2009年1月15日木曜日

クリントン新国務長官

1月20日に発足するオバマ新政権で最も重要な閣僚は国務長官と財務長官だろう。
1月13日に新国務長官に指名されたヒラリー・クリントン承認のための公聴会が上院外交委員会で行われた。 
大統領予備選では民主党の指名獲得をめぐって熾烈な選挙戦を戦ったオバマ大統領のライバルであり未だに強い影響力を持つビル・クリントン元大統領夫人であること。 しかも次期上院院内総務の候補にも挙がっている実力派上院議員とあっては国内のみならず海外からも大いに関心を集めていた。
大方の懸念は実力上院議員であり個性の強いヒラリーがオバマ大統領の下で一元化したアメリカ外交を展開できるのだろうかというところにあった。
指名を受けてから1ヶ月が経つがイラク&アフガン戦争以外にもイスラエル・パレスチナ紛争、ロシア・ウクライナ石油輸送問題、アフリカ各地の民族闘争・内乱など国際情勢が厳しさを増している。 この間ヒラリーは殆ど姿をみせず発言もしなかった。
夫ビル・クリントンがクリントン・ライブラリーに集めた海外からの巨額の寄付金が夫人であるヒラリー国務長官の職務に影響を及ぼさないかという懸念はあったもののほぼ国務長官就任は確実視されていたのでおそらく新スタッフの採用と国務省の運営構想に時間を費やしていたに違いない。 また日々変化する国際情勢を踏まえながら多くの国務省スタッフからブリーフィングを受けなければならない時期だ。 公聴会に現れたヒラリーの顔は額にしわをよせ目の下に隈をつくっていかにも疲れた様子だった。 国務長官はスタート前から激務である。 
新外交委員長J. Kelly以下各委員は彼女の基本的な外交姿勢やイラク・アフガニスタン・イラン・北朝鮮に対する対処の仕方など広範囲にわたって突っ込んだ質問をしていたものの総じて友好ムードで外交委員会としても党派を超えて政権と国務長官をサポートしようという姿勢が感じられた。
ヒラリーは外交政策の基本姿勢と具体的な対処は大統領と国防省との関係もあって明確な答は避けていたが大統領や補佐官、国防長官との連携を強調して外交政策の一本化を確信させるに充分であった。 国務長官の自身のアプローチの仕方についてはさすがに雄弁さを取り戻し持論を展開した。 外交は本来地味な仕事であって常に国益を前提に発言、行動しなければならない。 表に立つことが好きで個性の強いヒラリーがオバマ大統領の考えに沿って柔軟な外交を展開できるかどうか心配する向きが多いが私は目標がはっきりしているかぎりヒラリーは有能さを発揮すると思う。 ヒラリーはイデオロギー色が薄くブッシュJr.のような自由主義、カーターのような人権重視を押し付けることはしないだろう。国益重視の実務外交に徹することが今のアメリカに最も大事で外国にも判りやすいのだ。 ヒラリーは適任だと思う。