2008年8月28日木曜日

米大統領選挙(34) 期待される副大統領

期待される副大統領

1月初めから約5ヶ月かけて各州で行われた予備選の結果は暫定的で正式には党大会の投票で過半数の代議員を獲得した候補者が正式の党を代表する候補となる。 (実質的にはオバマ候補が指名獲得することは間違いないが)
その投票が3日目の午後4時ごろから始まった。 通常なら州予備選の結果選出した候補に自州に割り当てられた代議員数を100%この候補に投票するのが慣例であるが今回はヒラリー支持者の強い抵抗にあって党大会でも代議員が自由にヒラリーを候補者として投票することが認められていた。
しかし民主党本部としてはかかる方式はいかにも民主党が未だに分裂状態にあることを世間に見せ付けるようで何としても回避したかった。 ぎりぎりまで折衝を続けたが結局話し合いがつかず各州代表によりオバマに〇〇票、クリントンに〇〇票、棄権〇〇票と投票数がアナウンスされていった。 結果はもちろんオバマがヒラリーに大差をつけて開票がすすめられたがほぼ3分の2を過ぎたころニューヨーク州の投票報告の場にNY代議員と共にヒラリー・クリントンが現れ投票を中止して会場の歓声(Acclamation)でもって指名候補を選出する動議を提出した。
これを受けてナンシー・ペローシ下院院内総務(民主党党大会委員長)が会場に向かってオバマ候補を民主党指名候補にするかどうかを問いかけこれに対して会場は“アイ”と応じてここに正式にオバマ民主党候補が誕生したのである。
初めて黒人が2大政党の大統領候補に選ばれた歴史的瞬間であった。 しかもアメリカの改革という大きな期待をこめて! ついで副大統領もジョー・バイデンに正式に決定された。

正副大統領候補が選出された後の焦点はビル・クリントン前大統領のオバマ支持演説でどのような形で表明されるのか大いに注目された。 何しろ5ヶ月にわたる指名選挙中にオバマ候補に対するネガティブ・キャンペーンを繰り返しヒラリーが予備選撤退を表明した後でもなかなか融和する気配を見せなかった。 アメリカ人には珍しく感情的なこだわりを残し多くの民主党関係者を心配させてきた。 このような状況では演説は非常にむずかしい。 表面は取り繕っても30分もTVにクローズアップされると心のうちまで映し出されてしまうような気がする。 演説前の2-3時間前に会場に座っていたころのビル・クリントンは浮かぬ顔をしていた。

演説では開口一番完全なるオバマ支持を表明した。 そのための理由付けも演説内容も申し分ないものであった。 演説の上手な元大統領が下手なことを党大会でするわけがないので安心して聞いていたがオバマが特に外交に対して未経験という批判と不安に対して自分が最初に大統領に就任したときのことを引き合いに出し経験よりも判断が重要であることを強調した。
経験者が常に正しい判断をするとは限らない。 現ブッシュ政権が外交上で大きな失敗をし中東での混乱、イラク戦争での失態など米国経済のみならず世界経済まで混乱に至らしめるほどの判断ミスをしていると痛烈に批判した。 これはブッシュ政権の批判だけではなくオバマが今まで上院での投票履歴が示すよう自分の信念に基づき正しい判断をしていると見解を披露した。  これは正しい見方でありオバマの未経験を危惧するにあたらない。
ビル・クリントンは自らの経験と論理で以ってオバマの大統領資格を公式認知したのである。

またオバマが副大統領候補に上院外交委員長のジョー・バイデンを選択したことも大いにヘルプである。
本日の最終演説は副大統領候補ジョー・バイデンであった。 彼はペンシルバニア州のワーキングクラスの家庭で育ちデラウエア州から上院議員として当選して以来36年もの間議員生活を続けている超ベテランである。 65歳といえども彼はエネルギッシュで明るい。 アメリカ人が最も好むアメリカ人である。  外交委員長・法務委員長として議会に精通しているゆえにオバマが大統領になれば議会とのパイプ役としても大いに力を発揮するであろう。
また国外でも良く顔を知られており外交のサポート役としても大いに期待できる。 頼もしく信頼できる副大統領になるだろう。
オバマ・バイデンのコンビはアメリカ国民の期待に十分こたえてくれる才能と経験を兼ね備え政治の信頼を取り戻すに違いない。