2008年5月12日月曜日

サブプライムローン

サブプライムローン

最近の大きな出来事でなかなか理解しがたい事件がサブプライムローンによる金融システムの混乱である。
この事件は誰かが法律を犯したわけでもなく、強制した事件でもない。 複雑な裏取引があるわけでもなく過去に例がない経済事件や経済システムの話でもない。

多くの個人から多くの金融ブローカー、大銀行、投資銀行まですべてが絡み、すべての人が納得して行った金融ビジネスなのになぜこんな世界の金融システムを揺るがすような大事件になってしまったのだろうか。

サブプライムローンという住宅金融は最近始まったものではない。 個人に貸し付ける住宅ローンは個人の信用度によって金利が異なる。 一般に低所得者に貸し付けるのはリスクが高いから貸し渋るかリスクをカバーできるだけの高金利で貸し付けるかのどちらかである。
従来ならば返済能力に乏しい低所得者にはローンしないのが当たり前の話だったが低金利時代の到来と政府の住宅政策によって低所得者にも比較的容易にローンができる環境が整った。

個人的な話だが私はアメリカで1970年代に始めてアメリカで住宅を購入し転勤と家族構成の変化に伴って80年代に2回90年代に1回それぞれ買い換えてきた。 そのときすでに住宅ローンは30年の固定金利と変動型金利が存在しローンを組むときにどちらにするのか選択を迫られた記憶がある。 私は高いときは10%以上から6.25%までそれぞれ経験しているが金利の予想など本来個人には無理な話でそこまで考えてローンを組んだわけではない。
ただし変動型はリスクが多いことは十分承知していたので当然30年固定金利でローンをした。

最近の超低金利時代ではプライムレートが3%で一般の住宅ローンは30年ベースで年5%でオファーされているとしよう。
サブプライムローンはベースが6%(プライム+3%)だが初めの3年間は3%でOK、4年目以降はプライムレート+4%とするというローン契約である。 
4年目にプライムレートが5%になったとするとローン借入者は4年目から9%の金利を支払うことになる。 支払い金利が4%からいきなり9%になっては支払不能になるのは当然だ。

わずかな頭金で支払い金利が3%であればたいていの人が家を買える。 しかも不動産インフレで価格は毎年上がっている。 万一4年目以降支払いが不能になってもそのとき転売すればキャピタルゲインが出て儲かると考える。 個人から不動産ブローカー、住宅ローン会社までほぼ全員こういった感覚ではなかったか。 まさに不動産バブルである。

住宅ローン会社はもともと融資したくなかった信用度の低い個人に融資するわけだからリスクが高いことは承知している。 だから彼らはリスク回避のためこの債権を早く大手銀行に売ってしまう。 大手銀行はリスクが高いことを知りながら高い金利が魅力で買取りさらにリスク分散のため他の債権と共にミックスして証券化し他の金融機関に売ってしまう。 それが世界規模に広がってしまった。 
サブプライムローンはババ抜きのババみたいなものでトランプゲームのババはワンセットに一枚しかないがサブプライムローンのババはほぼババばかりで全員がババつかみになった。
第3ステージ以降はどこにババがあるのさえわからなくなっていたのではあるまいか。
ババが入っている証券は取引しにくいうえ、全員がババもちだからババもちにババを売るわけに行かない。 ババをから必要以上に価格が下がる。 だから大銀行がそろって巨額の損失を出したのではないか。 
しかしたかがサブプライムローンでこんなに損失が出るものか誰か算術的に解説してくれる人はいないだろうか。

では悪いのは誰だ? サブプライムローンのビジネスシステムは異常ではない。 誰もが承知の上での取引である。
ローンの借り手(個人)は少なくとも将来金利が上がれば具体的な金額は別として支払いが増えることは理解していたはずである。 
ローンの貸し手(住宅ローン会社)は支払い能力の低い低所得者であるから金利が高騰すればまたは4年目に大幅に金利部分の支払いが増えれば支払い不能になる可能性が高いことを理解していたはずである。
住宅ローン会社からローンの債権を買取った大手銀行はリスクの高い取引であることを理解していたはずである。 しかも住宅ローン会社は大手銀行の大口貸付先であった。 
大手銀行はリスク回避のためこの債権を転売したいがこのままでは販売が進まないので他の優良債権と共に組合わせて他の金融機関に売さばいたというのが実情であると思われる。

サブプライムローンの取引も従来のようにローン債務者と第一次ローン債権者の間にとどまっておればこのような広範囲に金融混乱が広がることはなかっただろう。 
一般にアメリカの個人の貯蓄率は非常に低い。 アメリカ人の考え方は常に楽観的だが債務者は安易に過ぎたことは否めない。 また住宅ローンの金利支払い部分が所得税控除の対象となっているアメリカの税制が少なからず影響を与えているに違いない。 
住宅を購入したい人々は無数にいる。 住宅ローン会社は競争相手のない顧客に未曾有の低金利でローンを供与するのであるから取引は容易である。 しかし取引が拡大すればするほどリスクが増えるのは知っていた。 そこでローンの債権を証券化して販売しリスクを軽減した。
第一次的な破綻の責任は個人と住宅ローン会社にある。 ここまでなら個人と高利貸しとの関係、またはサラ金システムと大差はない。

しかし大手銀行はこのリスクを知りながらこの債権を意識的に世界中にばら撒いたことは詐欺に似ている。 結果的には自らの首を絞めることになってしまった。 これが金融システムの混乱の原因である。 巨悪は目先の取引拡大と利益の獲得に走った大手銀行ではないか。
大手ほど会社の社会的責任は大きい。 まして大手銀行は半分公的存在に等しい。
もっと社会的責任を自覚してほしい。

しかしどうしてこんな巨額の損失になってしまったのか、金額的にまだ理解できない。

これが私の理解であるが間違いであれば指摘していただきたい。