2008年12月5日金曜日

ビッグ3公聴会・2日目

昨日の上院公聴会に続いて本日は下院の金融委員会(Financial Committee)にてビッグ3救済の公聴会が行われた。
上院下院とも議員さんの3分の2はLaw School を出ており弁護士や検察官の資格を持っている。 その他の議員さんも地方議会や市民活動を経て中央政界にでてきた議論のベテランばかりである。 彼らはプロフェッショナルとして十分鍛えられているので審議・尋問は鋭く核心を捉えている。 曖昧な答弁は許されない。 情緒的で曖昧な答えはさらに追求され自分の面目を失うばかりか本来の目的である自動車産業への支援も失いかねない。 議員さんは国民に対する説明責任と自動車産業破綻という国家的経済危機をどう乗り切るかの重大な責任を負っているので議論も真剣そのものだ。 この公聴会を聞いていると自動車産業のみならずアメリカ産業の実情がよく理解できる。 日本の政治家も産業人もこの公聴会に注目して他山の石とすべきであろう。
救済反対派は1)公的機関でない自動車産業3社に340億ドルの税金をつぎ込むのは自由主義経済の原則に反する。2)再建策に十分な確信が持てない。UAWの譲歩が十分ではなく賃金とベネフィットの大幅な削減がなくては会社は十分な利益を確保することが出来ず競争には勝てない。 3)長年ぬるま湯につかった巨大産業を改革することは容易なことではなく近い将来巨額の負債を返済できる可能性が少ない。
注目すべき意見はクライスラーは80%の株式を投資会社・サーベラスが保有してる非公開会社であってサーベラス自身は巨額の利益を保持しているので親会社のサーベラスがクライスラーを援護すべきであり非公開会社に税金をつぎ込むのはおかしいという議論がある。 反対派は自由経済の原則論を主張している。
救済賛成派はとにかく今は大不況の入り口にあり何とか歯止めをかけないと自動車産業とその周辺産業だけでもさらに300万人の失業者が出ることとなりアメリカ経済全体がさらに沈み込み最悪のブラックホールに落ち込んでしまうと懸念している。 つまり理屈よりも現実論である。
全員が何とかしなければならないという共通の認識に立っているからおそらく救済策は可決されると思うがクライスラーがはずされる可能性もある。
論議は煮詰まっており対策は急を要するので来週には採決に持ち込まれるだろう。

これに比べて日本経済はアメリカほど窮地に立っているとは思えないが早急な措置が必要にもかかわらず日本の国会での論議は情緒的で論議がかみ合わない。 国語の不得意な首相と議論と演説が嫌いな野党党首が2大政党のヘッドである政界であるから形だけイギリスやアメリカの政治をまねたところでまともな論議・質疑は出来ないだろう。
そもそも質問者自身が論理的な議論を展開できないのでたとえ国会の証人喚問がおこなわれても本来の目的を果たせないのである。
これは多くの国会議員が地縁・血縁・金縁をベースに選出されてくるので何も経験のない大学在学中の子弟が議員に担ぎ出されたり何の実績もリーダーシップもない二世議員が順送りで大臣になったりする。 かかる国会では質の高い政治が期待できるわけがない。 結局は何だカンだいいながら同じような国会議員を送り出している国民に責任がある。 残念ながら日本の国会は国民の政治レベルを表していると言わざるをえない。