2008年12月29日月曜日

不況と差押え救済策ー超低金利をどう家計に生かすか

未曾有の金融危機、大不況に対処するためアメリカは超低金利政策(0.0-0.5%)を取らざるをなくなった。 プライムレートは3.25%に下がりそれに対応してモートゲージ・ローンレート(住宅ローン・レート)も5%前後まで下がっている。 
金融危機の発端であるサブプライムローンは初期の一定期間に超低金利で貸付けその後プライムレートにプレミアムを上乗せしスライドスライドする仕組だからプライムレートが上がれば数年後には毎月のローン返済額がダブルになってもおかしくない。 将来のリスクに目をつむりとりあえず夢のマイホームを手に入れた人々にとっては数年経ったら支払不能・銀行差押という悪夢が待っていた。 
このシステム(変動金利住宅ローン)自体は目新しいものではなくマーケットが正常であった時から存在していた。 
一般的にローンの種類はFixed Rate(30年、15年) Adjustable Rate (10/1, 7/1 ….) Interest Only (10/1, 7/1….) 3種類ありPoint(先払い金利) (0,1,2)によってレートが異なる。 (Chase Mortgageの例をとれば33種類のローンがある)
アメリカは労働市場が柔軟で転職は常識である。(したがって転職により転居する場合が多い)また齢が若ければ5年で所得が2倍になることは良くあることだ。
また結婚して子供がいなければ2LDKで十分だろうが子供が出来れば大きな家に引っ越すのは当然の流れである。 したがって自分の人生設計にそって家の大きさやロケーションを変更してゆくのが一般的である。 自分の年齢、家族構成、将来の所得Upの見通しによって最も適切なローンを選択できる。 多様なローンの選択が可能なことは消費者にとっては良いことだが目先の支払に惑わされず支払いの仕組みと自分の支払い能力をよく理解してローンを選択しなければならない。

変動金利の返済方法を選んだために金利が大幅に上がって支払いに苦しんでいる人にとっては超低金利で再融資が受けられれば正常な生活をとりもどすことが出来る。 こんな人はしばしばクレジットカードも限度いっぱい使って多額の負債を抱えているものだ。 銀行はこのような人に対してDebts Consolidation と称して次のようなリファイナンスをオファーしている。

例として30万ドル(金利8%)の住宅ローンを抱え2万ドルのクレジットカード負債に12%の金利を支払っているとしよう。 金利支払だけの単純な計算をすると
現状(住宅ローン支払い月$2,200、 クレジットカード月$200)月額支払合計 $2,400 となる。 両方の負債をまとめて合計金額$320,000を新規低利融資(5%) に切り替えた場合、毎月の支払額 $1718となり$682もセーブできる。 これが今全米で問題となっている銀行差押(Foreclosure)を回避する方法として銀行が推奨している。

これは何も差押に直面している人にのみ適用されるわけでもない。
私にも毎日のように銀行から再融資のオファーが入ってくるので一応リファイナンスを考えてみることにした。 既存の顧客に再融資するのは銀行にとって調査の手間がかからず顧客にとっても手続が非常に簡単で話が進みやすい。
話が早いのは現在保有している住宅(不動産)が融資額を十分上回る価値を保持していることが前提である。

私の場合は住宅ローンの残りのリファイナンス、リース車の買取、キッチンのUpgradeを含めて12万ドルを5%でリファイナンスすると現行の月ごとの支払に比べて$300ほど少なくなる計算になった。 通常リースや簡単な家屋の改造には長期の融資は受けられないが今回のDebts Consolidationの特別オファーを利用すれば車もキッチンのリノベーションの費用も30年(360ヶ月)に薄めて支払いが可能だからである。 しかも低利で通常リファイナンスにかかる費用($2,000-$3,000)が$400ぐらいですむ。

車やキッチン・リノベーションには前述の30年Fix RateでのローンでなくHome Equity Line of Creditといって一定の融資枠内でローンを受ければそのバランスに対して金利のみの支払うローンを組むことも出来る。 ローン本体に対する支払はいつでも余裕のあるときに任意で支払うことが出来る。 まとまった金額の支払のための資金捻出のため低迷したマーケットで株や投資信託を売らなくてすむ便利な取引である。 金利はプライムレート+ 0.5% (or
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一週間前にChaseの支店を訪ねてRefinanceとHome Equity Line of Creditの説明を聴いた。 昨日必要書類(2年間の確定申告書、所得明細、銀行残高)を携えてMortgage Officerに合いローンの正式申し込みをした。 後はローンレートを確定し正式書類にサインするだけである。 

Mortgage OfficerはRickといい50台後半の落着いた紳士であった。 ローンの手続は20分ほどで終わり後は一般的なアメリカの経済の話をした。 
銀行家だから企業の内部事情や個人の懐具合を良く知っている。 ビッグ3の経営危機はローカルにも影響大でまずローカルの車のディーラーがつぶれそうだという。 全国的な規模の大手リーテーラーもクリスマスセールがダウン、しかもブランド物も含めて全商品50%Offでは利益が出ない。来年3月までに数件潰れるとみている。 個人の家計はもともと目いっぱいだったものがクレジットカード金利がいっせいに上がったので支払延滞が急激に増えた。 
Debts Consolidationで負債を先送りしても消費パターンを縮小しない限り家計の健全化は無理だという。 失業増と個人の消費減で構造的にはデフレ、ドルの信用不安から急激なドル安に転じているが原料から製品に至るまで多くを輸入品に頼っているアメリカはコストインフレが避けられない。 両方がどのように影響するかは予測は難しいがどちらもいい話ではない。 
私はアメリカは切替が早いから不況脱出も3年ぐらいで可能かと考えていたが彼は現状は今までの不況とはちがって非常に深刻で潮目が変わるには4-5年かかるといっている。
経済のグローバル化が進んでアメリカの健康度がすぐに世界に波及してしまうのでアメリカ経済が早く健康を回復しなければならないのだが彼の話を聴いていると回復にはまだまだ時間がかかるような気がしてきた。 オバマ大統領には一段と大きな負担がかかっている。