2009年1月20日火曜日

就任式と就任演説

就任式と就任演説

1月20日 オバマ大統領就任式。 ついにこの日がやって来た。
 
2007年の9月に候補者のディベートが始まったとき バラック・オバマという1人の黒人候補がいることを知った。 初めはスピーチも滑らかでなくあまりシャープとは思わなかったし当時の私の頭では黒人候補が民主党の指名を獲得することさえ難しいと思っていた。
ほぼ1年前の2008年1月3日 最初の予備選アイオワ・コーカスで大方の予想をひっくり返して1位に躍り出て一挙に注目を集めた。 アイオワは中北部の農業が中心の白人州である。 保守的な田舎の州というイメージがある。 そこで1位になった理由はどこにあるのだろうか。
コーカスとは少人数の集会でペーパーの投票ではない。 各候補者の支持者がお互いに支持する理由を話し合って自分の支持者を絞ってゆく。 (詳しい選挙の方法はここでは省くが)対話という民主主義の原点がここにある。 
オバマは人柄が穏やかで一方的に自己主張するタイプではない。 対話が得意だ。 直接話を聞いたわけではないが自然に引き込まれる人間的魅力があるといわれている。 町から町へオバマは対話を繰り返した。 権威を振りかざすことなく他人に耳を傾ける。 若者に人気があるのは当然だろう。 その若者たちが地道に草の根運動を展開した。 今までにない大統領候補だった。 予備選で1位になっても驕らず負けても変わりなく選挙民に媚びずあくまで信条を訴え挑発に乗らず中傷にめげず常に落ち着きぶれない候補だった。 ついに大統領の地位を勝ち取った11月4日、誰もが歴史的瞬間だと歓喜の渦に巻き込まれていた時さえオバマは一人厳しい顔をしていた。 大統領になると決まった瞬間から厳しい試練が待っていることを自覚しているような雰囲気であった。 しかし”Change”は言葉だけでなく本物になったのだ。
 
昨日の氷雨がすっかり上がって気温は零下ながら朝から冬の空は晴れわたった。 早朝から歴史的な大統領就任式を自分の目で確かめようとする人が集まってくる。 宣誓式が始まる2時間前にはCapital Hill(国会議事堂)まえのThe National Mall広場からLincoln Memorial広場にかけてすでに200万人の人で埋め尽くされた。 

宣誓式が終わると注目の就任演説が始まった。 
演説はレトリックもフレーズもなく予想されていたリンカーンやM.L.キング牧師の演説からの引用もなかった。
理想よりも現実に目を向け精神よりの方針を説いた。 就任演説というよりも施政方針演説(State of Union Address)に近かった。 現在の経済への対応や世界情勢への対応は一刻の猶予もない。 経済の厳しさを国民と共に理解し克服する。他国とは文化や宗教の違いを理解して対話する。しかしテロなど破壊主義者とは対決する。 特にイスラム世界に直接メッセージを送ったのには驚いた。 それだけ本気でイラク・アフガニスタン問題とパレスチナ問題を解決しようという姿勢の表れか?- 現実主義のオバマ方針を如実に表現した演説だと思う。

「さあ明日から一気に仕事にかかるぞ!」といわんばかりの明確に方向を示した演説であった。