Viewing Iowa Caucus
昨夜(1月3日)は夜7時から12時までCNNの選挙特別番組(Iowa Caucusの開票プロセス)をぶっ続けでみた。 アイオワについて殆ど何も知らない。 これからも知る機会は少ないと思う。
ちなみにアイオワ州のHPで調べてみると人口300万弱(白人の比率 ‐ 95%)、豚肉・とうもろこし・鶏卵の生産が全米第1位、大豆・牛肉の生産が全米第2位ということで代表的なアメリカの農業地帯であることがわかる。
4年に一度この州から大統領選の公式戦が始まるので注目されるだけと思っていたが民主党の独特の選挙方式と選挙民のCaucusに対すると情熱が選挙第1ラウンドの熱気を生みだしている。
民主党の候補者選びは単なる得票数のカウントではなく〈投票用紙を使わない〉各選挙区の候補者のもとに集まった支持者の数を管理者が数えて選挙管理本部に報告する。 得票比率が15%に至らない候補の票は残った候補者に再投票されるシステムだから時間がかかる。 特に今回のように上位候補者が競っている場合は第一回のカウントだけでは余談を許さない。
民主党候補の中でクリントン上院議員〈元大統領夫人〉、エドワード元上院議員、バイデン上院議員(外交委員長)、ロバートソンニューメキシコ州知事〈元国連大使〉はよくメディアにも登場するから以前から知っていたがオバマ上院議員は今回選挙が始まるまでは知らなかった。
共和党候補の中でジュリアニ元NY市長、マッケイン上院議員、トンプソン上院議員は知っていたがハッカビー元アーカンソウ州知事は知らなかった。
さて選挙の結果は
民主党 1.オバマ(38%) 2.エドワード(30%) 3.クリントン(29%)
共和党 1.ハッカビー(34%) 2.ロムニー (25%) 3.トンプソン(14%)
接線が予想されていたにもかかわらず共和党はハッカビー候補、民主党はオバマ候補、両党とも新人の圧勝だった。 選挙の分析結果を見ればなお面白い。
民主党のクリントンがオバマとエドワードの後塵を拝したのはSecond Roundの投票を殆ど取れなかったからだ。 クリントンの支持者は以前から確定していて資金と時間を注ぎ込んだににもかかわらず新たに支持者を獲得できなかった。 調査では女性の70%がクリントンを支持していない。 それに夫のビル・クリントン元大統領を含めて“クリントン嫌い”がかなり多いといわれていたがこれを証明した。 11月以降ヒラリー・クリントンの支持率急落をみてビル・クリントンが頻繁に表に顔を出すようになったが逆効果だった。
ヒラリー・クリントンは聡明でタフで政治の経験も積んでいる。 大統領になる資格は充分備えているように思う。 しかし彼女の演説には「私が大統領になったら・・・」「私は・・・するために大統領になる」「私が大統領になるための経験を・・・・」などと大統領になることが目的のように聴こえるので共感が沸いてこない。 演壇に並んでいる顔ぶれも夫ビル・クリントン、娘のチェルシー、オルブライト元国務長官、その他目慣れた取り巻きが並んでいて全く新鮮味が感じられなかった。 標語の“Clinton for Change” と矛盾していると云いたい。Caucus終了後の演説でも強気一辺倒で強がりとしか見えなかった。 いずれにせよ3位に終わったことはショックにちがいない。
一方オバマ議員は若年層の57%、女性の58%を獲得して新しい風のマジョリティを吸収した。 主要都市部で1位になったばかりでなく宗教色〈キリスト教〉が最も強く99%白人社会で保守的と見られている西北部のSeveral Countiesで1位を獲得したのはもはや時代が変わったとしか言いようがない。 私はオバマ議員は黒人だからこんな保守色の強い田舎の州ではとても勝てないと初めから決め込んでいたのが恥ずかしい。 オバマ候補は始めから人種の壁を意識しない候補でマイノリティを当てにしていないところが受け入れられた原因かも知れない。
彼は勝利宣言で「“評論家は今日のような日は決して来ない。この国が二つに分かれあまりにも幻滅に満ちているので共通の目的の元にまとまることは難しい”と云っていたのにここであなた方が今夜歴史的瞬間にそれを実現してしまった。・・・ これがすべての始まりだ!」 演説は党派を超えた格調高いもので好感と期待が持てた。 TVキャスターや選挙解説者も今までで最も良い演説だったと賞賛していた。 民主党サイドでの第1Roundとはいえ本当に歴史的瞬間かもしれない。
共和党の勝利者ハッカビーの演説もスムーズで自身に満ちていた。 声もよく乗りがよい。
ヒラリーの演説の直後だったので「私は・・・」ではなく「我々が・・・あなた方と共に・・・」
を強調していたように聞こえたのは気のせいだろうか。
Iowa Caucusは2131の小さな選挙区(Precinct)からなる。50人100人単位の小さなコミュニティが選挙区の単位だからこの日は親しい隣近所が集まって半日政治談議をして最後にコンテストの投票をするようなものだ。 獲得票が15%に満たなければその候補に投票した人たちは自分の候補はあきらめて再投票しなければならない。 15%以上を獲得した候補者のグループは彼等を自分のグループに引き入れるための勧誘をして最終自分たちの候補を決めるというユニークな選挙制度である。 自分の選んだ候補に投票する第一回の機会と他人の意見を聴きながら第二の候補に投票できるので投票が無駄にならず再大公約数がさ算出されるのよく考えられた選挙方法である。
彼らが選んだのはSuper Womanで資金力も豊富なヒラリー・クリントンでもなく第一ラウンド・アイオワに莫大な資金を注ぎ込んだミット・ロムニーでもなかった。
アイオワは田舎に違いないがこの州の人々はなんと素晴らしい政治のモデルと政治意識を持っていることか。 そして時代を先取りして新鮮な代表を選んだ。 今回のIowa Caucusをみてアメリカが選挙のたびにこの小さな田舎の州に注目する理由がわかった。
久しぶりに新しい風が吹いたようですがすがしい気分になった。