2008年11月21日金曜日

オバマの組閣作業

オバマ政権の組閣作業がシカゴの本部で進められているがオバマ時期大統領はキャンペーン中から共和党を含めて広く人材を集めると公約しているので各方面にバランスを取った組閣をしなければならず慎重に作業を進めているように思われる。 つまり地域・人種のバランス、女性・マイノリティの登用、選挙で貢献した人達への論功行賞などを考慮しながら人選せねばならない。 それでも連日メディアの情報ではかなり早いスピードで適材をポストにはめ込んでいることが伺われる。 前例のない大問題が山積している状況の中ですぐに仕事が出来てしかも失敗が許されない船出となるので即効性のある人事が行われているように恩う。

中でも重要なのは国務長官と財務長官で国務長官はヒラリー・クリントン上院議員、財務長官は現NY連銀総裁ティモシー・ガイスナーで決まりだろう。 クリントンは民主党の結束と国際関係改善に貢献するネームバリューを持っている。 ガイスナーは現財務長官ポールセンと協力してベアースターンズの救済、リーマンブラザーズの破綻、AIGの救済に直接かかわっており金融危機と大不況を引続き取り扱うには最適人と言えよう。 国防長官は共和党現職のゲイツの留任、国家安全保障省長官にはナポリターノ・アリゾナ州知事(現在直接移民問題に対処している)
 法務長官にはクリントン時代に副長官を務めたホールダー氏、商務長官にはシカゴの実業家。。。いずれも手堅い即戦力の実務家を揃えた。 ヒラリーを除いてまとまりのよいキャビネット・メンバーのように思われる。

一方日本のニュースは政治の混迷をますます深めるような首脳同士の発言にげんなりしてしまう。 麻生首相は思慮の足らない低次元の発言が多く一国の首相としては軽すぎる。 漫画は私的な趣味の範疇にとどめて大所高所からの発言と政局ばかりに振り回されないしっかりしたバックボーンを示してほしいものだ。 一方民主党の小沢代表は誰のための党首なのかさっぱり判らない。 人と話すのは苦手、 重要政治課題を政局の道具にしか見ていない。 健康に重大な問題がある。 これで政治が務まるのか? 彼は政治家と言えるのか? 小沢さんを党首に擁いて何も言わない、何もいえない民主党員はいくじなしばかりではないか。
政治家は年齢制限ではなく経歴制限をして通算15年以上は議員を続けられないことにしてはどうだろう。 一旦外の永田町から出て仕事をしてみれば世間のことがよくわかると思う。 

2008年11月19日水曜日

ビッグ3が危ない

サブプライムローンの破綻で始まった金融危機はついにアメリカの自動車メーカー・ビッグ3を倒産の危機に追い込んでいる。 過去2年にわたるガソリン価格の高騰により大型車が売れなくなり大型車中心の生産を続けていたビッグ3は連続して大幅な赤字を出していた。 金融危機によってクレジットクランチがおこり巨額の運転資金を必要とする巨大な自動車メーカーが窮地に追い込まれている。 

昨年9月に3年ぶりにアメリカの同じ土地に戻ってきた時廻りの環境も人もまったく変わらなかったが「車の事情」だけが変わったように思った。 
1.日本車の数が異常に増えていた。
2.アメリカ車を除く日本車・欧州車の高級車が増えたこと。
3.アメリカ車はSUVが目立った。 全体の3分の1はSUV
4.アメリカメーカーのセダンはスタイルが野暮ったく見えてまったく魅力がなかった。

一年前にも巨額の赤字決算を発表、一方トヨタは破竹の勢いでGMを抜いてNo.1メーカーになることは誰の目にも明らかだった。 全くの門外漢で自動車には素人の私にさえビッグ3の凋落があまりにも目に付くぐらいだから内部は相当ガタガタで崩壊が進んでいたのかも知れない。 しかし誰も一年後に倒産の危機に追い込まれるとは予想していなかった。 ビッグ3の危機はガソリンの高騰と金融危機のせいと思われがちだがそれがなくとも遅かれ早かれ深刻な経営危機は訪れていたと思われる。長期的に経営困難が予想されていたにもかかわらず経営陣はなぜ抜本的な対策を講じてこなかったのだろう。


先週議会で開かれたビッグ3救済のための公聴会で3人の経営トップには会社危機に対する真摯な態度と具体策がなかった。 これには救済しようと努力していた民主党議員からも怒りをかって採決さえ見送られてしまった。 次回の公聴会で再建案を提出するまで支援は延期されてしまったのである。 経営危機はさらに深まりGMの経営者は倒産さえ選択肢に加えはじめた。 このような傲慢な経営トップの会社には議会ひいては国民の理解、協力を得られないだろう。


半世紀にもわたる会社全体の傲慢さは危機に際してもすぐに転換できるとは思えない。 環境問題で世界的課題である自動車のガス規制もブッシュと協力して反故にしてしまった。 自らチャレンジする精神をなくしてしまっては現代の競争社会を生き残れるわけはない。 自由主義を信奉し競争こそが進歩のエネルギーであると説いているアメリカ社会にあってビッグ3の姿勢は反社会的、反アメリカ的存在である。 企業化精神を忘れた会社には優秀な技術者、チャレンジングな若者は集まらない。 だから彼らが製造する車のスタイルや技術に魅力的なものがなく売れないのだと思う。 彼らは販売不振の原因を高値のガソリンのせいにしているが根本的な原因ではないのである。

もうひとつの原因はUAW(全米自動車労働組合)という自動車産業組合の存在がある。 アメリカの労働組合は会社別組合ではなく産業別の組合だから会社の経営状況に合わせた会社別の交渉というわけには行かない。 日本と比べて相対的に組合の力が強く取るものは徹底的に取るという常時敵対的な関係で会社と協力して生産性を高めようなどという意識は全くない。 結果的にビッグ3の労働者は6桁の収入を得ることができた。 それだけではない。 フリンジベネフィットも至れりつくせり、退職後でさえ十分なペンションと健康保険の給付を受けられるなど信じられないほどのベネフィットを受け取っている。(最近経営を圧迫する原因だとして徐々にベネフィットは削られているが) しかしよほど生産性が高くなければ平均で6桁以上の給料を払って経営が成り立つとは思えない。 市場が悪化すればすぐに人員整理、これが景気に対する最大の調整弁であるとすればあまりにイージーすぎる。 


生産性の低下ー開発投資の減少ー新車/魅力のある車の不足ー人材の流出・新規確保補充の困難ー販売不振ー利益の現象ー生産性の低下といった悪循環を長年断ち切れないでいる。 経営陣もすぐには会社再建案を提出できないのは当然と思う。


しかし世の中はビッグ3が倒産してもらっては困るのである。 失業者は増え景気はもっと悪化する。 これ以上株価が下がればデフレがいっそう深刻化する。 大恐慌になればアメリカ国民だけでなく世界の人々が大迷惑だ。 何とかせねばならないと思っているのはオバマ時期大統領だけではない。 

しかしビッグ3という巨象は年老いて深刻な病に冒され何時倒れるかわからない状況だ。 蘇生のためにカンフル注射をしたところで何時まで持つか疑問視されている。 これが議会が救済のための資金注入をためらっている一番の原因である。 しかし今倒れてもらっては影響が大きすぎてみんなが困る。 何とかせねばならないと思っているのはブッシュもオバマも同じこと。 大きなディレンマを抱えてオバマ政権はスタートしなければならない。

2008年11月18日火曜日

日本も移民が必要

日系ビジネスOnlineの森永卓郎氏のコラム
「日本経団連の移民受け入れ策は亡国の政策」に対しての意見
(NBOnlineに投稿)

森永さん 世界の現実をしなやかに見てください。
アメリカではメキシコ、中南米からの移民は低位労働力として農業や清掃、造園などに従事していますが不足している医者、IT技術者などの高度労働力もヨーロッパ諸国、アジア、インド、中東諸国の輸入(移民)に頼っています。 ご存知のような労働や文化の軋轢はありますが移民はアメリカ経済の活力の源泉であり経済成長の多くを担っています。 特にIT業界ではインド人、中国人技術者抜きではアメリカの技術の進化は考えられません。 彼らにとっても新しい技術とびビジネスに挑戦できる大いなるチャンスであり経済的にも自国とは比較にならない高給を食み生活をエンジョイすることが出来ます。 実力のある人がチャンスをつかめる平等な競争社会であることはYahooはじめ多くのITベンチャー企業のトップが若い外国人で占められていることで判ります。 

メキシコを初め中南米諸国はアメリカ新政権の移民政策の動向に神経質になっています。 何しろ1200万人もの違法入国者が居住している国ですから日本の移民問題とは次元が違うでしょうがこれらの移民輸出国(合法、違法を問わず)はアメリカが移民を低賃金で働かせていることに意義を唱えているわけではありません。 移民を厳しく制限することに大反対なのです。 つまり物の流通を自由にすると同時に労働力(人)の移動も自由にするように要求しています。 移民を送り出す国も受け入れる国も双方にメリットがあるので世界の移民は拡大しています。 EU域内ではすでに人も物もお金も自由に動けるようになりました。 域内の自由化が浸透するにつれ経済は活性化しユーロが強くなりました。 
EUの中には人口が一千万に満たない国が多く含まれていますが高い生活水準と文化を維持しています。 勿論一ヶ月以上の休暇は当然のことだしサービス残業などはありえない。 いずれの国も移民によって不足している労働力を補完し活性化と競争力を維持しています。 逆に保護された高賃金は競争力を失って現在のアメリカの自動車産業(ビッグ3倒産の危機)のようになってしまいます。

経団連が「日本型移民政策」を発表した意図は将来の人口減少を見据えてのことだと思われるが企業が人件費コストの削減に努力することは当然のことでひとつの手段として移民を考えることは悪いことではありません。 森永さんは移民のマイナス面ばかりを強調されているように思うがプラス面も考えてほしいと思うのです。 受入れ態勢が整っていなければ早く受け入れ態勢を整備すればよいのでそうだからといって移民を否定するのは本末転倒です。

所得が増えれば人口が増えるなどというのは現実を見ていない証拠でしょう。 所得が増えれば若者が結婚できるチャンスは確かに増えるでしょうが少子化に歯止めをかけることは出来ません。 宗教的な制約がない限り先進諸国の例が示すように所得が上がるにつれて出生率は下がり人口は減少します。 日本は必ず急速に人口減少に向かいます。 出生率を上げる工夫をするより人口減少を前提とした現実的な政策を模索するほうが懸命です。

さらにこのコラムに対するコメントを読んでさらに驚きました。 
日本のメディアの影響が大きいと思いますが移民に対するマイナス意見と日本の現状と将来に対する悲観論が一般的ですね。 日本から世界の一部を覗くのではなく世界から日本を見つめてみれば日本ほど恵まれた国はありません。 マイナス面ばかりを数えて行動できないのは日本人の悪い癖です。 日本をもっとオープンにして製品だけでなく労働力も高度の頭脳も輸入しましょう。 間違いがあれば訂正すればよい。軋轢があれば調整すればよい。 日本人の閉鎖性が日本の社会の停滞を招いているのです。

2008年11月9日日曜日

世界が期待するオバマ

11月4日夜オバマ新大統領の誕生で全米が歓喜にわいた。 ほぼ半数近くが共和党支持者だから”全米が”という表現は間違いかもしれないがアメリカ国民全員がオバマ大統領の誕生を心から歓迎しているように思えるほど喜びに沸いているのだ。 シカゴのグランドパークに集まった15万の群衆の中には20年ほど前に大統領予備選に立候補したジェッシー・ジャックソンもいた。 あふれる涙をぬぐおうともせず感極まった様子で立ち尽くしている。 オプラ・ウィンフリーもいた。 「こんな日がくるとは思わなかった。 これでアメリカは何でも可能であることを証明した。 素晴らしい」と後のインタビューで答えていた。 
普段は冷静なはずのTVキャスターも評論家もスターもこの時ばかりは言葉を詰まらせ涙をうかばせた。  長い間アメリカにいるがこんなシーンは見たことがない。 
「こんな日がこんなに早く来るとは思わなかった」のはオプラだけではない。 黒人はもとより白人もマッケーンに投票した保守派もオバマを支持した若者も外国のメディアもそして私も。 1960年代の終わりに始めてアメリカにやってきた時はまだトイレもバスも白人と黒人は別々であった。 公立校で生徒をミックスするためにバッシングが行われていた。 バッシングが行われていた地域からは白人が逃げ出していた。 公民権法案が施行されてもまだまだ現実に差別は続いていた。 今でもすべてが平等かというとそうではない。 特に黒人の人にとっては我々が知らない世界でまた人々の心の奥底でまだ差別を感じているに違いない。 白人もそれを知っているから今回の選挙は白人自身の本能にも似た感情の壁を選挙という形で打ち破った。 彼らもそれを誇りに思っている。 アメリカは選挙結果以上のものを勝ちえたといえるだろう。

2年前にオバマがイリノイ州のスプリングフィールドで旗揚げしたときは殆どの人が彼を知らなかった。 1年前に民主党の第一回ディベートが行われたときも彼が民主党の指名を獲得するなど誰も信じていなかった。 1月3日のアイオワ・コーカスで大方の予想(ヒラリー・クリントンが有利)を裏切り彼が1位に踊り出たときさえ初打席のまぐれヒットのように考えていた。 予備選が進むにつれオバマとヒラリーの一騎打ちになったが時が経つにつれてヒラリーの言葉が上滑りになりオバマの熱情が国民の間に浸透していった。 7月にはヒラリーが資金難に陥り自ら$500万をキャンペーンに融資せざるを得なくなった。 一方オバマの支持者はインターネットを通じて$25、$50とポケットマネーを送り続けた。 9月には$6500万もの献金を集めた。 選挙が終わってもオバマは資金が余っており慈善団体にか公共機関に寄付するそうだ。 1月にアイオワで芽を吹いたオバマなる樹が10ヶ月の間に市民の間に深く根を張り枝葉を伸ばし11月には大輪の花を咲かせた。 オバマの言葉どうりこの花はオバマの花ではなく国民全員の花である。 この花が大きな実をつけるかどうかはオバマ自身と今後の国民の意識にかかっている。
期待しているのはアメリカ国民だけではない。 世界中がこの選挙に注目しオバマの当選を歓迎しアメリカの変化に期待している。 イランのアフマディネジャド大統領でさえ祝福のレターを送ってきたほどだ。 ブッシュ政権は世界中に敵を作ってしまった。 不必要な緊張を拡大し続けてきた。 ブッシュとオバマでは世界観がまったく違うからまず世界の緊張がほぐれるだろう。 オバマは公約どうり世界と対話を始めなければならない。 世界の首脳は彼と合って彼の人となりを知り政策を理解し彼を大統領にしたアメリカを再評価してアメリカとの距離を縮めることになるだろう。 オバマはキャンペーン中リードしても浮かれず非難中傷を浴びても落ち込まずいつも沈着冷静でぶれなかった。 目先のことにこだわらずいつも遠くを見つめているようなオバマ。 彼がアメリカの再生と世界の緊張緩和を実現してくれることを大いに期待している。

2008年11月5日水曜日

米大統領選挙(49) オバマが教えてくれたこと

愛と希望があるから生きられる。

人種差別、ケニヤ人の父と白人の母を持ったアイデンティティの混乱、Food Stampに頼る貧困,  荒廃したサウスサイド・シカゴでの生活 いずれを取ってもオバマの半生は厳しく困難なものであったに違いない。 いくら高邁な志があるからといっても途中で挫折してもおかしくなかった。
彼だけが厳しい人生を強いられただけではない。 ケニア人と結婚した母、シングルマザーになった母、オバマを引き取って育てた祖父母、 決して裕福ではない家庭でオバマの成長に心血を注いだ。 祖母はオバマに学校に通わせるため昼夜無く働いた。  

1960代年から1970年代にかけてアメリカは今では想像できないほど人種偏見、差別が存在していた。 公民権法案は成立したものの人々は頭と心の中をすぐに変える事はできなかったのだ。 白人社会の白人家庭で黒人の少年を育てることはとても勇気のいることであり理不尽な中傷にも耐える忍耐が必要だった。 そのような環境の中で母親と祖母はオバマ少年に出来る限りの愛情と教育を与えた。

彼が誰にもぶつける事ができない苦悩を乗り越えて大統領にまでなれたのはまず母親と祖父母の愛情とともに教育に対する投資を忘れなかったからでこれは彼自身が一番よく知っている。 だからキャンペーン中にも教育の充実が政策のひとつの柱であると公約していた。 学校では「TVのスィッチをきりなさいと言えないのです」としばしばキャンペーンで世の親たちに訴えていたのは家庭教育の重要性を認識していなければいえることではないと思う。 家庭教育をしっかりやらなければ根本的な社会の問題は解決できないと確信しているからである。 この一言でもってオバマが家庭でどのような躾を受けていたかがしのばれる。 

ハーバード大学に入って彼は次第に将来の目標が定まってきた。 彼は自分の生い立ちを振り返って恵まれない人のために力になろうと考えた。 もっとも最短距離で目的が達成できるのは政治家になることだ。 彼はハーバード・ロースクールを卒業しても高給が約束されている弁護士や投資銀行のエリート社員にならずシカゴの弁護士事務所を振り出しにサウスサイド・シカゴのコミュニティ・オーガナイザーとして貧困地区の再生に取り組んだ。 それ以降イリノイ州の上院議員になろうがイリノイ州選出の上院議員になろうが次期大統領に選出されようが「他人のためになろう」という彼の信条は変わらない。 彼はリンカーン大統領が好きでリンカーンの言葉や信条をよく引用するが彼の頭の中にはいつも「人民の人民による人民のための政治」というのが頭にあるようだ。 彼にはこのような信条がありそれを実現するための野心はあるが私心が見えない。 半生をかけて培ってきた信条は少々のことではぶれない。 キャンペーン中にもライト牧師の暴言、 シカゴの不動産業者との関わり、 過激派エイヤーとの交流など直接関係の無いうわさの捏造、ばかばかしい中傷など民主党の対抗馬や共和党の候補からあらぬ非難や中傷を浴びてもオバマはいつも冷静で最低限の反論しかしなかった。 オバマキャンペーンの間でも彼の冷静さが物足りない、やられるならやり返すというのがアメリカ流だからもっと相手を攻撃したほうが良いという内部の意見があったが彼は彼流の冷静さを貫いた。 ヒラリー・クリントンは演説が滑らかだが各地で多数派に媚を売るような有権者べったりのリップ・サービスを繰り返していたが結局のところ一貫性が無く国民にそっぽを剥かれることになってしまった。

オバマは初めから「改革は痛みを伴う。 すべての人に良い政策はありえない。 すべてのことを一度に解決できるわけはない。」と初めから国民に向かって訴えている。 彼の政治の目標がはっきりしているのでどのような場面に直面してもぶれないのだろう。 そして最後に国民の信頼を勝ち得たのである。


オバマはいつも遠くを見ているような眼をしている。 大統領選を勝ち抜き勝利したその夜でもバイデン以下キャンペーンの仲間たち、シカゴのグランドパークに集まった15万の群集も一回に喜びを爆発させていたがオバマ自信は笑っていなかった。 来るべき試練と大きな責任に気持ちを引き締めているような厳しい顔をしていたのが印象的である。


オバマがハーバード大学とハーバード・ロースクールを卒業したきわめて優秀な人物であることは間違いないがハーバードというトップ・ブランドが社会の表と裏でとても大きな役割を果たしている。 一般社会でもハーバード卒なら普通の関門はノーパスでOK. 特に大統領選挙では民主党・共和党を問わず候補者がハーバードかエール卒業である場合はハーバードマシーンやエールマシーンがフル回転するといわれている。 ハーバードのアメリカでのネームバリューは東大の日本におけるネームバリューよりの上だろう。 何しろ世界の秀才が集まり激しく論議して幅広くネットワークを構築していくダイナミックな組織だから非常に多くの才能が開花し実社会に出てゆく。 単にアカデミックな知識を誇る学者の館ではないのである。

高度な教育を受けた者ほど偏見が少なく広く先が見える。 教育程度が上がるほどオバマ支持率が上がるというのは選挙結果の分析で明らかだ。


これからオバマに関する書籍は今後長く出版されると思うが執筆する人もエピソードが多くて楽しいと思う。

オバマが私に一年かけて教えてくれたことをまとめてみれば

1.子供を育てるには一にも二にも愛情が大切であること。

2.信条とそれを達成する希望を持って決してぶれないこと。

3.常に上を向いて勉強を怠らず広くネットワークを築くこと。

オバマ次期大統領は大統領になる前からアメリカ国民に良い刺激を与えているようだ。









 

2008年11月4日火曜日

米大統領選挙(48) 新大統領の誕生

11月4日大統領選挙の日、朝の天気は曇り空だった。 天気予報では東海岸は大体曇りか雨、西海岸も全般に曇りか雨。 これまでの統計では雨の日は全体で投票率が1%落ちる。 そのなかでも民主党の投票率は2.5%落ちるとの統計がある。 上記の全米の天気予報は民主党が有利な地域の投票率が落ちることを意味している。 しかし私はこの統計は今回の大統領選挙には当てはならないと思っている。 なぜならこの選挙に対する国民の意識は異常なまでに高く天候が大きく影響するとは思えない。 また民主党の方が若年層の支持者が多く年齢が上がるにつれて共和党の支持者が増える。 全米を通じて投票所には長い列が出来て2-3時間待ちはざらという状況だから高齢者にとっては厳しい状況である。 それでも自分は歴史的な大統領選挙にぜひ一票を投じたい、新しいアメリカを創るために自分も参加したいというアメリカ国民の気持ちがこれまた記録的な投票率となって表れている。

インディアナ州とケンタッキー州で全米で最も早く午後6時に投票が締め切られた。 午後7時にはヴァージニア、ジョージア、フロリダなど東南部中心に7州が続く。 つぎつぎと開票の途中経過が報じられる中、CNNの出口調査の結果バーモント(3票)はオバマ、ケンタッキー(8票)はマッケーンとCNNのProjection(当確)がアナウンスされた。 ヴァージニアではまずマッケーンがリードだが開票数が少なく当てにならない。 インディアナは両候補が抜きつ抜かれつのデッドヒートを展開している。 

8時には 獲得代議員数がオバマ102、マッケーン34となりオバマ有利と展開が数字となってあらわれてきた。 8時半にCNNがペンシルヴェニアはオバマ当確アナウンスした。 ペンシルヴェニアこそ天下分け目の戦いでオバマもマッケーンも最重要のキー・ステートとして最後の最後まで キャンペーンを続けていた。 ペンシルヴェニアがオバマの手に落ちたことで勝負あったと見た。
11時にはCNNがカリフォルニア(55) オレゴン(7) ワシントン(11)の3州を締め切りと同時にオバマの勝利として加えオバマの獲得数が過半数の269を越えたのでオバマ新大統領が誕生したことを伝えた。
最終結果はオバマ349票、マッケーン163票でオバマの圧勝となった。

全米が沸き立ったことは言うまでもない。 今回の選挙は共和党か民主党かという問題ではなく苦境に立っているアメリカがどちらに向かうのか国民も世界も注目した選挙であった。
先の見えない現状にオバマもマッケーンも”チェンジ”を唱えるがオバマが変革の旗手であることは誰が見ても明白である。 マッケーンが次第にネガティブ・キャンペーンに傾斜していったのに比較してオバマは予備選の初期から党派を越えてまとまり国民がアメリカ再建に協力
するよう訴えた。 オバマの思考と人格が多くの人に受け入れられる純粋さと広がりをもっていた。 インディペンダントの3分の2がオバマに投票したことが証拠である。

オバマの勝利はオバマ自身が勝利演説で述べたようにオバマに投じた人たちだけでなく国民全体の勝利である。 黒人やヒスパニックなどマイノリティだけの勝利ではない。 マイノリティが100%オバマに投票しても70%を占める白人の多くがオバマに投票しなければオバマ大統領は誕生しなかった。 投票結果は詳細に分析されているがマッケーンが過半数を獲得したのは65歳以上の高年齢者のみでその他のカテゴリーではすべてオバマが上回っている。 間違いなく新しいアメリカを目指す人たちの勝利である。
アメリカはオバマを選んだことで自らの過ちを訂正し方向を修正する民主的な国家であることを証明した。 アメリカの国民は方向修正したことで安堵と自信を取り戻すだろう。 同時に世界の信頼も回復することを期待している。

2008年11月3日月曜日

米大統領選挙(47) 選挙前日

大統領選挙を明日に控えてオバマ、マッケーン両候補とも朝早くから夜遅くまで最後の遊説を続けている。 時差を利用して東から西まで順を追って飛んでゆけば通常より3時間は多くキャンペーンできる。 実際の投票は10日ほど前から始まっている。 いわゆる不在投票だがアメリカは選挙前10日間ならいつでも投票所で投票できるし郵送もできる。 11月3日朝現在すでに4200万人が投票したという。 しかも殆どの選挙区で2-3時間並ばなければ投票できないほど有権者が投票に向かっている。 長時間立ちっぱなしで順番を待ってまで自分の一票を投票しようというのだから選挙民の熱意のほどがわかる。 日本の選挙では考えられない。 日本ではおそらくそのような事態になれば殆どの人が投票せず帰ってしまうだろう。 
このような状況なら投票マシーンを増やすか従来の不在ペパー投票の期間を事前に拡大すればよいと思うが今回の選挙には間に合わない。 とにかく投票率が予想をはるかに上回るようでそれが不在投票にも表れているようだ。 

今回の選挙がこんなに盛り上がる理由は

1. 曲がり角に立っているアメリカにオバマという新しいスーパースターが誕生しつつあり彼に希望を託すという機運が大いに高まっている。 

2. 若者のの新規登録が大幅に増えている。 

3. オバマという黒人候補が立候補したことで今まで選挙に関心の薄かったマイノリティ層が投票しようとしている。 

4.オバマが2週間も前から各地の演説で選挙日を待たずすぐに投票に出かけるよう促していることも大きい。 

5. 予備選のときから民主党は指名争いが拮抗しヒラリー(女性)対オバマ(黒人)というどちらがなっても初の大統領という大きな話題があった。 

6. 本選終盤では劣勢のマッケーンにペイランという女性副大統領候補が躍り出て一気に話題をさらってしまったこともある。

マッケーンはオバマに平均して5-6ポイントのリードを許していたにもかかわらず最後の追い上げは凄まじいものがあった。 この迫力を一ヶ月以上までに示していたならば国民の反応の少し変わっていたかも知れない。 冷静なオバマも最後の数日は「最後まで気を抜くな! 投票が終わるまで結果はわからないのだ」と支持者に訴えている。 私はオバマの楽勝と見ているがさて明日の投票結果はどうなるだろうか。

オバマさんのおばあさんが今日亡くなった。 ここまで信念を貫いて大統領になることが確実になったオバマさんだがおばあさんの愛情と献身が無ければ今のオバマさんは無かったであろう。 オバマさんが大統領になる前におばあさんは亡くなったがおばあさんとしてはこれほどの幸せはなかっただろうと思う。 アメリカで最も偉大なおばあさんとして名が残った。