2008年3月5日水曜日

メディア 日本とイギリス (2) ハリー王子アフガンから帰国

3月1日 ハリー王子 アフガンから帰国

ニュースの概略
イギリス王室・ハリー王子は予てから強くイラクかアフガン勤務を希望していた。
昨年12月政府・王室がアフガニスタン派遣をOKした。
政府は「ハリー王子に関する情報は逐一提供する代わりにメディアは報道を自粛する」という紳士協定を結んだ。 
2月29日アメリカのメディアがハリー王子のアフガン勤務をすっぱ抜いたためイギリスメディアもいっせいに報道開始。 政府はハリー王子がタリバンの標的にされ所属部隊の仲間の兵士たちにもリスクが及ぶので急遽帰国を命じた。
ハリー自身は帰国を望まなかったし帰国して“Hero”と呼ばれることを拒んでいる。
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さてこのニュースに対する日本のメディアとBBCの報道は以下のようなものだ。
***読売も朝日も王子(Harry)の名前を“ヘンリー”としているが“ハリー”が正しい***

読売新聞の報道 ニュース 2月29日
“英ヘンリー王子、アフガンから帰国へ…報道で安全に問題”
 【ロンドン=本間圭一】英国防省は29日、チャールズ英皇太子と故ダイアナ元皇太子妃の二男で、アフガニスタンに派遣されている陸軍少尉、ヘンリー王子(23)を即時帰国させる方針を発表した。
 2月28日に一部外国メディアがアフガン派遣を報道したのを機に世界的に報じられ、王子の安全が確保できないと判断したという。
 王子は2007年12月から、旧支配勢力タリバンの活動が激しい南部ヘルマンド州に極秘に派兵された。英国防省は英メディアとの間で派兵期間を報道しないとの協定を結んだが、外国メディアには効力が及んでいなかった。王子のたっての願いで実現した戦場派遣は、わずか2か月あまりで取り消された。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080229-OYT1T00666.htm
朝日 2月29日  ヘンリー英王子、アフガンから帰還 メディアは英雄視
http://www2.asahi.com/special/iraq/JJT200702260002.html

BBC News March 1
Prince Harry has returned to the UK after being withdrawn 10 weeks into a front-line deployment in Afghanistan.
The prince landed at RAF Brize Norton in Oxfordshire, where he was met by Prince Charles and Prince William, and left the base after more than an hour.
The Prince of Wales spoke of his "great relief" at his 23-year-old son's safe return from Afghanistan.
Prince Harry's tour was cut short after a news blackout broke, leading to fears he would be targeted by the Taleban.

BBC News
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7271408.stm
BBC News Editor
http://www.bbc.co.uk/blogs/theeditors/
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イギリスのメディアは王子と部隊の安全を考慮して紳士協定(政府はハリー王子に関する情報は逐一提供する代わりにメディアは報道を自粛する)を10週間も遵守した。  これはあくまで自主規制であって万一報道するメディアがあれば彼らもいっせいに詳細を発表する体制をとっていた。 しかしアメリカのインターネット・メディアが報道するまで自主規制は10週間も続いたのである。 もしアメリカのメディアがすっぱ抜かねば一般兵士と同様の一定期間(数ヶ月)は勤務をつづけていたと思われる。
父プリンス・チャールスも普通の家庭の親たちと同様子供の安否を気遣い無事の帰国を喜んだ。 ハリーを誇りに思うと同時にまだ戦線に残っている兵士とその家庭に思いを寄せているとインタビューに答えた。

今回の報道はハリー王子の帰国のニュースだけではない。 
前線でハリーはなにをしていたか。
ハリーは部隊から惜しまれている
すぐには戦場にもどらないだろう。
私はHeroではない。
ハリーの次の仕事は?
BBCはなぜ報道を抑えていたのか。 Etc.
ハリー王子の記事であふれている。  充分に取材してリリースの時期を待っていたにちがいない。
多くのBBCに寄せられたコメントは99%がイギリスのメディアの紳士ぶりを絶賛しておりハリーのみならず政府や王室と共に国全体がイギリス株をあげた。 とてもいいニュースだった。

イギリスは古いものを大事にしている。 その古いもののよさを今に生かしている。 貴族制度もそのひとつであると思う。 その頂点にイギリス王室がある。
貴族は武士と同じでいざというときは命を欠けて先頭に立ち国のために戦うものと教えられている。 ハリーは優等生ではないし彼のやんちゃぶりは有名であるがやはり貴族の次男であることを証明した。 だからこそ彼の性格と行動は軍隊ではさぞ人気物だっただろう。 彼の今回の対応はイギリス王室の存在感を高めイギリス貴族の精神を誇示したものである。
ダイアナ事件以降人気が落ち目のイギリス王室であったがハリー王子は一人で王室の不人気を挽回した感がある。

さてこのニュースを聴いてすぐにわが皇室のことをあたまに浮かべたのは私だけではあるまい。
私は皇室を敬愛する日本国民の一人である。 戦後2代にわたり民主化に努められてこられた昭和天皇・皇后と平成天皇・皇后両陛下のご努力と誠実さには頭が下がると同時に自然と尊敬の念が沸いてくる。
しかし最近どうも自分自身の気持ちが以前と違うのだ。 具体的にに言えば次の世代の担い手である皇太子のご家族に(TVの映像のみの印象であるが)親しみが沸いてこないのである。 このことを率直に友人にぶつけてみると最近週刊誌がかなり批判的な記事を続けて書いているという。 彼自身も皇太子の言動や妃殿下の行動には納得がいかない点が多いという。 

私は週刊誌は全く読まないし雑誌も滅多に読まないから皇室に関する情報は僅かにTVの映像とインターネット情報しかない。 一般の人に比べればはるかに情報は少ない。 私の目と数少ない記事から全体を読み取るしかないがかえって惑わされずにストレートに物が見えるように思う。 
皇太子殿下は台本どおりのスピーチとインタビューしかない。 皇太子妃殿下が自分の言葉で滑らかにしゃべったことを聴いた事がない。  愛子様の自由なおしゃべりを聴いたこともない。  妃殿下の病気が影響しているのかもしれないがTVの映像からは溌剌とした子供らしさや愛らしさが見られない。  幼いといえども帝王学を学ばれているはずだが立ち居振る舞いにもその皇室の気配が感じられない。 昔の天皇家はこんな様子ではなかった。 何処と無く気品にあふれしかもキリっとしていたと思う。 こんな批判的見方をするのは私だけだろうか?
天皇様も皇后様もTVでお顔を拝見するかステートメントを読まれるのを聴くだけであるがやさしいお心が伝わってくる。  敬愛される皇室、それだけで充分お役目を果たされていると思う。 
もし国民が皇室に対する敬愛の情を失うようなことになればたとえ憲法に記されているとしても皇室制度は存在する意義を失ってしまう。 皇室・皇太子の家族に対する私の心配が私だけの取り越し苦労であればよいが。

皇室は日本国民のRole Modelにならなければならない。 それは家族として個人として100%優等生を演じることを意味しない。  我々と同じ人間として喜びや悲しみや苦しみを分け合いながら果敢に人生に挑戦し幸せを築いてゆく人間や家庭の姿を見せてほしいのだ。  

イギリスの王室を見れば判る。 全員が優等生ではない。 女王はじめチャールス皇太子もウイリアムス王子も自分の人生と葛藤しながら人並み以上に苦しみや悲しみを味わっっているはずだ。 同じ人間としての共感がある。 ハリー王子は政府・王室が反対しようとも自分の好きな人生を歩もうとしている。 だから王室は敬愛されている。 

皇室の問題はそれがプライベートなものであってもプライベートな問題ではない。 
日本のメディア〈特に大新聞〉は皇室や国民に遠慮せずいったい皇太子一家に何が起こっているのかすべてを追及報道して欲しい。  興味本位で覗き見をするのではなく問題がシリアスであれば真剣に改善策、打開策を打ち出して欲しい。  
たとえ離婚や皇室離脱といっても今の世界では驚くにあたらない。 天皇陛下や皇后陛下をいたく心配させ悲しませる結果になるかも知れないが皇室を救うにはそれしかない。