2008年10月21日火曜日

米大統領選挙(46) パウエル元国務長官オバマを支持

コーリン・パウエルといえば元帥、元統合参謀本部議長、元国務長官、現在も共和党の重鎮でアメリカ人で知らない人はいない。 現在のアメリカでは党派、人種、年齢、性別の問わず最も尊敬される人物で彼に並ぶ人はいないと思う。 大統領選挙に出馬すれば確実に選ばれる唯一の人物といわれていた。 一年以上前に立候補を促す声もあったが奥さんと家族の強い反対で踏み切れなかった。またはパウエル氏自身が共和党内のネオコンとの対立があり自分では思うように共和党を引っ張れないとの思いがあったに違いない。
パウエル氏の胸のうちは異文化を理解しないで他国との協調、平和の維持は出来ないと思っておりブッシュ大統領とは基本的にスタンスが異なる。 

彼はNBCのインタビュー番組でオバマを支持すると明言した。「アメリカ国内での両党の対立解消や世界各国との協調を実現できるのはオバマしかいない。 彼には新しい時代を展望する希望があり今の困難な時期に指導者としてアメリカを引っ張っていくのは彼が適任である」と述べている。
大きなニュースに違いないがインパクトが大きくてメディアも当日は事実を伝えるにとどめ論評を控えているように見えた。 2日目からいっせいにニュースと共に解説を始めたがダメ押しとも取れるパウエル氏のEndorsementでオバマ・リードに一段と拍車がかかったと伝えている。

メディアはもともとオバマひいきで予備選でもヒラリー・クリントンからもフェアでないとクレームがついていたがここに来てChicago Tribune, NY Times, Wasington Post,LA Timesなど大手メディアがいっせいにオバマ支持を表明している。 
理由はワシントンを刷新し分裂したアメリカをまとめられるのはオバマであり彼自身が選挙戦を通じて成長しているとしている。 一方マッケーンは革新性に乏しく政策・政見がぶれている。 ネガティブ・キャンペーンに終始して明るさが見えない。 決定的なのは副大統領候補に指名したS.Palinは大統領としての資格が無いと見られておりこのような人物を副大統領候補として指名したマッケーンは大きく判断を誤ったと決定づけている。
逆に言えばマッケーン・ペイラン陣営は自らの性格や資質、政策・経験を訴えてもオバマ・バイデンには及ばないのでオバマをこき下ろすしか対策は無いのである。

Pollはオバマのリードが広がるばかりでマッケーンはもはや勝ち目は薄いと見られているものの選挙は水物。 当日結果を見るまで予断を許さない。
(追加ニュース)
これを書いた数日後23日に数ヶ月前までブッシュ大統領の広報を勤めていたスコット・マクレラン報道官がオバマを支持するとCNNの番組で表明した。 これには司会者も驚いたがすべての人が驚いたに違いない。 ブッシュ政権はここまで身内に見限られるとは地に落ちたのもだ。 共和党のマッケーンは終盤に来てハードなワンツー・パンチをくらった。 

2008年10月17日金曜日

ベッドミンスター 秋

天気の良い日は屋内にいるのがもったいないと思うほど10月の気候は気持ちが良い。
9月の終わりから比較的気温の低く乾いた日が続いたので今年の紅葉は早くきれいだろうと予想してたがそのとうりになった。 このあたりはもともと自生のメープルが多いが住宅地の中にもメープルと共に何種類かの紅葉する樹木が植えてあり10月の中旬から11月の初旬にかけて自然の色の変化を日々鑑賞することが出来る。 


我が家の周りにも早々と秋がやってくる。 タウンハウスでは落ち葉かきも枝払いも業者がまとめてやってくれるので気が楽だ。 齢がいってからは一軒やよりもタウンハウス住まいのほうがよい。

車で10分も走ればFarm(牧場兼別荘)が広がる。 このあたりはサラブレッドのブリーディングを行っている牧場が多く馬のために道は舗装していない。 このダートのみちを高級車やSUVが土煙を上げて走る。

道端にFarmでとれたリンゴを売っている。 形は小さいがもぎたてのフレッシュな味がする。 一袋10個入って$3.00はグローサリーで買うより大分安い。

10月に入ればハロウィンのためにカントリーストアではパンプキン、リンゴ、コーン,菊の鉢植えがいっせいに並ぶ。 秋の風物詩だ。

紅葉は種類により色も異なるしピークの時期が異なる。 それぞれの樹の最も美しい紅葉は3日ももたないが多くのメープルが入れ替わり立ち代り色づいてくるのでここでは比較てき長い間紅葉を楽しむことが出来る。 わざわざ遠出して紅葉狩りに行かなくても毎日買物の行き来に自然を楽しめるのは結構なことだ。

2008年10月16日木曜日

米大統領選挙(45) 第3回ディベートとNY夕食会

あと20日残すのみとなった大統領選挙だが第3回のディベートがNYで行われた。
個人的にはオバマの楽勝と見ているだけに今までほどディベート観戦にも力が入らない。
問題の争点も詳細にわたり論議し尽くされているので関心を引くのは後れを取っているマッケーンがどのような切り替えし作戦に出るのかだけだった。

マッケーンは今まで以上にOffensiveで意欲だけは見せたが所詮内容に新しいものが無くネガティブ・ファクターでオバマを攻撃しようとするがオバマの交友や利益団体につき拡大解釈や事実を捻じ曲げて非難しておりまったく的外れでむしろ信用を失っている。 非難される側のオバマはクールでまったく動じない。 ディベートは次第にオバマペースとなり今回も満場一致(CNN)でオバマの勝利となった。 Pollもしだいにオバマのリードが拡大していることを示しまずオバマ大統領の誕生は間違いないだろう。

面白かったのは翌日のNYでの夕食会。 カソリック協会とNY市長主催のDinner Partyには政界・財界・マスコミ・宗教関係者のお歴々が集まる最もランクの高い夕食会でマッケーン、オバマ両候補も主賓としてひな壇の中央左右に席を与えられた。 キャンペーンからはなれてリラックスした夕食会とはいえスピーチで失敗すれば選挙への影響は免れない。
二人ともMain Speakerでジョークを競い合った。 Speach Writerが書いた演説とはいえマッケーンのジョークは秀逸で初めから終わりまで聴衆を笑わせた。 オバマは本来はジョークを身に付けたスマートな人物と思われるがこの日はさすがに硬さがみられ笑いの量はマッケーンの半分にも満たなかった。 彼のスピーチの後半は真面目な選挙キャンペーンとなりこの場にはそぐわなかった。 リラックスする夕食会では徹底したエンターテインメントにするべきである。 夕食会での勝負は完全にマッケーンの勝ち。 選挙中にこのような笑いの競争があるのが目いっぱい戦っている両陣営の息抜きになりジョーク好きの国民にも一息入れるいい機会になったと思う。

2008年10月9日木曜日

世界市場の連鎖崩壊

まさかと思っていた世界市場の連鎖崩落が始まって地球の自転にあわせて次から次へと株式市場の暴落が繰り返されている。 今回の暴落には銀行・証券・保険の大手金融機関の破綻が伴って資本主義のシステムそのものが危機になっているのだ。 
直接の原因はサブプライムローンの破綻ということになっており異論はないが制度そのものは低所得層にも持ち家をということで悪いことではない。 しかしその運営が無節操、無制限でしかもそれを証券化して世界中にばら撒いたことであろう。 
10年ほど前に私が今の家を買ったときも不動産業者(Weichart Realtor)からまずローンのオファーがあった。 金利は30 years fixedから条件に合わせて各種オファーされたがこのなかに変動金利も含まれていたように思う。 当時すでに金利が歴史的に低い水準にあったので変動金利では将来高い金利を払わされると思って30 years fixed rateでローンをセットしたと記憶している。 何ヶ月かあとにMortgage Co.がChase Mortgage Co.に変わったとの通知を受け取った。 私のローンはサブプライムローンではないがこれもWeichartがMortgageをChaseに売ったのだ。

法律上はともかくまともに考えれば貸し手も借り手も行き詰ることがわかっているような融資行為を”意図的に”薦めて貸し手はすぐさま債権化して売り逃げる。 これではあまり詐欺行為と変わらない。 しかしある程度それを知りながら手を出した大手銀行、世界の商業銀行も被害者であると共に共犯者といっても言い過ぎではない。 銀行は内でも外でも競争にさらされており利益至上主義から危ないと判っているような証券にも手を出さざるを得なかったということなのだろうか。 それとも格付けを信用して内容を知らずに買い込んだということなのか。 また証券会社・投資銀行は業績がよければエグゼクティブなら数百万ドル20代のトレーダーでも50万ドルのボーナスを手にすることが出来る。 たとえ損失を出してもボーナスが減るだけで彼らが責任を負うことはない。 これなら誰でも行き着くところまで言ってしまうだろう。 金融機関の救済策を練っている政府・議会もおそらくこの点には気づいていると思う。 だから救済に当たってはエグゼクティブの巨額のボーナスを制限する条項を盛り込もうとしているのだ。 国民は自分たちが収めた税金で無責任経営の金融機関を救済することに抵抗感を感じている。 しかも自分たちが少しずつ積み立てた401Kなどの退職積立金が大幅に目減りしているというのに。 もっとも割り切れないのは異常な市場環境でクレジットクランチがおき運転資金が借り入れられずに倒産した企業の従業員たちである。 世の中いつも不合理でしわ寄せは常に弱者のところにやってくる。

一昔なら当然取り付け騒ぎが起きていただろう。 世界金融恐慌を回避するため米政府、FRB,各国政府・中央銀行も緊急対策と昼夜を問わず対策に追われている。 G7の緊急救済準備金設置は評価される。 いたずらに自国の防衛にとどまることなく各国が協調しているのは毎年開催している首脳会談で今のような非常時に即対応できるコミュニケーションシステムが出来ていたからだろう。 西側国際社会のいい面が始めて証明された。 不幸中にも喜ばしいことである。

アメリカは確かに行過ぎた。 それに対してブッシュ政権は何もプロアクティブな対策が取れず改めて無能ぶりを発揮してしまった。 これはビジネスの行過ぎた自由主義のみならずアメリカの国民の過度な信用膨張生活にも原因があると思う。  双子の赤字(財政と国際収支)はとどまるところを知らずもはやUncontrollableなレベルまで来ているような気がするがいずれにせよ今までのような成長拡大一辺倒の経済運営は期待できないし方向転換すべきだろう。

国民は変化を求めておりアメリカは歴史の曲がり角に立っている。 新しい大統領にかかる責任はいままでのどの大統領よりも重いしリーダーシップを発揮してアメリカ再生に取り組んでほしい。 

2008年10月8日水曜日

米大統領選挙(44) 第2回ディベート

2回目のディベートがテネシー州ナッシュビルで行われた。 オバマのリードが広かる中マッケーンとしてはこの機会に挽回しなければ逆転はますます難しくなる。
今回のディベートは聴衆からの質問に答えるタウンミーティング形式で行われ今最も重要かつ緊急を要する経済危機とイラク・アフガニスタン問題に的が絞られたので双方の議論がかみ合って最も良いディベートであったと思う。
マッケーンはタウンミーティングでの議論を得意としており昨夜も今までとは違って迫力があった。 しかし過去の実績や政界での経験の深さを強調するばかりでにポリシーの具体性に欠け、将来の展望と期待、説得力という点でははるかにオバマに及ばなかった。 
マッケーンは陰でありオバマは陽である。 オバマには期待と希望がある。 ケネディにせよクリントンにせよ若い候補は未経験・未知数といわれながらも国民に希望を持たせることによって大統領になった。 各地の集会でもオバマの聴衆は笑顔が絶えない。 一方マッケーンの聴衆は固い。 
モメンタムは完全にオバマに傾きNational Poll(オバマ48-マッケーン44)もこれを証明している。 Key Swing Statesである次の5州でもオバマが追いつき追い越した。 Ohio(オバマ50-マッケーン47) N. Carolina(オバマ49-マッケーン49) Florida(オバマ48-マッケーン46) Missouri(オバマ48-マッケーン47) Colorado(オバマ44-マッケーン44) 
わたしはもう勝負あったと見ている。

2008年10月4日土曜日

Bailout Planは終わりか始まりか

Bailout PlanとMarket Reaction

一度否決されたBailout Planは預金者保護を$25万まで引き上げるオマケを付けて再び上程され上下院双方で可決された。 ブッシュ大統領が署名して早速発効する。 

アメリカ発の金融危機が世界に波及せぬようにと何とか今週末で決着をつけようとの大統領、財務長官、上下院首脳部等の必死の努力の甲斐あってやっと全面的な支援策が決定した。 審議の進展と投票の推移は国会チャンネルを通じてライブで放映されていたのでNY Stock ExhangeのFloorでも注目されていた。 朝方は今日はBailout Planが可決されるだろうとの見方とWachovia BankがWells Fargoに政府の支援なしに買収されるとのニュースが楽観論として流れマーケットは昼すぎには約300ポイントも上げた。
Bailout Planの可決がほぼ確実となったのは午後2時ごろなのでまだマーケットはオープンしていた。 私はマーケットはこれでもっと上を目指して強含みに推移するものと思っていたがマーケットは逆の反応を示しずるずる後退し-157.47で引けた。 安値で引けた理由は定かではないがBaikout Planno の内容が明らかになるにつれてマーケットを救済するには十分でない、即効性はないとという見解がながれたためか。 それとも先週の失業者登録が159,000人と急増したことによるのか。 
いずれにせよ金融市場の安定と再建はこれからであり危機の終焉とはいえないとの解説で今のところは期待より不安が勝っているということだろう。

私見では金融機関、大企業の金融支援はこれで一段落したと思う。  問題は個人の家計である。 一般的に言ってアメリカ人は生活を先食いしているといわれている。 目いっぱい借金して豊かな生活をキープているのだ。すなわち国も個人もその付けを将来払わねばならない。 過去10年以内に家を買った人は多額の住宅ローンをかかえている。 その上クレジットカードを数枚保持していてこれも目いっぱい借りている。 クレジットカードは自分の支払い能力内で毎月清算できればこれほど便利なものは無い。 しかし一旦自分の支払い能力で回らなくなると超高金利の支払いでいわゆる”サラ金地獄”に陥ることとなる。 クレジットカードといえば格好良く聞こえるがサラ金となんら変わるところは無い。 
その人たちにとっては金融市場が安定しようがしまいが彼らの問題は解決しない。 今後クレジットクランチにより金利が上がれば上がるほど生活を圧迫することは目に見えている。
サブプライムローンは住宅という目に見える”物件”が担保となっているがクレジットカードの場合は何も無い。 今のアメリカは国も個人も超スピード自転車操業、スピードを緩めればこけてしまうのでとことん走り続けねばならない状況だ。 

日本もヨーロッパも中国もその他の国々も今まではアメリカと一身同体で寄りかかりつつまた支えながら一緒にランニングしてきたけれど誰かが倒れればもはや支えられる人がいなくなって総倒れになってしまう可能性がある。 だからいやが負うにも協力しなければならないのだ。 世界に自由と富をもたらして来た”自由主義”と”民主主義”が崩壊しないよう祈るばかりである。

2008年10月2日木曜日

米大統領選挙(43) VPディベート

VPディベートとしては今まで最も注目されたディベートである。 

9月1日の共和党党大会直前に決定されたVY候補アカスカ州知事サラ・ペイランは影の薄かった共和党大統領候補ジョン・マッケーンを舞台の中央に引き戻し自らも怪しい社会面ニュースを撒き散らしながら一気にアメリカ国民の関心を集めた。 最初の演説の滑らかさと強気は共和党保守派と女性の支持獲得に力を発揮しPollでは数日でオバマを逆転してマッケーン リードに導いたのである。 マッケーン キャンペーン陣営の作戦が功をそうしたというべきか。
しかし9月14日のABCもインタビューで早くも中央政治と国際問題に関してはまったくの素人であることを露呈してしまった。 しかもインタビューでの自信の無さ、的外れの答えはデビュー直後の熱気を吹き飛ばして批判一色に塗り替えられてしまったのである。当然ながらマッケーンのPollは急落し逆転どころか各地で大きく水を開けられてしまった。

バイデンは上院外交委員長、法務委員長を勤める議会のベテランである。 各国の首相、外相にも面識の多いアメリカの顔でもある。

バイデン対ペイランのディベートは新入幕の関取が大関に初挑戦するようなもので勝負は初めから決まっている。 関心はペイランがどこまでボロを出さずに質問に答えることが出来るか。 (多くの共和党支持者はディベートで共和党の評価がたがたに崩れるのではないかと恐れていた。) バイデンは知識や経験からしてディベートで勝利して当然。 ただし調子に乗りすぎて失言(特に女性に対して)しないかと心配されていた。

ペイランは数日前からアリゾナのマッケーン・ランチでディベートの特訓を受けていた。 そのせいだろうか自分が答えられない質問に対してもうまくはぐらかして、またはすべてアラスカ州知事の経験にすり替えてしまった。 知識の無いことは相変わらずで繕いようがないがぼろぼろにならずに済んだのは上出来というべきか。 

一方バイデンはさすがに国際問題ではトップのベテランである。 特にマッケーンの姿勢をブッシュとなんら変わりないことをアッピールしていかに早期にイラク戦争を収拾することが大事であるのか、アフガニスタンの対テロ戦争に軍事力を集中してビンラディンのアルカイダをとタリバンを壊滅することが大事なのかを数字を挙げて力説した。 これは大いに説得力があり中間派、独立派の票獲得に力を発揮することになるだろう。

結果は両者とも期待以上の出来であった。 しかしこの結果が大きく大統領選挙に影響があるかというとそうではないだろう。 あくまで大統領候補、マッケーン対オバマの選挙であって
まだ後2回本人同士のディベートが残っている。 このディベートでマッケーンがオバマをノックダウンするほどのビッグパンチを繰り出さないとオバマ有利のモメンタムを逆転することは難しいだろう。