2008年10月2日木曜日

米大統領選挙(43) VPディベート

VPディベートとしては今まで最も注目されたディベートである。 

9月1日の共和党党大会直前に決定されたVY候補アカスカ州知事サラ・ペイランは影の薄かった共和党大統領候補ジョン・マッケーンを舞台の中央に引き戻し自らも怪しい社会面ニュースを撒き散らしながら一気にアメリカ国民の関心を集めた。 最初の演説の滑らかさと強気は共和党保守派と女性の支持獲得に力を発揮しPollでは数日でオバマを逆転してマッケーン リードに導いたのである。 マッケーン キャンペーン陣営の作戦が功をそうしたというべきか。
しかし9月14日のABCもインタビューで早くも中央政治と国際問題に関してはまったくの素人であることを露呈してしまった。 しかもインタビューでの自信の無さ、的外れの答えはデビュー直後の熱気を吹き飛ばして批判一色に塗り替えられてしまったのである。当然ながらマッケーンのPollは急落し逆転どころか各地で大きく水を開けられてしまった。

バイデンは上院外交委員長、法務委員長を勤める議会のベテランである。 各国の首相、外相にも面識の多いアメリカの顔でもある。

バイデン対ペイランのディベートは新入幕の関取が大関に初挑戦するようなもので勝負は初めから決まっている。 関心はペイランがどこまでボロを出さずに質問に答えることが出来るか。 (多くの共和党支持者はディベートで共和党の評価がたがたに崩れるのではないかと恐れていた。) バイデンは知識や経験からしてディベートで勝利して当然。 ただし調子に乗りすぎて失言(特に女性に対して)しないかと心配されていた。

ペイランは数日前からアリゾナのマッケーン・ランチでディベートの特訓を受けていた。 そのせいだろうか自分が答えられない質問に対してもうまくはぐらかして、またはすべてアラスカ州知事の経験にすり替えてしまった。 知識の無いことは相変わらずで繕いようがないがぼろぼろにならずに済んだのは上出来というべきか。 

一方バイデンはさすがに国際問題ではトップのベテランである。 特にマッケーンの姿勢をブッシュとなんら変わりないことをアッピールしていかに早期にイラク戦争を収拾することが大事であるのか、アフガニスタンの対テロ戦争に軍事力を集中してビンラディンのアルカイダをとタリバンを壊滅することが大事なのかを数字を挙げて力説した。 これは大いに説得力があり中間派、独立派の票獲得に力を発揮することになるだろう。

結果は両者とも期待以上の出来であった。 しかしこの結果が大きく大統領選挙に影響があるかというとそうではないだろう。 あくまで大統領候補、マッケーン対オバマの選挙であって
まだ後2回本人同士のディベートが残っている。 このディベートでマッケーンがオバマをノックダウンするほどのビッグパンチを繰り出さないとオバマ有利のモメンタムを逆転することは難しいだろう。