2008年9月29日月曜日

米議会 Bailout Plan 否決

Bailout Plan 否決

思わぬことが起った。 まさかこのような経済危機に政府が提案した経済救済策($700Bil. 不良債権買取法案)が議会で否決されるとは思はなかった。 私の常識などまったく通用しなかった。 この問題に関しては民主党も共和党も議員を拘束して投票しているわけではない。 投票結果 民主党(賛成140、反対65)共和党(賛成95、反対133) 総計205-228で否決された。

Bailout Planに賛成している議員は経済危機の救済が第一であるとの認識に立ち、反対している議員は巨額の救済資金を国民の税金でまかなうことが基本的に間違っているとの認識に立っている。 しかし現在の危機状態を認識しそれが自分の生活にどれほど深刻な影響があるのか、世界経済にどれほどの影響を及ぼすかが判っておれば法案の正当性よりも緊急性を優先するべきであった。 

アメリカの国民がいかに税金に対してSensitiveであるかを物語る一幕でありアメリカの議員さんたちがいかに選挙民を意識しているかの証拠でもある。

Wall Streetは失望売りで史上最大の下げ幅($777)を記録し国民に少なからず動揺を与えたようだ。 アメリカ国民はRisk Takingには慣れている。 投資に対するリスクもよく理解している。 過去に何度も大幅な市場の下落を経験しておりその際も一般国民は狼狽売りに追随していない。 昨日までは未曾有の金融危機といいながら人々は通常の暮らしをしており取り付け騒ぎも起きていない。 不思議なほど平常である。

明日からの各地の市場反応が注目されるが世界の市場を混乱させる発信もとでありながらその対策を否決するとは真に身勝手であり世界中から無責任との批判を浴びることになるだろう。

ブッシュ大統領と両党首脳部は法案再提出に向けて協議し議会と再交渉するはずだが米国市場のみならず各国市場への波及が心配だ。 

2008年9月26日金曜日

米大統領選挙(42) 最初のディベート対決

一度はディベートの延期を提案していたマッケーンが予定通りディベートに臨むことになった。 議題は経済問題特に現在協議中のBailout Plan ($700 Billion)とイラク戦争を中心とする国際問題が論議された。 議題があらかじめ準備・通知されていたことや今まで双方ともディベートを重ねてきたこともあり議論の内容には新鮮味がなく退屈であった。 関心は質問に対する答え方、お互いに相手の政策に対してどう切り込むのか、どう切り返すのか。 国民に対して明確に自分の信条を伝え、どれほど説得力のある論理の展開が出来るのかに集まった。
国際問題に関してはマッケーンに長年の経験があるので国際問題分析については一日の長がある。 しかしマッケーンが共和党の指名候補である限り不人気な現ブッシュ政権の影を払拭することは出来ないのである。 しかもマッケーンの話はベトナム戦争での捕虜経験からすべてがスタートしており過去の人との印象が強い。 イラク戦争の正当化はブッシュ以外は無理な話とわかっている。 アメリカとアメリカ国民にとっても何とか名誉ある撤退を期待している気持ちはわかるがこれにこだわっている限りイラクからの撤退は実現できない。 経験が正しい判断を生むとは限らない。
オバマは現実と将来を見ている。 はっきり言葉には出さないがイラク戦争を早急に収拾しないと現在の問題は何一つ解決できないと思っている。 
議論の内容はまったく退屈であったが両者の性格、自分の信条と将来の展望、論理の展開がにじみ出たディベートであった。 マッケーンは経験のメリットよりも懸念された高齢のデメリット(頭が固く新しい展望が開けない)が確認され、一方オバマは経験のなさよりも落ち着きと新しいアメリカの展開を期待させる雰囲気であった。 
私は55-45でオバマの勝ちとする。 来週のPollを見てみたい。

2008年9月25日木曜日

米大統領選挙(41) 金融危機と大統領選

昨夜ブッシュ大統領は大恐慌以来の未曾有の金融危機を乗り切るためにTV演説で国民の理解と法案の支持を求めた。 具体的には議会に提案中の$700Billion(約75兆円)のBail Out Plan(不良債権買取機構の設立と資金の提供)である。 
現在の米国金融市場は5大証券会社が経営危機に瀕しそのうち2社は倒産した。 説明するまでもなく非常事態、異常なマーケットの状況には違いない。 緊急な対策が必要で放置すれば世界市場を巻き込んだ金融大恐慌に発展することは間違いない。 それは判るが何しろ金額が巨大でピンと来ないのである。 アメリカ人口3億人の割ってみれば一人当たり$2,333
(約¥25万)である。 一戸当たり(Per Household)では$6,200(¥66万》になる。 これではいくら国家の危機といえどもすんなりと”Yes”とはいえないだろう。
サブプライムローンの破綻が世界金融恐慌を引き起こすほどの大事件になった原因は何でと”犯人”は誰なのか? いまはこれを詮索する時期ではないかもしれないけれどもともと支払い能力のない債務者を救済する措置を講じ今度は不良債権保有者を救済する措置を講じることになった。 私に言わせれば救済される借り手も貸しても今回事件の犯人である。 それを真面目な一般市民の税金で穴埋めしようというのは筋が通らない。 数百万ドル-数千万ドルに上る投資銀行/証券会社の役員報酬・退職金が理不尽というのは当然であり今後は制限されてしかるべきだろう。 自由主義経済の原則には反するが行き過ぎは調整されるべきである。
ブッシュ大統領は議会にも超党派で緊急に法案を通すよう求めているが各議員は緊急性を認めながらも国民の負担と懸念を知っているだけにおいそれと”OK”とは言えないのが実情だ。
結局25日夜遅くまで続いたホワイトハウスでの政府・FRBと議会主要メンバーの会議では大方の予想を裏切って結論がでなかった。 
ブッシュ大統領は実質後3ヶ月しかない。 この問題の処理は11月初めに選出される新大統領にも引き継がれる。 したがって明日9月26日に控えた両大統領候補のディベートでも当然白熱した議論が展開されるものと期待していた。 ところが共和党マッケーン候補が突然キャンペーンを中止しWasingtonでこの問題につき超党派で協議すべきでありディベートはキャンセルしたいとオバマに申し入れたのである。 表向きの理由は超党派で問題の解決に協力しようと最もらしいことを言っているが実際はこの一週間Pollは落ち目で再びオバマにリードを許していること。 また副大統領候補のペイリンが見識不足、特に外交無知といった弱点に加えアラスカ州知事として権力濫用の疑いがあるとの報道があり検察が捜査中である。
マッケーンとしては体勢を立て直す必要があり試合を中断するため急遽Time Outを取ったと見られる。 ディベートではどちらが優位であるかのPollも出ているがオバマが65-35で圧倒的にリードしている。 
今のところ26日のディベートが開催されるどうか定かではない。

2008年9月19日金曜日

米大統領選挙(40) 泥仕合のキャンペーン

ペイラン効果は何時までもつか?

9月1日に始まった共和党大会を一気に盛り上げたのが副大統領候補に指名されたサラ・ペイランであった。 9月8日のブログで共和党のスター誕生と記したけれど同時に真価を問われるのはこれからでメディアのインタビューにいかに答えどのように自分の中身を表現してゆくかにかかっているとも記した。 
最初のインタビューが9月14日のABCキャスター、チャーリー・ギブソンだったが早くも馬脚を現してしまった。 象徴的なのはギブソンが「ブッシュ・ドクトリンをどう考えるか」と質問したところペイランは「どういう局面について聞いているのですか」と逆に質問したが明らかに彼女はまったく知識がなかった。 一般人ならいざ知らず少なくとも共和党の副大統領になるかもしれない人が“普通のホッケーマム”でもよいが無知では困るのである。 ギブソンのインタビューも彼女の知的水準を見越しての随分意地悪で見下したような質問だったが外交の知識はゼロに近いことを露呈してしまった。 端的に言えばローカルのやり手のおばさんが州知事のスキャンダルを攻撃して批判票を集めて図らずも知事になってしまったというのが事実である。 彼女の知識はせいぜい家計や市政のやりくり程度、何が何でも突っ張りとおして自分の主張を押し通す馬力だけは認めよう。 しかしこれでは国政は任されない。 それを知ってか共和党のキャンペーン陣営はサラのインタビューを受けなくなってしまった。 一方的にまくし立てる演説会のみである。 質問は受けない。
しかし彼女のラリー(演説集会)には彼女を一目見ようと大勢の人が集まるので共和党にとってはまたとない集客広告塔である。 マッケーンの演説会は彼一人では人が集まらない。 このような状況では次第に人気も薄れてこよう。 “口紅を塗ってもブタはブタ”である。

双方ともキャンペーンは政策論争というより揚げ足取りと相手のイメージダウンを狙うダーティ・キャンペーンに終始するようになってしまった。 程度の低い泥仕合に落ちってしまった感がある。特にマッケーン陣営は劣勢を取り返すためオバマの政策をあることないことお構いなしの一方的中傷キャンペーンを流している。
たとえばオバマは$25万以上(総所得者の2%)の所得税を上げそれ以下の人(98%)の所得税は引き下げるといっているにもかかわらずマッケーンはオバマが所得税を上げようとしていると非難しているのだ。 
またマッケーンは“オバマは経済を知らない”とこき下ろしている。 なるほどオバマは経済が専門ではなく経済政策としては実績がないかも知れない。 然るにマッケーンはどうか? ブッシュはどうか? 現場から見れば彼らの方がむしろ経済を知らないのではないかと非難されてもおかしくない。 現在のアメリカ経済の混乱は誰の責任だろうか? 能天気大統領と共和党のせいではないのか?

アメリカでは正直だけでは通用しない。 攻撃されればそれ以上に反撃せねばならない。 常に攻めの姿勢を見せないとアメリカ人は着いてこないのである。 たとえ相手の言っていることが正しくても詭弁といわれようが自分のことを正当化し弁明し攻勢に転じなければならない。 これがディベートであり選挙戦だ。 どちらが正しいかというよりもどちらが勢いがあって“Commander in Cheif”-指揮官として相応しいかが大統領選挙なのだ。 

9月26日にオバマとマッケーンの2人だけのディベートがある。 楽しみにしている。

2008年9月16日火曜日

シアトル旅行(5) 総括

シアトル旅行(5) 総括

旅行から帰ってきてから1週間になるがまだ余韻に浸っている。 今までの旅行は100%観光またはリゾートでの休暇だったが今回はシアトルに行って気に入れば将来引越しようという下調べのつもりがあったのでかなり真剣に住宅街やタウンハウスも見た。 
空気がきれいで緑が多くエレガントな都市というのがシアトルの印象だった。 シアトルの町はアラスカ方面から日本、朝鮮、中国などのアジア諸国の交易で栄えた港町だ。 観光の中心は海岸からすぐはじまる急斜面にひな壇に並べるようにビルが立ち並んでいる旧商館や倉庫を活性化したPikes Marketだ。 そこから丘の頂上までがいわゆるダウンタウンで
他の大都市と同じように高層のオフィスビルが立ち並び中心街はNYとまったく変わらない。
違うのはNYほど人が多くないことだ。 

海岸の丘の上から数マイル東には南北35kmもある大きな湖 Lake Washingtonがあり丘陵地から湖畔にかけての傾斜地はシアトルの高級住宅街、家格も価格もNY周辺とほぼ同じ。 地方だからといって安くてよい家を探そうと思うと当て外れになるだろう。
何しろここ数年シアトルは不動産のブーミングタウンだそうだ。 アメリカ全般に不動産不況が景気の下降に拍車をかけている中でシアトルの不動産価格は高止まり。 まだ投資の価値はあるといわれている。 ダウンタウンはすでに飽和状態にあるので副都心ともいえるBellevueの新都心ではあちこちに建設中の高層オフィスビルと高層タウンハウスが見られ郊外でもオフィスビル、タウンハウス、一戸建住宅の建設ブームだ。 マイクロソフトを代表格とするソフト、IT業界が不況知らずということもあろうが目に見える範囲ではちょっと行き過ぎのような感じがする。

シアトルはどこに行っても起伏が多い。 スロープにできた都会は内からも外からも景色がいい。 晴れた日にはどこからでも雪を頂いたMt.Rainierが富士山よりも大きく見える。まして海と湖に挟まれいたるところに針葉樹の林があるシアトルの街は目で見る限り全米で一番美しい街といってもよいだろう。   

一番初めに定着したのがスカンディナビアンであったそうだが景色と気候からして納得する。(行ったことはないけれど) NYは人種のるつぼで世界のあらゆるエスニックが集まっているにもかかわらずまったく気にならないのだがシアトルは一定の人種があまりにも目だって特異感じがする。 まず目立つのがインド人。マイクロソフトを中心とするソフト業界が多いからかソフト関係の技術者と思しきインド人とその家族が圧倒的に目立つ。 
次がラテンアメリカからの移民。 郊外に出れば野菜畑か花畑、カスケードの東に出ればりんご畑、農産物の収穫は人手がなければ不可能である。ここで農作業をするのはほとんどラテンアメリカから来た人々だ。 NJでもそうだがガーデナー(庭掃除、芝刈り)もラテンアメリカのひとである。 
中国人は昔からバンククーバー(カナダ)、サンフランシスコ、ロスアンジェルスなど西岸各地に住み着いて商いを営んでいた。 シアトルも中国人の歴史は長くチャイナタウンもある。 Pikes Market内の店でもよく見かけるが商店の多くが中国人によって経営されている。 

私たちが訪ねた時は観光シーズンも終わりの9月初めだったがとても天気がよかった。 シアトルは7月から9月にかけて殆ど雨が降らず平均最高気温も25度、最低平均気温が13度。 日本の4月か10月から11月にかけての気温だろう。1週間だけではすべてを判断することは出来ないし特に冬場の冷たい雨が続く雨期に来てみればまったく印象が変わるかも知れない。 (総雨量はNYやボストンよりも少ないらしいが曇りで霧雨似たいな日が多いという。年間120日は曇りで10月から4月に固まるから秋から冬場にかけてはほぼ毎日曇りか雨ということか) それでもまた来てみよう、機会があったら住んでみようと思わせる土地である。 

2008年9月15日月曜日

サブプライム問題と金融不安

サブプライム問題と金融不安

サブプライムローン問題がなかなか収束しない。 そればかりか日を追うごとに各金融機関と世界の負債総額は膨れるばかりである。 ゴールドマン・サックスの計算によればいまや世界のサブプライムローン不良債権総額は1兆2千億ドルに上るという。
ここ数ヶ月リーマン・ブラザーズの経営ききがうわさされていたが昨夜まで続けられていたポールセン財務長官の斡旋も功を奏さずついに破綻してしまった。
次々と大手証券会社がつぶれるのは異常なことであり世界のマーケットに波及しないことを臨むばかりである。

これは総括的に言えばアメリカ人の行きすぎた楽観主義とブッシュ政権の無責任自由主義がアメリカのみならず世界中のマーケットの混乱を引き起こした。
従来の住宅金融制度が変わったわけではない。 住宅金融を低所得者層まで大幅に緩和といえば聞こえが良いが審査基準を超えた放漫貸付とこれを証券化して国際的に流通させたことがサブプライムローン問題拡大の第一原因である。 
しかしこのシステムとリスクを知りながら大量に引き受けかつ多くの金融商品に組み入れて販売した大手金融機関にも大いに責任がある。 
いったい誰が悪者なのかはっきりしてほしいが誰もこのことに言及しないのは「みんなで渡れば怖くない。行かなきゃ損損」と全員が危ない橋を渡ったからかもしれない。
しかしなぜここまでDefaultが膨らみ大手の銀行、投資銀行、証券会社が軒並み巨大な損失をこうむり経営危機に追い込まれたのか未だに理解できない。
メカニズムはっ理解できてもどうして債務超過になるほど損失が膨らむのか想像できないのである。 
昔なら世界金融恐慌になってもおかしくないような深刻な金融混乱である。 幸い今の世界は各国政府が協調して混乱を回避する努力をしているので世界恐慌にはならないだろうが米国のみならず世界各国の経済に与える影響は計り知れない。

アメリカ経済はこれからいよいよ落ち込みが激しくなるだろう。 なぜなら
不況が深刻化すれば失業者が増える。 個人消費はますます縮小する。
フォークロージャーの物件が多い上にさらに失業による売り家が増える。
不動産マーケットが下落して新規住宅建設が低迷する。
クレジット・クランチで金利が高騰し新規重要を冷やす。 
石油高でコストインフレ圧力が強まる。
ドルの信用がなくなりドル安の結果インフレが高まる。
いよいよ株安、債権安、不動産安、ドル安で下方スパイラルが起りそうだ。
これを止めるにははやす新政権が発足しすべてがドラスチックに政策転換しなければならない。
1980年代後半の経済危機をブッシュSr.政権がすばやく大胆な処置に踏み切ったのでアメリカは早く立ち直った。 あのときよりも経済は深刻でしかも複雑に国際化しており立ち直るのは容易ではないと思うがアメリカの国民はわかればすぐに実行するのでそれに期待している。 大統領選挙がイージーな人気取り政策に走らずまじめに論争するのを望むばかりだ。
これから始まる2回にわたる大統領候補同士のディベートと1回の副大統領候補のディベートが注目される。

2008年9月14日日曜日

シアトル旅行(4) N.Cascade国立公園

N.Cascade国立公園

4日目はNorth Cascade National Parkを訪ねることにした。 カスケード山脈の北にある山と氷河と湖の国立公園である。 シアトルからは5号線-20号線-53号線-2号線と回るループの観光ルートがあるが500マイル(全長約800キロ)あるので一日ではとても回れない。 本当は北の20号線が国立公園の中心でここを回るつもりだったがワイフが南側の2号線にあるドイツ村に行ってみようと言うのでルートの南を走ったら景色はきれいが氷河や湖はなかった。 お目当てのドイツ村はドイツの移民が村興しのために観光用として作った町で単なるドイツ風の建物の並んでいるだけ。 色あせた絵はがきを見るようでまったくがっかりした。 いまさら北ルートに回るわけに行かず少し東に進んでカスケード山脈の東側に出た。 西側は太平洋からもたらされる大量の湿気を含んだ重たい空気がカスケード山脈に当たって大量の雨をもたらし針葉樹のレインフォレストを育んでいる。 山を越えると一転して大きいな木や密な林は見られず山肌は枯草色となって景色が急変する。 カリフォルニア・サンノゼ近郊の景色に似ている。 川沿いの低地にはいたるところにリンゴ園があり収穫に入っていた。 そういえばワシントン州はアメリカ一のリンゴの産地である。 日本のリンゴもアメリカ人がここのリンゴを持ち込んで栽培したのがきっかけと聴いている。 アメリカのリンゴは種類が多いが主流は日本のフジに切り替わりつつありリンゴにかかわる日米交流は面白い話だ。 

帰りはボストンからシアトルに至る大動脈Hwy-90を走ってシアトルにもどった。 シアトルに入ってからまだ随分時間があったのでLake Sammamish 湖畔の住宅街を走りながらホテルにかえった。 空振り三振、盗塁失敗、無得点に終わったような一日だった。 ああもったいない時間を過ごしてしまった。 後悔しても始まらないが自分で作った観光メモを前日シアトルのレストランに忘れてきて出発前に十分に観光情報を把握していなかったこととが直接の原因。 それならそれで出発まえに再度情報を集めるべきでした。

2008年9月13日土曜日

シアトル旅行(3) オリンピック国立公園

オリンピック国立公園

オリンピック国立公園はプジョー海峡を挟んでシアトルの対岸のオリンピック半島の中にある。 フェリーで渡るのが最も時間が短くて便利な方法だ。 ちなみに料金は車と運転手込みで$12.50 運転手を除く乗客1人$7:50 二人で$20:00だから安いと思う。 それに初めての乗船であればシアトル湾内の観光クルーズを兼ねたようなもので結構楽しめる。



オリンピック国立公園は太平洋に面した幅100マイルほどの半島だが中央部の山岳地帯に万年雪を頂いた山々がそそり立っている。海岸では泳いでいる人がいるのにすぐ傍の山が夏でも雪がかぶっているのはちょっと想像できない景色である。 Kingstonから1時間ほどドライブしPort Angelsからビジターセンターに立ち寄って国立公園に入ることにした。 しかし入口に工事のため40分遅れがでると表示されていたので危惧していたがひっきりなしに行き交うダンプトラックの後を走っていては面白くない。まして往復80分の遅れが出れば予定が狂うので10分ほど走って途中でUターンして別のところに行くことにした。 
そこからまた東に1時間走ってクリスタル・レイクという氷河湖に到着。 周辺をドライブしてからまた国立公園内の山に入る道があった。 ゲートには係員はおらず中腹のロッジにて料金を徴収するという表示があった。 とりあえずそこまでドライブするつもりで走ったが行けども行けども森の中、 ところどころにトレッカーがクロスする道路標識がある。 ここもまたMt. Rainierと同様トレッキングしなければ本当の自然は体験できないのかもしれないと自分に言い聞かせてまたもや途中で引き返した。 結局海岸線を走りに走ってPort Towngentからフェリーで北周りでシアトルにかえった。  

このドライブには納得が行かなかったので2日後にKingstonにわたり今度はゆっくり南に下ってオリンピック半島東側を楽しむことにした。 入り組んだ海岸線の小さな町は美しく静かで日常生活とリゾートが共存するようなリラックスした雰囲気が漂う。 「この家はよい」「あの家は悪い」と入江に沿った細い道を車で走りながらまるで家探しに来たように家やタウンハウスを物色して回った。 シアトル近郊の売家は家の前のポストに取り付けた透明なボックスの中に売り情報を記載した写真付のチラシが入れてあるので1枚もらえばすべてがわかる。 このシステムは家探しに来た人にはとても便利だ。 オリンピック半島や湾内に点在する小さな町は日常生活には不便なようでも1時間に1-2本フェリーがありそれほど不便ではない。 住環境としては申し分なくしかもシアトルまでフェリーの待ち時間も入れて1時間以内で行けるとなれば市内に住むよりここに住むことを選択する人があってもおかしくない。 まして海や山の好きなリタイアーした人間にとっては理想の土地かも知れないと思った。 

帰りはBainbridge Islandからシアトル行きのフェリー二乗ったが快晴で海から見るシアトルダウンタウンの景色が一段ときれいにみえた。






2008年9月12日金曜日

シアトル旅行(2) Mt.Rainier

Mt.Rainier

Mt.Rainier国立公園の入口までシアトルから車で約2時間かかる。 Mt.Rainierは高さ4400mあり夏でも雪をいただく富士山のように美しい山だ。 別名タコマ富士という。 天気のよい日はシアトルからも良く見える。 
Mt.Rainierの麓に近づくにつれて道幅は狭まり次第に森の中に入る。 このあたりの針葉樹は50mはあろうかと思うほど背が高くまっすぐ点に向かって伸びている。 



道は麓の林を縫って次第に高度を上げ1647mの登山口Paradiseまでドライブすることができる。 ここが雪渓と氷河を上り頂上まで登山する人と夏山スキーをする人のベースキャンプで大勢の人で賑わっている。 周りに駐車場はあることはあるが訪れる車が多いので全部は近くに止まれない。 一方通行の崖っぷちの道の片側に延々パーキングロットが続く。 やっとのことで安全にとまれるスペースを見つけて山を見ると山はガスにつつまれてまったく姿を見ることができなかった。  大きな山は近くに来るとその大きさに圧倒されるがしばしば全容を見ることができず山全体の美しさも見ることができない。  私たちが来た日は天気が良いはずだったがどこからも山の頂上を見ることができなかった。





アメリカの国立公園はできるだけ公園の中心部まで車でアクセスできるようになっているがやはりトレッキングして自ら自然のなかに足を踏み入れないと本当の自然を楽しむことができない。 残念ながら私たちは今まで経験もなく装備もなくていくら素晴らしい自然とはいえ無防備で深い森の中の道を探索する勇気はない。 申し訳程度に500mほど渓谷沿いに歩いて引き返してきた。 それでも氷河が削った深い谷を見下ろしながら昼なお暗い林のなかを歩き酸素が濃くて樹木の匂いのする空気を胸いっぱいに吸い込むと体の隅々までれフレッシュしたような気がした。
ワシントン州の海岸線からカスケード山脈の東側にかけて広い範囲に背の高い杉やヒノキが密生する森(レインフォレスト)が続いているのは相当の降雨量があるからだろう。 7月-9月までは快晴で日中25度前後の快適な気候が続くが10月から4月までは雨の日が多いらしい。 頭の中にシアトルに引っ越してみたいという漠然とした期待があっただけに特に冬場の長く暗い雨期をどう過ごせばよいのか気になる。 いい気候のときに短期の観光で訪れるのと長期に住み着くのでは見方を変えなければならない。 
Paradise から山を下るとき山の急斜面に切り開かれた断崖の道は周囲の山々と延々と谷底を流れるコロンビア川を一望にするパノラマビューのドライブであったが高度恐怖症の私は景色を見る余裕もなく必死でハンドルを握りやっと通りぬけた難所であった。
帰りは時計と反対周りに国立公園の南東から北へ向かい途中で西に折れてI-5に出てシアトルに帰った。

2008年9月11日木曜日

米大統領選挙(39) ペイラン効果

マッケーン・ペイラン効果

マッケーンの氏名受諾演説は旅行中でLiveでは見ることが出来なかった。 その後数日間ニュースの解説や評論番組でスポット的に演説を聴くことが出来たが共和党大会以前とは随分迫力が違うと思った。 また内容がマッケーン本来の主張に戻っていた。 党大会以前は共和党保守派に遠慮してかなり遠慮した発言(明言を避けた曖昧な発言)が多かったが今回の演説では彼本来の見解をはっきりと主張していた。 これは保守派のPalinを副大統領候補に立て党内保守派を抑えたことによる結果であると思われる。 Palinはオバマ支持に傾いていた女性票を大きく揺さぶっている。 マッケーンは支持を決めていない中間層、 民主党・共和党sどちらにも属さない自由独立派の人々を取り込むための新しいキャンペーンスタイルをとり始めた。
今まで共和党全体の支持を得るため現ブッシュ政権とワシントン政界の批判を避けていたが党大会以降は現在の政治の改革を大胆に主張しはじめた。 “改革-Change”は本来民主党のスローガンであったが取り込まれてしまって民主党の影が薄れてきている。
9・11のテロ攻撃から7年目の慰霊行事を目前に控え国家安全保障とアルカイダ対策の重要性を改めて訴えた。 同時にオバマの安全保障に関する未経験とイラク撤退に関する見解を非難している。 これはマッケーンの政策のバックボーンになる国家安全保障の重要性を訴える絶好のタイミングである。
ペイリンで保守派を押さえかつ女性票の獲得に成功しつつありマッケーン自身もイラク対策以外は幅広く柔軟な政策を語り始めて中間層の獲得に効果を発揮しつつある。 Pollは大きくシフトし始めた。 
民主党党大会直後からペイリン演説までの数日はオバマがマッケーンを4-6ポイントリードしていたがペイリン演説から党大会終了までにマッケーンが急速に追い上げ今週に入って各種Pollの平均値は1-3ポイントマッケーンが逆転リードするに至った。
なんというペイリン効果であろうか。  メディアもびっくりといった感じである。
選挙戦も第3コーナーを回りホームストレッチに入ってきた。 いずれにせよ最後までデッドヒートは続くだろう。 2000年のフロリダ州での投票再カウントのシーンが頭をよぎった。 あの時以上にアメリカ国中が緊張するに違いない。 

2008年9月9日火曜日

シアトル旅行(1) シアトル市内

シアトル市内

ニューアーク(NJ)空港よりシアトル(WA)までは約6時間かかる。 時差が3時間あるのでNJを朝8時に出た飛行機はシアトルに午前11時前に着いた。 ホテルのチェックインは午後4時以降なのでそれまでにシアトル市内の観光をすることにした。
レンタカーで空港を出たらすぐに背の高い杉木立に囲まれた住宅街を通って高速に乗る。 他のアメリカの大都市空港と違って周辺は煩雑な感じはなく静かで空気がきれいなのでシアトルはきれいな町なのだろうと直感した。

20分ほど走ればシアトルのダウンタウンに入る。 シアトルのNo.1観光スポット、 パイクス・マーケットを見ることにした。 シアトルの町は海岸線に迫った丘と急斜面に町ができている。 サンフランシスコを凝縮して南北に伸ばしたと考えればよい。

パイクス・マーケットは海岸から道ひとつ隔てた急斜面に建てられた6階建ての元倉庫兼オフィスビル(自分の想像)で最上階がグランドレベル(上から数えれば地上1階)のFirst Ave.と Western Ave.の間に市場が並んでいる。 魚屋、果物屋、野菜、花屋、レストラン、雑貨にコーヒーショップなど(もちろんスター・バックスもある)なんでもある。 日曜の午後とあって観光客と地元の買物客で込み合いなかなか自由に歩けない。
これほどの人出があればお店も気合が入るというものだ。 魚屋では鮭など店頭にある大きな魚が売れるたびに売り子のお兄さんたち全員が囃子言葉(?)で大声を上げ魚をまるごと調理のために店内に放り投げる。 一種のパフォーマンスに違いないが活気があって楽しい。

(市場の通りで演奏するグループ、 軽やかなメロディが心地よく多くの観光客が立ち止まる)
昼過ぎになって時差の関係もあり随分お腹が減ってきたので軽くランチにすることにした。 マーケットのなかで列ができているレストランがあったので覗いてみるとトム・ハンクスと女主人が並んだ写真が飾って合ったので“Sleepless In Seattle”の撮影にでも使われたのかなと思いとりあえずここで食べることにした。 2階(海岸からすれば10階ぐらいの高さになる)の窓際に座り発着するフェリーや観光船、彼方のオリンピック半島を眺めながらのランチは素晴らしかった。 ただしこれは景色だけの話で注文した食事(私はClam Hash、ワイフはClam Chowderにサンドウィッチ)はまったく普通のアメリカン。 シアトルは食べ物がおいしいと聞いていただけに第一打席は空振りの三振に終わった。 (このレストランは日本の観光ブログにも出ていたがレストランの評価ほどあてにならないものはない。 今まで何度も失敗しているが知り合いのない土地ではどうしようもない。 レストラン探しは同年代で同じ趣向をもっている友人の紹介以外はあまり期待しないほうがよい) 
後日ダウンタウンのベトナム料理でランチをしたがここは大変おいしかった。 

ホテルはダウンタウンから10マイルほど離れたRedmondにあるResidence Inn、郊外のショッピング・モールに隣接したモーテル、キッチン付のエフィシェンシー・ルームで普通のホテルの部屋に比べてゆったりしておりBuffeでの朝食付き、 車で2-3分も走ればよいグロサリーもあり7泊滞在するには丁度よい広さと便利さである。 

ダウンタウンからホテルまで20分ほどのドライブだが湖を横切り丘を越え林を抜けるハイウェーは今まで訪れたことのある全米の大都市の中では見ることのできないきれいな景色だった。

2008年9月8日月曜日

米大統領選挙(38) ペイラン起用の理由

新人サラ・ペイラン代打満塁ホームラン

共和党VP候補サラ・ぺイランのベイルがはがれつつある。
マッケーンが彼女をVP候補とした理由は
1.彼女がエバンジェリスト(キリスト教福音派-保守的キリスト教徒)で保守派の支持を固めたこと。
2.予備選の段階で圧倒的ヒラリー支持であった白人労働者階級の支持を取り込むこと。
3.また女性大統領の誕生を願っていた多くの女性票(民主党ヒラリー支持派)を取り込むこと。
マッケーンは党内の支持基盤が弱いのでこのままオバマ民主党と戦うことができない。 選挙戦略として彼女を支持基盤の弱い上記3っのグループとのコネクションを図るため彼女を起用したとすれば十分に納得できる。

日本人と違ってアメリカ人は自分の意見やバックグラウンドを積極的に公表する。 選挙に対しても一般の国民の70%は基本的に誰を支持するかを決めている。 残り30%はSwing Voterとしてキャンペーンを聞きながら後2ヶ月の間に投票する候補を決めることになる。 この30%もかなりはっきりしたグループに色分けされてくる。 つまりマーケティングがしやすいが両党が拮抗しているだけに一歩間違うと命取りになる。

だからVP候補選びは非常に重要な意味を持っている。 オバマ民主党は誰もが納得するような有力議員を選んだ。 常識の線上で最大公約数を取ったと思われる。
一方共和党は無名の女性候補を選んだ。 十分計算づくとはいえ博打である。
皆があっと驚いたと同時に“なぜ”という疑問詞がついた。 娘さんの妊娠騒ぎのおまけまでついた。 しかしこれでメディアはじめ全員の目がそちらに向いてしまった。 オバマ・バイデンコンビはとたんにメディアの主役の座を奪われ霞んでしまった。 
ともすれば派手さに欠けるマッケーン共和党の党大会を彼女の演説で一気に盛り上げてしまった。 大きく差をつけられている共和党の7回裏の攻撃で新人が満塁ホームランを放ち一気に同点にしてしまったのである。
注目していたPollは9月7日で48%対48%となった。 後2回(2ヶ月)残すのみとなった。  つい数日前までオバマの楽勝と読んでいたが予断を許さなくなってきた。
まるでドラマチックなフットボールや野球の試合を見るようなアメリカの選挙の面白さである。

米大統領選挙(37) 共和党スター誕生

共和党スター誕生

共和党大会は9月1日から4日間ミネアポリスで開催される。 同じ日に大型ハリケーン・グスタフがメキシコ湾からルイジアナに上陸するとあって3年前のハリケーン・カトリスによる大被害の二の舞にならないようニューオルリンズの住民は強制避難させられることになった。 TVはこの報道に貼り付けとなって共和党大会は急遽予定を変更せざるを得なくなった。 共和党としては出鼻をくじかれる不安なスタートになった。

注目はなんと言っても数日前に発表された副大統領候補サラ・ペイランの氏名受諾演説である。 彼女のことはほとんどの人が知らないしVP候補として発表された直後に彼女の17歳の娘さんが妊娠5ヶ月であることが報道されこれが保守派 (いわゆるSocial Conservatives) の代表と目される彼女の家庭に “起こりうる“事なのか閑閑諤諤大騒ぎになってしまった。 彼女の問題だけでなくマッケーンが前以てこれを知っていたのか、知っていてなぜ彼女を指名したのか誰もが疑問に思うところである。 取り扱いを間違えば共和党が戦う前に沈没しそうな爆弾ニュースであった。

しかしこんな不安とプレッシャーの重なる中で彼女の受諾演説はすべてをぶっ飛ばすほどの素晴らしい出来栄えであった。 

目だった経歴もなく知名度も低い(全国的には阿智得たことだろう無名に等しい)一人の女性が一躍大政党のVP候補として登場し堂々と国民を納得させるような演説をした。 これがアメリカの底力である。 もっともこの素晴らしい演説を書き上げたスピーチライターが居るに違いないがそれを数日で立派にこなすのは十分な才能である。
演説内容の8割は国家の安全保障とエグゼクティブ・マネージメントの経験に費やされた。 オバマのイラク戦争に対する姿勢を敗北者として捕らえ国家の重大事に関して判断する経験の無さを大統領としての資格なしとこき下ろす戦略である。 同時に自分の家族を紹介するにあたり自分を“Hocky Mom”と称し自分の夫は漁師であり息子はイラク戦争に参戦中、二人で5人の子供を育ててきた普通の家族であることを強調した。 
つまり大都市を除くアメリカの大部分のスモールタウンのスモールファミリーと同じクラスであることを強調してこのクラスを取り込もうとする作戦である。 これは過去2回の選挙でブッシュがとって成功した選挙戦術でもあるのだ。 共和党が練りに練った完全な選挙演説といってよいであろう。 彼女もその役割を十二分にこなしたので共和党はじめメディアの承認を勝ち得たことと思う。
しかしこれはあらかじめ描かれた塗り絵をきれいに仕上げたに過ぎない。 今後メディアのインタビューとVP同士のディベートが待っている。 その時が彼女の真価を問われるぶっつけ本番の試練である。
これで民主党対共和党の勝負は五分五分となった。 次回のPollの数字を見るのが楽しみである。