱と紛争が多発すると思われる。日本は経済が比較的ましだからといって無為無策で過ごしていると混沌の世界情勢の中でますます地盤沈下してゆくであろう。