2014年10月16日木曜日

水彩画クラス(1)

Edomonds Art Studios Tourから一ヶ月ほどたってKim Caldwellのカレンダーを眺めていると自分も水彩画を描きたくなった。 Kimの水彩画の Class を検索すると第一回は2日後なのですぐに申し込んだ。毎週水曜日の夜、6時半から9時まで計6回 費用は$105、Supply Listもらって急いで道具を買いに走った。 何しろ中学以来60年ほど絵を描いたことがない。 指定のアートショップに飛び込み絵具、専用画用紙、筆など計20点ほど買い揃えたがプロが使う店なので品質はよいかもしれないがべらぼうに高かった。
道具を整えただけでいつでも絵が描けるようなうきうきした気分になった。 新しいランドセルに教科書と筆箱を詰め込み初めて小学校に通うピカピカの一年生のような気分だった。
受講生は20代から70代までの10人、男性2人、女性8人 今まで油絵を含め経験のある人が4人、あとは初めての人ばかり。 講師のKimは初心者が多いので1時間ほど道具と絵を描く準備、基礎的な色の塗り方を丁寧に説明、実演してくれた。 水彩画の画用紙を筆で何度も塗らして乾いてから上段にブルーをグラデーションをつけて塗り中段に赤を、下段には黄色を同じようにぬった。 いとも簡単に色つけしているように見えたが塗り終わってみるとそれがきれいな夕焼けの空になっていた。絵画歴28年のベテラン画家の筆さばきである。
Kim は「基礎が大事です。 誰もはじめから大作・傑作は画けません」と釘を刺すようにはっきりと言った。 「さあ皆さん何でも好きなものを好きなように描き初めてください」
と言われても私は何を描いてよいか判らないのでKim の描いた夕焼けを真似して描いた。
私の絵はくすんで見え曇り空になった。 



隣に座ったLindaは60代のおしゃべり好きで屈託のないおばあさん。 同じく初心者だが持ってきたのは絵具3色と筆一本、画用紙一枚とパレット代わりの仕切りのあるプラスチックの箱に筆を洗うための空き缶だけ。それでも絵の具だけは赤、青、黄の三原色をそろえているのでどんな色でも創り出せる。 講師のKimに「あなたはとてもスマートだわね」と褒められていた。 Lindaの描いた絵はLas VegasにあるRed Rock Garden だと言って青い空に赤茶けた岩山、サボテンを配し中央には雷が落ちて炎が舞い上がるような(意味はないかもしれないが)つむじ風のような次第に太くなるラインが描かれていた。 明るく楽しい絵だった。 何よりも彼女は描くことを楽しんでいた。
彼女が描き終わって席を立ち他の人の絵を見て回っているので私も一緒に他人の絵を見て回った。 他の初心者4人も道具はまちまち、プラスチックのお皿をパレット代わりに空き缶か、空き瓶、筆一本、花やら鳥やら風景をかって気ままに描いている。 幼稚園の「お絵描き」クラスのようである。 それでももともと絵心があるのか生き生きとして絵になっている。
講師のKimはそれを見ながらいろいろアドバイスをするのである。 このクラスは絵のOn the Job Trainingなのかもしれない。
私はいざ好きなように描きなさいと言われても何も思いつかず講師の真似しかできない自分の想像力のなさと勢いのない筆使いからして私は絵のセンスがないのかもしれないと初回から気後れしてしまった。
それ以上にリストされた道具をはじめから買いそろえなければならないという頭の固さ、道具をそろえて嬉しがっている自分がはずかしくなった。
アメリカの人は何事につけてもはじめから発想が自由で行動が自主的である。 私は長年アメリカに暮らしていてもいざとなると言われたとおりにしかできない習性が身についていてアメリカ人のように自由に自主的に行動できないのである。 
そもそもこのクラスに参加したのは<水彩画の技法>を学ぼう、技法さえ習得すれば私もKimのような絵が描けるはずだと言う安易で浅はかな気持ちがあったからだ。

絵を描くのはそういうことではなさそうである。私には何か大切なものが欠けていると初回で悟ったのはまだ幸いだ。 来週から気を取り直して再出発しよう。