11月4日夜オバマ新大統領の誕生で全米が歓喜にわいた。 ほぼ半数近くが共和党支持者だから”全米が”という表現は間違いかもしれないがアメリカ国民全員がオバマ大統領の誕生を心から歓迎しているように思えるほど喜びに沸いているのだ。 シカゴのグランドパークに集まった15万の群衆の中には20年ほど前に大統領予備選に立候補したジェッシー・ジャックソンもいた。 あふれる涙をぬぐおうともせず感極まった様子で立ち尽くしている。 オプラ・ウィンフリーもいた。 「こんな日がくるとは思わなかった。 これでアメリカは何でも可能であることを証明した。 素晴らしい」と後のインタビューで答えていた。
普段は冷静なはずのTVキャスターも評論家もスターもこの時ばかりは言葉を詰まらせ涙をうかばせた。 長い間アメリカにいるがこんなシーンは見たことがない。
「こんな日がこんなに早く来るとは思わなかった」のはオプラだけではない。 黒人はもとより白人もマッケーンに投票した保守派もオバマを支持した若者も外国のメディアもそして私も。 1960年代の終わりに始めてアメリカにやってきた時はまだトイレもバスも白人と黒人は別々であった。 公立校で生徒をミックスするためにバッシングが行われていた。 バッシングが行われていた地域からは白人が逃げ出していた。 公民権法案が施行されてもまだまだ現実に差別は続いていた。 今でもすべてが平等かというとそうではない。 特に黒人の人にとっては我々が知らない世界でまた人々の心の奥底でまだ差別を感じているに違いない。 白人もそれを知っているから今回の選挙は白人自身の本能にも似た感情の壁を選挙という形で打ち破った。 彼らもそれを誇りに思っている。 アメリカは選挙結果以上のものを勝ちえたといえるだろう。
2年前にオバマがイリノイ州のスプリングフィールドで旗揚げしたときは殆どの人が彼を知らなかった。 1年前に民主党の第一回ディベートが行われたときも彼が民主党の指名を獲得するなど誰も信じていなかった。 1月3日のアイオワ・コーカスで大方の予想(ヒラリー・クリントンが有利)を裏切り彼が1位に踊り出たときさえ初打席のまぐれヒットのように考えていた。 予備選が進むにつれオバマとヒラリーの一騎打ちになったが時が経つにつれてヒラリーの言葉が上滑りになりオバマの熱情が国民の間に浸透していった。 7月にはヒラリーが資金難に陥り自ら$500万をキャンペーンに融資せざるを得なくなった。 一方オバマの支持者はインターネットを通じて$25、$50とポケットマネーを送り続けた。 9月には$6500万もの献金を集めた。 選挙が終わってもオバマは資金が余っており慈善団体にか公共機関に寄付するそうだ。 1月にアイオワで芽を吹いたオバマなる樹が10ヶ月の間に市民の間に深く根を張り枝葉を伸ばし11月には大輪の花を咲かせた。 オバマの言葉どうりこの花はオバマの花ではなく国民全員の花である。 この花が大きな実をつけるかどうかはオバマ自身と今後の国民の意識にかかっている。
期待しているのはアメリカ国民だけではない。 世界中がこの選挙に注目しオバマの当選を歓迎しアメリカの変化に期待している。 イランのアフマディネジャド大統領でさえ祝福のレターを送ってきたほどだ。 ブッシュ政権は世界中に敵を作ってしまった。 不必要な緊張を拡大し続けてきた。 ブッシュとオバマでは世界観がまったく違うからまず世界の緊張がほぐれるだろう。 オバマは公約どうり世界と対話を始めなければならない。 世界の首脳は彼と合って彼の人となりを知り政策を理解し彼を大統領にしたアメリカを再評価してアメリカとの距離を縮めることになるだろう。 オバマはキャンペーン中リードしても浮かれず非難中傷を浴びても落ち込まずいつも沈着冷静でぶれなかった。 目先のことにこだわらずいつも遠くを見つめているようなオバマ。 彼がアメリカの再生と世界の緊張緩和を実現してくれることを大いに期待している。