2008年3月31日月曜日

アメリカの医療保険

アメリカの医療保険

アメリカにはMedicare(メディケア)という65歳以上が加入できる高齢者用医療保険とMedicaid(メディケイド)という障害者・低所得者層の保険を除いて公的医療保険制度はない。 しかしMedicareは医者の診療と病院の施設入院費用をカバーするための保険で医薬品は含まれていない。 Medicareに加入している人でも薬代やその他の費用負担リスクをカバーするために補助的保険に加入している人が多い。
保険料は2008年度で月額$96.40 集積控除免責金額-自己負担(Deductible)は$135.00 そのあとは20%を自己負担する。  
(非常に細かな費用負担規定があるがここでは省く)

働いている人は会社が提供する健康保険に加入すればよいが自家営業やその他の人は自分で探して保険を買わねばならない。 
保険会社は数多くありMedicareに紹介されている大手保険会社だけでも20社以上もある。 各保険会社は地域別サービス別に数種の保険を提供しており全部数えれば数百種の保険があるだろう。 端的にいえば高い費用負担を回避しながら質の高いサービスをうけるために高い保険料を支払うか基本的に健康な人であれば少々のリスクをとって安い保険料で済ませるかは自分の健康状況と費用リスクを判断して決めればよい。 
しかし各保険条件を理解し比較することが非常に難しくどの程度費用がかかるのかは医者や病院にもよるので実際の支払いを見なければわからないことも多い。 保険選択の自由はあっても実際どれが最適なのかは一定期間を経験してみないとわからないというのが実情と思う。


医者は数社保険会社を選択して契約する。 これは完全なビジネスだから信頼度、事務処理スピード、カスタマーサービスなどを考慮して決められる。 大事なことはお気に入りのホームドクターに診てもらおう思えばこのドクターが契約している保険に自分も加入していなければならない。 
また医者は医療訴訟から自ら身を守らねばならないので個人の保険を買う必要があり訴訟費用が高く賠償額も巨額になるアメリカでは当然のことながら保険料が高い。 医療費高騰の主要な原因でもある。

個人で一般の医療保険を買うと年齢・性別・サービスの種類によって保険料は大きく違うが50歳代の夫婦2人で月額$1,000はかかると思う。 年間$12,000の負担は低所得層には支払える金額ではない。 だから全米で4,800万人もの無保険者がいるわけだ。
今回の大統領選挙でも最も身近な課題として真剣に議論されている。

保険料が高い理由はいろいろ考えられるが私が思い付くところを列挙すると
1. 医者・病院に対する法外な損害請求訴訟が多すぎて医者・病院の保険料がべらぼうに高い。
2. 医者の診療コストが高い。(医者になるための投資コストが高いため診療費が高いのは当然ともいえるが)
3. 医療検査器具が技術革新により早期に陳腐化し買い替えが頻繁に起こる。
4. 医療器具・検査サービスを惜しまず頻繁に使用する。

しかし質の高いサービスはコストがかかるのは当然でありそのための保険であると理解している。 

2008年3月29日土曜日

米大統領選挙 (その18) 急展開:民主党指名争い 

急展開する民主党の指名争い

3月11日のミシシッピー州予備選から4月22日まで6週間も予備選はないが民主党の指名争いは急展開しつつある。
オバマはミシシッピー州予備選でヒラリーに61%vs39%と大勝したもののその後ライト牧師の説教問題で一時後退したが慌てず騒がず落ち着いて対処したことが帰って彼の信頼度を高めた。 
一方クリントンは経験を誇示するためボスニア訪問のエピソードを各地で披露していたがスピーチの内容に作り話がこめられていることが発覚して信頼度を落としている。 
最近のPollでは彼女の信頼度は調査開始以来の39%まで低下しネガティヴ度は51%まで上がり明らかにクリントン離れが始まったといえよう。

3月9日現在数字的にはオバマのDelegates獲得数が1625、クリントンの獲得数は1486となっており残り10州でクリントンが追いつくのは非常に難しいとみられている。
しかし両陣営のネガティヴ・キャンペーンは日を追うに従って激しく根堀り葉堀りの泥仕合で民主党首脳部は同党への支持が落ちるばかりか本選で共和党・マッケーン候補に利するばかりと真剣に心配しはじめた。 

下院院内総務ナンシー・ペロシはSuper DelegatesはPledged Delegatesの投票結果(一般選挙で獲得した代議員数)にフォローするよう勧告している。 Pledged Delegatesの数ではオバマがリードしておりほぼ勝利を確実にしたと見られることから彼女の発言は実質的にはオバマに投票するよう勧告しているのと同じでことである。 
民主党本部のハワード・ディーン委員長は全国指名大会での混乱を避けるためにもSuper Delegatesに7月1日までに投票するよう呼びかけておりこれもオバマへの投票を加速することになる。 
2月27日にはペンシルバニア選出ボブ・ケーシー上院議員がオバマ候補の支持を発表して4月22日の同州予備選に大きな影響を与えるものとみられている。
2月28日にはバーモント選出民主党の重鎮パトリック・レイヒー上院議員は始めて公式にクリントンの指名放棄を勧告した。

メディアも総じてクリントンに批判的でありクリントンはいまや四面楚歌、挽回はほぼ難しいと見られることから上記のようなクリントンおろしが始まった。

ロサンジェルス・タイムズ紙によれば「多くの民主党議員はクリントン家は民主党のためには何もしなかった。 ほとんど彼ら自身のために働いたみたいなものだ。 前クリントン大統領時代には大統領を守るために時間をとられて本来の審議ができず全国的にも州レベルでも議席を減らしずいぶんつらい思いをしたと思っている」と伝えている。
私もまったく同感でクリントンには2度とホワイトハウスに戻ってほしくないが多くのアメリカ人が同じようなクリントン・アレルギーを持っておりいっせいに声を上げ始めた。

このような状況下にあってもヒラリー・クリントンはまったく選挙戦より退出するような気配はなく数字的に決着がつかない限り身を引くことはないだろう。

世間はすでにマッケーン対オバマで動きつつありSuper Delegatesはそれを踏まえて6月末までには投票を終えて民主党として本選に臨むのではないかと思われる。

2008年3月21日金曜日

米大統領選挙 (その17) ネガティヴ・キャンペーンと人種問題

ネガティヴ・キャンペーンと人種問題

圧倒的注目を集めている民主党の予備選がクリントンとオバマのネガティヴ・キャンペーンで熱を帯びたエネルギーが変な方向に向かい始めた。 こういう雰囲気になってくると両サイドの極端で無責任な意見が(クリントン側のフェラロの発言 オバマ側のライト牧師の発言など)飛びだしひいきの引き倒しになってしまう。 ひいては民主党全体がモメンタムを失うことになりかねない。

もとはビル・クリントンのN.カロライナの予備選での“Fairy Tale” 発言がネガティヴ・キャンペーンの始まりだった。 彼がベンチ入りして声を出し始めてから選挙戦の質が低下し始めたのである。 アメリカの元大統領ならもう少し品格と余裕をもって行動して欲しいと思うのだが彼の場合は独特のレトリックと押しの強さで一般大衆を圧倒してしまう。 彼の応援がクリントン陣営の組織票固めには役立っただろうが新たに反クリントンも生み出したので総合的にヒラリーのプラスになったかどうかは非常に疑問だ。 

民主党候補の一人であったクリス・ドッド上院議員(コネチカット-2月にドロップアウト)はクリントン陣営よりSuper Tuesday直前に強引にヒラリーを支持する(Endorse)よう電話攻勢をかけられたためこれに反発して翌日オバマを支持することを記者会見で発表した。
州代議員(Pledged Delegates)の獲得だけでは勝てないとみたクリントン陣営は今もSuper Delegatesの獲得に全力をあげているはずである。 議会や民主党組織内での元大統領ビル・クリントンと元大統領夫人、上院議員暦7年のヒラリーの影響力は絶大だがそれでもクリントン側のSuper Delegatesの獲得に大きな伸びがなくオバマにどんどん差を縮められているのはクリントン支持勢力に限界がありMajorityである中立Super-Delegatesが次第にオバマに傾いていることを意味している。 

選挙が煮詰り対立が絞られてくると外野席の応援団の声が一段と激しくなってきてしばしば勇み足が出てしまう。

オバマ陣営の外交顧問ハーバード大のサマンサ・パワー教授はオフレコのインタビューの中でヒラリー・クリントンについて、「彼女は化け物。どんな卑劣なことでもする」との発言がもとで彼女は辞任した。

民主党の元下院議員ジェラルディン・フェラロ女史はクリントンの資金集めのメンバーであったがカリフォルニアの地方紙のインタビューでオバマ候補は「彼が白人なら今の地位にはいないでしょう。 また女性でも今の地位にいないでしょう。 彼は黒人だからラッキーでした」とコメントした事が差別発言であると黒人やメディアが非難し今までくすぶっていた人種問題に火がついた。
あわてたクリントン側はヒラリー自身が「そうは思わない」と即刻否定し発言は適切ではないと陳謝した。 フェラロ女史は「私は白人だから非難される」と不本意ながら辞任せざるをえなくなった。

人種問題は民主党共和党を問わず一般社会でもタブーであり誰もコメントしたがらない。
とにかく誰が発言しても得することはない。

オバマが一転有利な展開に動き出したと見られたときに大きく水をさしたのがシカゴのトリニティ・チャーチのライト牧師(Jeremiah Wright)でミサの説教とも思えない爆弾演説をぶった。 超訳すれば次のようになる。
「9/11のテロ事件は自業自得だ。 アメリカは白人社会で我々黒人は長い間しいたげられてきた。 こんなアメリカは祝福されない。 アメリカなんぞ糞くらえだ。」
問題発言というより常軌を逸した言葉で少なくとも公衆の面前で説教するような内容ではない。
普通なら地方の牧師の極端な発言として報道はされ一過性で済まされるニュースだがオバマがこの教会に20年間通っていてライト牧師を人生の師と仰ぎ結婚式と二人の娘さんの洗礼まで立ち会った人物であるからオバマはライト牧師との関係を追及され一挙に窮地に立たされてしまった。 オバマは個人的に親しい間柄であることは認めながらも彼の発言は100%受け入れられないと繰り返し完全否定した。 彼がいくら否定してもこの騒ぎは収まらない。 当然である。

オバマが「人種を超えて一つになろう」と訴えてきたが一気に色あせてしまった。 私はオバマがライト牧師とは違うと理解しながらもどうしてこんな人物と20年も身内同様に親しく付き合い師と崇めてきたのか疑問に思うのである。 大統領になる人の周りにこんな人がいてはいけない。 
大統領はすべての知識を持っているわけではない。 叡智を集めて国家を運営するためにはホワイトハウスに優秀な頭脳と人格を持った人々を集めなければならない。 この優秀な頭脳を使いこなしリードするのが大統領の仕事である。 ハーバード・ロースクール出身の彼でも意外と人種の壁があって優秀な人脈が集まりにくいのかも知れない。 この点が私の危惧するところである。

メヂアがこの報道を始めてから保守派はいっせいに反発し無党派層の支持率は低下し始めた。
Super Delegatesの中にも一歩引いた人がいるだろう。
こんな事態の中でオバマは緊急に事態の収拾を図らねばならなくなったが人種問題の取扱は非常に難しい。 個人や家族の経験で理屈では解決できない感情を持っている人は多くいる。 同じ人種・同じエスニックの中でなら何とか話しが出来ようが多くの人種の中で感情論を廃して人種問題を議論するのは難しいし大抵の人が敬遠する。 
しかしオバマは16日のフィラデルフィアの演説会で開き直って訴えた。
「この国はまだまだ人種的偏見が存在するのは事実である。 私の白人の祖母でさえ黒人とすれ違うときは不安を覚えたといっていた。 ライト牧師の言葉は全く受け入れることは出来ないがこの国の将来をよりよいものにするためにこの問題に蓋をせず皆で考え討論しようではないか。 それが私の使命であると信じている」
彼は現在でさえタブー視されている人種問題を公に論議するべきであると正論で正面突破を試みたのでる。 彼はこの時点でうまく切り抜けてもこの問題が本選でも出てくると見て先にこの問題に決着をつけておいた方が戦い易いと見たのだろう。 ただ人種問題は個人の感情に根ざす微妙な問題であるから取り扱いは難しい。 感情論を廃して高い次元で議論しなければ逆に対立を深めることになりかねない。 この問題は法的にはクリアーされており残るのは教育と社会的実践によって両極の人々の偏見を取り除く努力をしなければならない。 時間がかかる地味な仕事である。 しかし30-40年前と比べて見れば随分様変わりしているのは事実だ。 今の若い人々には個人の感情は別として殆ど偏見はなく社会的軋轢は薄れてきたように思われる。

私が40年前にテキサスのダラスに赴任したときはダウンタウンにあるキャトルマンという高級ステーキハウスには“We Reserve Right to Refuse Service” という小さなサインが受付の後ろの壁にかかっていたのを思い出す。 ”黒人お断り“のサインである。 オフィスのあるビルのトイレに表示はなかったが白人用のトイレと黒人用のトイレは完全に分かれていた。

1956年ハリウッド映画「ジャイアンツ」-(ジェームス・ディーン、ロック・ハドソン、エリザベス・テイラー)の一場面を私はいつまでも忘れることはできない。 メキシコ人への偏見を取り扱った映画である。
テキサスのキング牧場の主人ロックハドソンが奥さんのエリザベス・テイラーと次男の家族を連れてドライブ旅行をしている途中に田舎のドライブインで食事をすることになった。 次男の奥さんはメキシコ人で奥さんだけが入店を断られる。 怒ったロックハドソンとドライブインの主人が殴り合いの喧嘩になったがロックハドソンは店の主人に殴り倒されてしまう。 しかし店の主人はそのあとに店に掛かっていた小さなサインをロックハドソンに “持っていけ”と放り投げたのである。 その看板には“We Reserve Right to Refuse Service”と書いてあった。

いまやアメリカのあらゆる製品には英語とスペイン語が併記されるようになった。街中ではあちこちでスペイン語の話し声が聞こえ選挙でもHispanic/Latino (80%がメキシコ人)が大きな勢力として台頭している。 

黒人もヒスパニックも韓国人も中国人も含めてマイノリティは昔ほどマイノリティではなくなっている。 経済的にも成功している人は多いし実力があればこの国での成功の機会は開かれている。 偏見をなくする努力は社会的にも政治的にも必要だがマイノリティ側も悲観的、否定的な面ばかりを強調せず積極的に挑戦することが必要だろう。
オバマ候補がいい手本だ。 4年前までは黒人が大統領候補の一番手になるとは夢にもおもわなかった。  今回でも予備選が始まるまではこんな展開は予想もしなかった。
アメリカは今回の選挙で大きく前進しようとしている。 オバマ候補はそのためにも大きな役割りを果たしている。

2008年3月16日日曜日

電子確定申告 (e-Tax)

手間がかかりすぎる電子確定申告(e-Tax)

3月末が会社で大決算ということもあるが個人的にはあっという間に確定申告の締切がせまってくるので3月は何となく気ぜわしい。 

昨年8月に逗子〈鎌倉税務署の管轄〉から転居したにもかかわらず鎌倉税務署から「国税電子申告・納税システム(E-Tax)」のご案内という冊子が送られてきた。 オンライン確定申告の薦めである。 

実は昨年(2006年度の申告〉オンラインで確定申告を試みた。 
2006年度の電子申告の手順は次のようなものだった。
まずオンライン申告のための準備が必要だ。
1. 電子申告の申請を税務署に提出する。(東京の国税庁から2-3週間でIDが送られてくる)
2. 電子証明付き住民基本台帳カードを取得する。(住民基本カードを持っていれば市役所ですぐに電子証明は取得できる)
3. カードリーダーの購入 〈\4000-5000〉程度
4. 上記準備が整えばPCで国税庁の確定申告作成コーナーで初期登録しあとはデータを入力し確定申告を作成する。
5. Onlineで申告書を送った後データをサポートする源泉徴収票や領収書を所定の用紙にのり付けして税務署に郵送する。 〈2007年度はこの点が改善され源泉徴収票や領収書を添付しなくてもよくなっている〉

私は一般のホームページでよく見られるようにサイト上でユーザーネームを入力しパスワードを設定すればすぐにスタートできると思っていたが上記の準備手続きだけで4週間かかった。
しかも (5)まで来て結局郵送するのと同じことではないかと思い電子申告をあきらめたのである。
最後に領収書等サポート書類を郵送するのであればe-Taxの意味がなく何の合理化にもなっていないし納税者・申告者にとってはむしろ不利益であると憤慨しながら鎌倉税務署に電話をかけ抗議した。
鎌倉税務署は「おっしゃるとおりです。 来年からはカードリーダー購入費用として\5000程度の返金を考えています」との返事だった。 今年はe-Taxを利用すれば\5,000の控除を受ける事が出来るらしいが私の意図するところは費用の問題ではなく普通のサイトと同じ様にログオンするだけでスタートできるようにして申告者の便宜を図ると同時に国税庁の事務合理化を計って欲しかったのだ。 そうしたからといってセキュリティが危ういわけではない。

さて今年の確定申告案内には上記に述べた若干の改善は見られるもののスタートする前にあまりにも面倒な手続き(まったく無駄な作業で個人と国税庁の仕事が増えるだけ)を要求されると個人の電子申告は全く普及しないだろう。

私はアメリカでもOnlineで確定申告(Tax Return Filing)しているがアメリカの確定申告は次のようなものだ。
1. インターネットでアメリカ国税庁(IRS)のホームページ(www.irs.gov)にアクセスする。 (申告所得が$54,000以下の人は協力ソフト会社のWebsiteから無料で確定申告が出来ると一番に記載されている)
2. サイトにリストされている協力ソフト会社は19社あり無料申告受付条件が簡単に記載されているので条件にあった会社を選ぶ。(所得水準、居住の州、州にFileするための費用が記載されている。連邦のTax Filingは無料だが州のFileには$10-$20の費用がかかる)
3. 選んだソフト会社のWebsiteでユーザーネームとパスワードを入れてアカウントをオープンする。
4. Tax Filing SystemのInstructionにしたがってデータを入力する。 入力し終われば数字を確認後クレジットカードかOnline Bankingで支払いを済ませ{Send Tax Filing}のボタンをクリックすれば確定申告は完了 IRSが受け入れれば早ければ数時間あとに、遅くとも2日後に確認のメールがくる。 

一般的な個人の確定申告であれば2時間もあれば充分だ。 簡単、迅速、確実でこれでこそ納税者も国税庁もe-Taxのメリットを充分に享受しているといえるのだ。

日本の電子申告の準備手続きがどれほどセキュリティに役立つのかはなはだ疑問である。 セキュリティにこだわり手続きを複雑にしすぎるとe-Tax本来の目的であるスピード化、簡素化が失われてしまうと思うのだが。

2008年3月5日水曜日

メディア 日本とイギリス (2) ハリー王子アフガンから帰国

3月1日 ハリー王子 アフガンから帰国

ニュースの概略
イギリス王室・ハリー王子は予てから強くイラクかアフガン勤務を希望していた。
昨年12月政府・王室がアフガニスタン派遣をOKした。
政府は「ハリー王子に関する情報は逐一提供する代わりにメディアは報道を自粛する」という紳士協定を結んだ。 
2月29日アメリカのメディアがハリー王子のアフガン勤務をすっぱ抜いたためイギリスメディアもいっせいに報道開始。 政府はハリー王子がタリバンの標的にされ所属部隊の仲間の兵士たちにもリスクが及ぶので急遽帰国を命じた。
ハリー自身は帰国を望まなかったし帰国して“Hero”と呼ばれることを拒んでいる。
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さてこのニュースに対する日本のメディアとBBCの報道は以下のようなものだ。
***読売も朝日も王子(Harry)の名前を“ヘンリー”としているが“ハリー”が正しい***

読売新聞の報道 ニュース 2月29日
“英ヘンリー王子、アフガンから帰国へ…報道で安全に問題”
 【ロンドン=本間圭一】英国防省は29日、チャールズ英皇太子と故ダイアナ元皇太子妃の二男で、アフガニスタンに派遣されている陸軍少尉、ヘンリー王子(23)を即時帰国させる方針を発表した。
 2月28日に一部外国メディアがアフガン派遣を報道したのを機に世界的に報じられ、王子の安全が確保できないと判断したという。
 王子は2007年12月から、旧支配勢力タリバンの活動が激しい南部ヘルマンド州に極秘に派兵された。英国防省は英メディアとの間で派兵期間を報道しないとの協定を結んだが、外国メディアには効力が及んでいなかった。王子のたっての願いで実現した戦場派遣は、わずか2か月あまりで取り消された。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080229-OYT1T00666.htm
朝日 2月29日  ヘンリー英王子、アフガンから帰還 メディアは英雄視
http://www2.asahi.com/special/iraq/JJT200702260002.html

BBC News March 1
Prince Harry has returned to the UK after being withdrawn 10 weeks into a front-line deployment in Afghanistan.
The prince landed at RAF Brize Norton in Oxfordshire, where he was met by Prince Charles and Prince William, and left the base after more than an hour.
The Prince of Wales spoke of his "great relief" at his 23-year-old son's safe return from Afghanistan.
Prince Harry's tour was cut short after a news blackout broke, leading to fears he would be targeted by the Taleban.

BBC News
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7271408.stm
BBC News Editor
http://www.bbc.co.uk/blogs/theeditors/
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イギリスのメディアは王子と部隊の安全を考慮して紳士協定(政府はハリー王子に関する情報は逐一提供する代わりにメディアは報道を自粛する)を10週間も遵守した。  これはあくまで自主規制であって万一報道するメディアがあれば彼らもいっせいに詳細を発表する体制をとっていた。 しかしアメリカのインターネット・メディアが報道するまで自主規制は10週間も続いたのである。 もしアメリカのメディアがすっぱ抜かねば一般兵士と同様の一定期間(数ヶ月)は勤務をつづけていたと思われる。
父プリンス・チャールスも普通の家庭の親たちと同様子供の安否を気遣い無事の帰国を喜んだ。 ハリーを誇りに思うと同時にまだ戦線に残っている兵士とその家庭に思いを寄せているとインタビューに答えた。

今回の報道はハリー王子の帰国のニュースだけではない。 
前線でハリーはなにをしていたか。
ハリーは部隊から惜しまれている
すぐには戦場にもどらないだろう。
私はHeroではない。
ハリーの次の仕事は?
BBCはなぜ報道を抑えていたのか。 Etc.
ハリー王子の記事であふれている。  充分に取材してリリースの時期を待っていたにちがいない。
多くのBBCに寄せられたコメントは99%がイギリスのメディアの紳士ぶりを絶賛しておりハリーのみならず政府や王室と共に国全体がイギリス株をあげた。 とてもいいニュースだった。

イギリスは古いものを大事にしている。 その古いもののよさを今に生かしている。 貴族制度もそのひとつであると思う。 その頂点にイギリス王室がある。
貴族は武士と同じでいざというときは命を欠けて先頭に立ち国のために戦うものと教えられている。 ハリーは優等生ではないし彼のやんちゃぶりは有名であるがやはり貴族の次男であることを証明した。 だからこそ彼の性格と行動は軍隊ではさぞ人気物だっただろう。 彼の今回の対応はイギリス王室の存在感を高めイギリス貴族の精神を誇示したものである。
ダイアナ事件以降人気が落ち目のイギリス王室であったがハリー王子は一人で王室の不人気を挽回した感がある。

さてこのニュースを聴いてすぐにわが皇室のことをあたまに浮かべたのは私だけではあるまい。
私は皇室を敬愛する日本国民の一人である。 戦後2代にわたり民主化に努められてこられた昭和天皇・皇后と平成天皇・皇后両陛下のご努力と誠実さには頭が下がると同時に自然と尊敬の念が沸いてくる。
しかし最近どうも自分自身の気持ちが以前と違うのだ。 具体的にに言えば次の世代の担い手である皇太子のご家族に(TVの映像のみの印象であるが)親しみが沸いてこないのである。 このことを率直に友人にぶつけてみると最近週刊誌がかなり批判的な記事を続けて書いているという。 彼自身も皇太子の言動や妃殿下の行動には納得がいかない点が多いという。 

私は週刊誌は全く読まないし雑誌も滅多に読まないから皇室に関する情報は僅かにTVの映像とインターネット情報しかない。 一般の人に比べればはるかに情報は少ない。 私の目と数少ない記事から全体を読み取るしかないがかえって惑わされずにストレートに物が見えるように思う。 
皇太子殿下は台本どおりのスピーチとインタビューしかない。 皇太子妃殿下が自分の言葉で滑らかにしゃべったことを聴いた事がない。  愛子様の自由なおしゃべりを聴いたこともない。  妃殿下の病気が影響しているのかもしれないがTVの映像からは溌剌とした子供らしさや愛らしさが見られない。  幼いといえども帝王学を学ばれているはずだが立ち居振る舞いにもその皇室の気配が感じられない。 昔の天皇家はこんな様子ではなかった。 何処と無く気品にあふれしかもキリっとしていたと思う。 こんな批判的見方をするのは私だけだろうか?
天皇様も皇后様もTVでお顔を拝見するかステートメントを読まれるのを聴くだけであるがやさしいお心が伝わってくる。  敬愛される皇室、それだけで充分お役目を果たされていると思う。 
もし国民が皇室に対する敬愛の情を失うようなことになればたとえ憲法に記されているとしても皇室制度は存在する意義を失ってしまう。 皇室・皇太子の家族に対する私の心配が私だけの取り越し苦労であればよいが。

皇室は日本国民のRole Modelにならなければならない。 それは家族として個人として100%優等生を演じることを意味しない。  我々と同じ人間として喜びや悲しみや苦しみを分け合いながら果敢に人生に挑戦し幸せを築いてゆく人間や家庭の姿を見せてほしいのだ。  

イギリスの王室を見れば判る。 全員が優等生ではない。 女王はじめチャールス皇太子もウイリアムス王子も自分の人生と葛藤しながら人並み以上に苦しみや悲しみを味わっっているはずだ。 同じ人間としての共感がある。 ハリー王子は政府・王室が反対しようとも自分の好きな人生を歩もうとしている。 だから王室は敬愛されている。 

皇室の問題はそれがプライベートなものであってもプライベートな問題ではない。 
日本のメディア〈特に大新聞〉は皇室や国民に遠慮せずいったい皇太子一家に何が起こっているのかすべてを追及報道して欲しい。  興味本位で覗き見をするのではなく問題がシリアスであれば真剣に改善策、打開策を打ち出して欲しい。  
たとえ離婚や皇室離脱といっても今の世界では驚くにあたらない。 天皇陛下や皇后陛下をいたく心配させ悲しませる結果になるかも知れないが皇室を救うにはそれしかない。

メディア 日本とアメリカ (1)  NYフィル 北朝鮮訪問

メディア 日本とアメリカ

アメリカに来て約半年になるがこれといった日本関係のニュースを聴いた覚えがない。
ニュースがないということは基本的に日米関係は悪くないと考えてもいい。 だが良しにつけ悪しきにつけ話題にならないのはすこし寂しい気がする。  もっとも日本は政治的にも経済的にも優等生で問題を起こさないからアメリカは安心しているのかもしれない。

ニュース全体では現在は大統領選挙関係が圧倒的に多い。 国際ニュースでは大まかな推定でイラク戦争・イラン・アフガニスタン・パキスタン+イスラエル・パレスチナ問題など国際紛争に関するニュースが30%、中国の政治・経済・軍事関係が20%、 ロシアを含むヨーロッパのニュースが20%、その他が30%というところだろう。
国別では中国がダントツの一位 食品・玩具・薬品など商品の安全性から金融・貿易まであらゆる分野で問題があり、軍事・外交ではアメリカとしのぎを削っているわけだから関心が集中している。
中国抜きでは政治も経済も回らないのでアメリカの対外政策の中心は中国であり日本は忘れられても仕方がない。

国際ニュースの取り上げ方は各国の拘わり方、立場によって随分違う。 またメディアの基本姿勢、記者やレポーターの質、報道の仕方などにより必然的に異なってくる。
最近の二つの出来事を日米英のメディアの記事を比較してみてその違いがよく判った。

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News No.1  NY フィルハーモニー 北朝鮮でコンサート 2月26日
ニュースの概略
NY フィルハーモニーは民間としては初めて北朝鮮を訪問しコンサートを行った。
コンサートは観衆の感動を呼び指揮者を始め楽団員も大変意義のあるコンサートであったと喜びを隠さない。 コンサートは韓国、アメリカにも同時放送されるといった異例の措置であった。

(2008年2月26日 読売新聞の記事)
NYフィル、平壌で初公演…金総書記は姿見せず 
米国の名門オーケストラ、ニューヨーク・フィルハーモニックが26日夜、平壌中心部近くの東平壌大劇場で公演した。
北朝鮮の党、政府幹部ら約1500人が鑑賞するなか、米朝両国の国歌も演奏された金正日総書記が鑑賞するとの観測もあったが、結局、姿を見せなかった。
米国のオーケストラの北朝鮮公演は初めて。2007年夏の北朝鮮の招請に対し、同フィルが米政府の支援を得たうえで応じた。
公演では、同フィル音楽監督のロリン・マゼール氏がタクトを振り、ドボルザークの交響曲第9番「新世界より」、米作曲家ガーシュウィンの交響詩「パリのアメリカ人」などが演奏された。  アンコールで朝鮮半島の民謡「アリラン」が奏でられると、会場から大きな拍手が起きた。

公演の模様は米国や韓国などのメディアの協力で世界に配信され、韓国では生中継された。北朝鮮も国内のテレビで生中継する異例の措置を取った。
今回の公演には、複数の韓国企業が資金援助などでかかわった。各企業は具体的な金額を明らかにしていないが、韓国メディアの事前の報道によれば、アシアナ航空が移動に使う北京―平壌―ソウル間のチャーター機費用約7億ウォン(約8000万円)、韓国でのテレビ独占放映権を持つMBCテレビが公演料と団員の宿泊費などで4億~5億ウォン(約4500~5700万円)を負担したという。
 また、世界のオーケストラや音楽家の支援を続けている熊本出身でイタリア在住の日本人富豪チェスキーナ・永江洋子さん(75)も資金援助した。 
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080226-OYT1T00529.htm
(2008年2月27日 読売新聞社説)
核実験から1年半足らず。北朝鮮の核廃棄へ大きな進展があったわけでもない。そんな状況下での公演では、北朝鮮の派手な歓迎ぶりも空々しく映る。
世界的な交響楽団ニューヨーク・フィルハーモニックが、平壌で初の公演を行った。
単に、米国の「文化大使」としての公演ではない。昨年8月、北朝鮮側が招待し、米国務省の後押しを得て実現した。政治的な色彩の濃い公演である。
公演は、昨年10月の6か国協議で、「交流を増加し、相互の信頼を強化する」とした米朝間の合意に沿っている。しかし、核廃棄に向けた肝心の合意事項は約束通り果たされていない。
北朝鮮が核廃棄への行動をとらないのでは、金正日将軍を楽しませるために、米国が使節団を送ってきたと、専制独裁体制の政治宣伝に使われるだけだ、との批判がある。その通りではないか。 (原文はつづくがここでの掲載はここでストップ)
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読売 
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080226-OYT1T00781.htm
朝日 
http://www.asahi.com/international/update/0226/TKY200802260464.html
日経 
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/080302/kor0803021005001-n1.htm

朝日も日経も毎日も同じ様な論調で各記事はいたって事務的で愛想がない。  6ヶ国協議が行き詰るなか文化交流だけ進めるのは北朝鮮、金正日総書記を利するだけのことではないかと批判的である。
しかし日本は直接当事者ではなくとも一方は最も関係の深い同盟国アメリカでありもう一方は現在の問題の相手国・北朝鮮がである。 このような状況の中でなぜ両国がこのようなイベントを実行したのか新聞は解説していない。
もう少し深く考えてみる必要があるのではないだろうか。
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New York Times February 26
Philharmonic Stirs Emotions in North Korea

PYONGYANG、North Korea— As the New York Phiharmonic
sang out the opening notes of “Arirang,” a beloved Korean folk song, a murmur rippled through the audience. Many in the audience perched forward in their seats.
The piccolo played a long, plaintive melody. Cymbals crashed, harp runs flew up, the violins soared. And tears began forming in the eyes of the staid audience, row upon row of men in dark suits, women in colorful high-waisted hanbok dresses and all of them wearing pins of Kim Il-sung, the nation’s founder.
And right there, the Philharmonic had them. The full-throated performance of a piece deeply resonant for both North and South Koreans ended the orchestra’s historic concert in this isolated nation on Tuesday in triumph.
The audience applauded for more than five minutes, and orchestra members, some of them crying, waved. People in the seats cheered and waved back, reluctant to let the visiting Americans leave.
“Was that an emotional experience!” said Jon Deak, a bass player, backstage moments after the concert had ended. “It’s an incredible joy and sadness and connection like I’ve never seen. They really opened their hearts to us.”
The “Arirang” rendition also proved moving for the orchestra’s eight members of Korean origin. “It brought tears to my eyes,” said Michelle Kim, a violinist whose parents moved from the north to Seoul during the war. …. (to be continued)

記事は全体で上記の倍以上の長さがあり聴衆と楽団員の感動振りが伝えている。 音楽や芸術に国境は無くストレートに人々を感動させる。  文化交流そのものは政治的意図は持たないが結果として政治的役割やメッセンジャーとしての役割を果たす事がある。 今回のコンサートが1956年ソヴィエトを訪問したボストン・シンフォニーや1973年中国を訪問したフィラデルフィア・オーケストラのように音楽を初めとした相互の文化交流が始まり両国の雪解けのきっかけとなることを期待する。  
USA Today, Reuter, Times, CNN.comも同様 Positiveな姿勢でこの音楽交流を評価し今後の展開に大きな期待を寄せている。

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日本政府、日本国民、 日本のメディアは北朝鮮というと「拉致問題」と「国交正常化」強いこだわりがあるように見える。 私も関心がないわけではないがあまり拘りすぎると流動的な世界についていけないばかりが国際的に孤立し“世間知らずのボンボン”扱いされてしまうのではないかと危惧している。 
 
そもそも「拉致問題」を「北の核放棄」と同じレベルで考えてはいけない。
小泉元首相が訪朝し拉致された5人を帰国させそのまま引き止めてさらに家族の5人を帰国させたことは大成功であった。 それ以上を望むならば現在の外交的手段(手腕)ないし制裁手段に依存している限り進展を望むのは無理である。   
日本には最後まで拉致家族を救済する義務があるが手段としての選択肢がなさ過ぎるのだ。 戦後60年にわたる平和を当然のこととして外交努力を放棄してきた付けが回ってきたように思える。 特に北朝鮮に関してはその仮面をかぶった代表・朝鮮総連に50年間やりたい放題されっぱなしでどれだけ国益が損なわれたか考えてみて欲しい。  小泉元首相以外でやったことといえば1990年金丸訪朝団の「国交正常化」「日本による統治時代の補償」「南北朝鮮
分断についての補償」の約束である。 幸いこの約束は自民党の反対にあって反故にされたが歴史上最悪の外交交渉、無能外交の象徴的事件である。 言い換えれば過去の北朝鮮政権を支えてきたのはすべてを知りながら何もしなかった日本政府なのである。  

「拉致問題」は国家の主権が絡んだ重大な問題であるけれども影響するのはごく限られた国々、限られた人々、 しかも過去の問題で将来起こる可能性は少ない。 
一方「北の核問題」は日本だけではなく周辺国に対する直接の脅威および核拡散に関する世界的に重要な問題である。
しかも現在のようにイランやシリアなど核開発・保有をめぐって国際関係が緊張している中でこの問題の取扱がいかに大きな影響を及ぼすのか充分認識せねばならない。

日本政府は「日本は拉致問題解決なくして6カ国協議の決着も国交正常化なし」との強硬な姿勢を貫いているがそれが正しい選択であろうか。  外交は一次方程式ではなく幾通りもの答えがあるような高度の数学を解くようなものだ。 もう少し柔軟に考える方がよい。

ブッシュ大統領やヒル国務次官補が「拉致問題」は忘れていないというのは外交上のリップサービスである。 アメリカにとっては「核拡散防止」が「拉致問題」より100倍も重要なのだ。  (日本にとっても実はそうであるが誰も言う人がいない。 政府もメディアも世論の平均値に標準をあわせ正論を吐露しない。)  アメリカは最終的には北朝鮮は崩壊すると見ているもののそれまでに核の脅威が広がるのを恐れている。 核保有国が広がればアメリカのスーパーパワーも失われる。 これまでのアメリカの世界戦略を根本から見直さなければならない。   
アメリカは北朝鮮が崩壊するのは時間の問題と見ているからあえて武力行使しようとは思っていない。 外交努力は勿論だが大きな可能性は内部崩壊である。  ポーランドをはじめとする東欧諸国、旧ソ連も含めてすべてが西欧文化の浸透とビジネスによる内部崩壊で開放された。 北朝鮮は必死で情報をコントロールしているが国民が外の世界を知れば一気に崩壊するだろう。 文化交流はこの糸口を作る。 多くの人が世界を知れば知るほど崩壊と開放は早くなる。 芸術に対する人々の感動は純粋で素晴らしい。 政治に利用することは好ましくないが国を動かす力にはなる。  アメリカはここを見ている。   

日本の新聞は誰が資金を提供したかについて仰々しく伝えているけれど資金提供者の情報がそんなに重要だろうか。  わざわざ資金提供者をリストアップするぐらいならその人にインタビューしてこの事業をサポートした理由を聴くぐらいのことはして欲しい。 
最近両方の記事を読んでみて日本の新聞の国際ニュースは概ね外国メディアの報道の簡約である事がわかってきた。  日本のメディアは一般に情緒的、批判的、悲観的で記者個人の個性感性が感じられない。 簡約でもいいから外国メディアに見られるような活き活きとした人間性を表現して欲しい。

メディアは中立の立場でなければならないといって報道が無味乾燥なものになってはいけない。 好むと好まざるにかかわらずメディアはオピニオンリーダーであり世論の形成に大きな役割を担っている。
どうせ国民に大きな影響を与えるなら社説は勿論のこと一般の記事を通じて自らの意図を世間に訴えるような積極性があってもいい。 そうすれば新聞もTVももっと面白く賑やかものになると思う。

米大統領選挙(その16) クリントン巻き返す

3月4日 クリントン巻き返す

民主党
3月4日の予備選では追い詰められていたクリントンが3勝(ロードアイランド、オハイオ、
テキサス)1敗(バーモント)で大きく巻き返した。 しかし Delegtes の獲得数はオバマ1451vs.クリントン1365で僅かに差は縮まったもののやはりオバマが優勢である。 オバマは2週間前までのPollでは二桁の差をつけられていたがよくここまで追い上げたので内容はオバマの大健闘だ。 
残り12州の予備選は6月7日のプエルトリコまで続くけれど予備選では決着がつかず最終は8月25-26日のデンバーで行われる民主党全国大会まで持ち越されるだろう。 
最終的にはSuper Delegates(元大統領、副大統領、国会議員、知事など民主党VIPなど796人)が鍵を握っている。 Super Delegatesは何時何処でも投票可能でしかも途中で乗り換え可能、言い換えれば今までの投票数字は暫定的で党大会ではいかようにも変化するので予断を許さない。
3月5日現在Super Delegatesの獲得数はクリントン238票、オバマ194票だが今後Super Delegatesをめぐって予備選以上の両陣営の激しい票獲得競争が繰り広げられると思われる。

共和党
4州(ロードアイランド、オハイオ、テキサス、バーモント)で圧勝したマッケーンが共和党の指名を獲得した。 最後まであきらめずフェアプレイの選挙戦を続けたハッカビーには勝負がほぼ決っているにも拘わらず多くの支持者が集まり健闘をたたえている。 今後ワシントンでの活動が期待される。

共和党は候補が決ったが選挙の熱は高まるばかり。 各州の投票率は記録的である。 
テキサスではPrimary と Caucus がダブルで行われ一般投票に行った人が夕方から行われるCaucusに出席して2度目の投票が出来るといったよく理解できない投票制度をとっている。 今まで経験した事がないほど多くの有権者がCaucusに出向いたため一部では会場に入りけれない事態が発生、またレジスターに時間がかかってなかなか集会が始まらなかったなどと伝えている。

冒頭でのテキサスでのクリントンの勝利(51%vs.48%)はPrimaryの勝利でCaucusではオバマが(52%vs.48%)で勝利している。 Primaryでは3分の2の票数が割当てられCaucusでは3分の1の票数が割当てられる。 結果としてあまりDelegatesの獲得数には差が出なかった。 正式に云えば昨夜はクリントンの3勝2敗である。