2008年12月12日金曜日

再びビッグ3救済策

一昨日の日経コラムの記事に対して投稿するため下記の原稿を準備していた。
<Quote>
私は1968年以来アメリカと日本を往復し滞米31年になりました。 ニュージャージー州の私が住んでいるコミュニティでは60%が日本車になっています。 20年前から取引先の多くのアメリカ人言っていました。 「Buy American 賛成だけど私が買う車は日本車」

90年代前半まではまだキャデラックやリンカーン・コンチネンタルはステイタス・シンボルでした。 今はノスタルジック・カーでお年寄りしか乗っていません。現在では日本車もアメリカ車も性能は大して変わりません。 アメリカ車が売れない理由はいろいろありますが一番の原因は魅力のある車がないのです。 車は現代人の最大のファッションですから性能や乗り心地を含めた総合的に魅力のある車でないと売れないのです。
一年前の今頃は世界販売台数ではトヨタとGMが970万台あたりでトップの座を争っていました。 そのとき発表された決算内容はトヨタが2007年度9月中間連結決算で営業利益が1兆2721億円に対しGMは2007年7-9月期だけで389億6300万ドル(約4兆4400億円)の赤字でした。 両者とも土俵はほぼ同じなので経営の差としか言いようがありません。 この差はトヨタとその周辺企業の長年の企業努力の賜物でしょう。 1960年代からアメリカにおける日本車を知っているだけに感無量です。

しかし一方では“Japan as No. 1”との言葉に惑わされいかにも日本が経済の世界ではNo.1になったかのような錯覚に陥り「慢心と傲慢」になってはいなかったでしょうか。 トヨタの経営幹部がこうならないように自らを戒めていると聞いてさすがだと思いました。


1990年当時の中曽根首相はアメリカ議会で演説し“Japan is Unsinkable Battleship”と大見得を切ったのは「慢心と傲慢」の頂点であったように思います。 その後すぐにバルブがはじけて日本経済は長期に浮上できない潜水艦になってしまいました。 バブルは経済偏重・物質主義偏向を生み本当の豊かな生活を経験することなく見かけの繁栄は短期間で終わってしまいました。また多くの企業にとって生産や技術は一流でも経営は旧態依然、社会の急激な変化についていけず経営に果敢なリーダーシップがなかったことも原因でしょう。 全体で言えば日本は確かに経済的には成功しましたが経済以上のものにチャレンジする目標を見出せなかったののも原因でしょう。 経済以上のものに挑戦することで新しい経済が生まれることを日本の社会が早く認識してほしいと思っています。

12月10日アメリカの下院でビッグ3の救済策が130億ドルに縮小してやっと可決されましたが多くに議員さんたちはまだ反対の意見を表明したりビッグ3の再生に疑問を投げかけています。
私もビッグ3の回復は無理だと思っています。 巨大企業の文化は一丁一石には変えることはできません。 Fさんのコラムを読んで特にその感を強くしました。
ビッグ3はいずれChapter 11(会社更生法)を宣言して再出発する以外方法はないでしょう。

日本の企業は「慢心と傲慢」を戒めると共に「果敢な挑戦」を忘れないでほしいと思います。
<Unquote>


前回第一回目の投票は下院で否決されていたので下院を中心に反対派の説得工作が続けられていた。 今回これが功を奏して下院では賛成237、反対170の大差で可決、上院でも当然賛成多数で可決されると思っていた。 
ところが上院の共和党の多数の議員が救済策は内容が再建には不十分で賃金が日本の自動車メーカー並に引き下げねばならないと現在の救済案には反対していた。 つまり現状ではつなぎの140億ドルの救済資金をつぎ込んでも再建は不可能とみているのだ。 大抵の経済人ならこの意見は理解できるだろう。 実質的にはUAW(全米自動車労組)に賃金引下げを要求しているわけだがUAWは昨夜即座にこの要求を拒否している。 これで上院議員の多数を硬化させてしまって結局はビッグ3救済法案は廃案になってしまった。 
GMとクライスラーは資金繰りが年末ぎりぎりと言われておりいよいよ倒産に追いやられようとしている。 
しばらくは対策がなく来年1月発足のオバマ新政権を待たざるを得ないのか? さすがに不安がよぎる。 1930年台のように大不況・大失業時代がやってくるのか。 本日12月12日の市場のの反応を見てみよう。