2008年5月21日水曜日

米大統領選挙(その22) オバマ指名獲得へ

オバマ指名獲得へ

5月20日 予備選大詰めで下記の2州の選挙結果がでた。

            Obama     Clinton
Kentucky     30%       65%
Washington   68%       31%

オバマは一般代議員の過半数(1627)以上を獲得しSuper Delegatesを含む全体の過半数(2026)獲得-指名獲得に向けて一歩近づいた。

両州で同日行われた予備選の結果はどうしてこんなに違うのか。
Kentuckyは従来型産業が多く労働者の多くは組織化・組合化(Union)されている。 Unionに強いクリントンの力がもっとも表れた州である。 特に現在は不況で失業者も多い。 比較的低所得、低教育、高齢者が多くクリントンの支持層が全体としてそっくり当てはまる。
Washingtonはハイテク産業中心で平均所得はKentuckyの2倍、組織労働者の割合は少ない。 教育程度も高く若年労働者が多い。 全体としてオバマ支持層に合致する。
どちらも白人州だから人種的要素は殆どない。

遅れた地域や特定の問題があるところを手当てするのも政治なら先進地域の経済をサポートし環境を整備、投資を呼び込むのも政治である。 しかし遅れた地域のサポートを政治の中核にすると社会に活力は戻らない。 先進経済と投資にばかり偏重すると社会問題はますますひどくなりひいては経済活動も阻害される。 要するに政治はバランスであり特定の階層、産業、社会、人種に偏っては健全な社会の発展はない。 

このような視点から見ればオバマは国政レベルでの経験は少ないが彼の政治思想が全体のバランスを取ることであり複雑な利害が交錯するアメリカを効率的よく調整しかつ新時代へとリードしていくにはオバマが最適であると思う。

ヒラリーが民主党指名がほぼ決着したと見られる2週間前ごろから党内の予備選撤退勧告をものともせず最終プエルトリコの予備選が終わる6月3日までキャンペーンを止めない、予備選からドロップアウトしないと明言している意図はどこにあるのか。 すでに算術的にはオバマに追いつき指名を獲得するのが難しいといわれている中でどうしてこんなに支持者を集め選挙(Popular Votes)そのものでは拮抗しているのだろうか。

クリントンは5月6日のN.カロライナ、インディアナの予備選以降目だったオバマ攻撃をしなくなった。 ヒラリー陣営が新たにキャンペーンのトップに持ち出したのは「すべての人は投票する権利がある」「すべての州が投票する権利がある」 だから最終プエルトリコの予備選が終わるまで撤退しない。 民主主義の大原則“すべての人が投票する権利と機会をもっている” このキャンペーンは効いた。 私もこれには大賛成、ヒラリーは最後まで頑張るべきだと思う。 今まで支持してくれた多くの人のためにも、またこれから支持し投票しようとする人たちのためにも。 ヒラリーは個人的にもオブリゲーションを感じているのではなかろうか。

この原則にかかわるもうひとつの論点は票がカウントされないフロリダ州とミシガン州の問題を持ち出したことだ。 両州は予備選の時期を勝手に前倒しにしたことで民主党本部から懲罰を受け投票しても投票結果は組み入れられないことに決定されている。 民主主義の原則を持ち出して再選挙しようという目論見であろうが途中でルールを変更することは許されない。
それにしてもクリントン陣営とヒラリーのしぶとさ、苦境の中でも決して弱音をはかない強靭な精神力、弁舌の巧みさ - 日本の民主党も見習ったらどうだろう。
もし相手がオバマでなければ、夫がビル・クリントンでなければ、ビルと離婚しておれば予備選はヒラリーの楽勝に終わっただろうなどと事実を横において勝手な妄想を誘うぐらいヒラリーの頑張りは素晴らしい。 
オバマ、ヒラリーこの2人が5ヶ月デッドヒートを続けたからこそここまで予備選が盛り上がり、今まで政治に無関心だった若者たちを記録的な数字で政治に呼び戻した。 
若者こそアメリカの変革を担う中心なのだ。 この意味で2人の功績は大きく大統領になると同じくらい価値のあるものだ。