2008年5月31日土曜日

米大統領選挙(その23)民主党党規委員会の妥協

フロリダとミシガンの取り扱い

予備選は来週火曜日までにあと3州(プエルトリコ、モンタナ、サウス・ダコタ)を残すのみとなった。 オバマが断然有利で指名獲得を目前にしている中でクリントン陣営はフロリダとミシガンの投票結果を考慮しカウントすることに唯一望みをかけていた。
両州とも本部の警告を無視して予備選を1月に実施したため投票結果を無効とし代議員の数をゼロとする制裁を課せられていた。

昨日民主党党規委員会はこの問題を非公開・公開両方で議論を重ねていたが本日まで結論を得ず本日TV中継のもとで公開議論を続け下記のような結論に至った。

両州とも代議員(Delegates )の50%をカウントすることに決定。その結果クリントンはフロリダ105、ミシガン69 合計174 オバマはフロリダ67、ミシガン59 合計126がそれぞれに振り分けられた。 (配分・比率の方法は判らない)
これは予備選の現状(オバマがほぼ決定的)と民主党本部の懲罰の方針を変えることなくフロリダとミシガンには投票権を与えるという現実的な折衷案が採択されたものだ。 数字的にはやはりクリントンが追随するにはほぼ不可能な数字であるといってよい。 TVの解説者もこれでオバマは99.9%指名が確実になったといい、実際にオバマ・サポーターはこの決定を歓迎している。
一方クリントン・サポーターはこの決定の瞬間から怒り狂い抗議がホテルの内外で行われるという荒れ模様となった。 クリントン支持のアイクス委員がヒラリーの指示でこの決定を党の公正委員会に提訴すると最後に捨てせりふを残し後味の悪い終幕となった。 しかもクリントン陣営はUndecided Super Delegatesには党大会まで投票するなと説得していて早く決着をつけたい党首脳を怒らせている。 とりあえず2人の指名争は実質的に決定、来週火曜日までの残り3州の予備選で数字的にも決定されるのでそこでオバマの勝利宣言が出てくるだろう。


結論は上記のとおりだが特筆すべきは民主党本部・党規委員会が一旦決めた制裁を修正してフロリダ・ミシガン両州に代議員を7月の党大会に送ることを認めこの問題の収拾を図ったことである。 本來ならば両州の規定無視が原因であり本部としての決議が行われた後であるので決議の変更・撤回は無視してもよいところであろうが反対意見にも耳を傾け再考慮して双方に面目が立つような結論を導きだしたことである。
何もかも本部決定がすべてではなく反対派の意見も聞き入れて修正するーこれも民主主義の大事な要素であろう。

2008年5月27日火曜日

Froh Heim (Mansion in May)

Mansion in May

5月にはMansion in Mayという催しがある。 
年に一回地域のランドマークになるような歴史的な大邸宅を一般公開する行事だ。
The Women’s Association of Morristown Memorial Hospital (WAMMH) という650名の病院関係の女性ボランティアの組織が主催している。 一般公開といっても部屋が20も30もある大邸宅を一ヶ月公開するので単なるオープンハウスのように簡単ではない。 天気のよい週末・休日には1,000人を超す来訪者がある。 車は数百台になるだろう。 だから多くのボランティアが必要となる。 
組織の運営や広報はWAMMHが行うがパーキング整理、シャトルバスの運転、ティケットの販売、部屋の案内などはローカルのお年寄りが担当している。 各部屋のデコレーションと管理は部屋ごとに地域のインテリア・デザイナーたちが担当し(その代わり自分のビジネスをPRするパンフレットを置くことができる)庭園・プールはこれまた地域の造園業者が担当する。 一般公開といえどもビジネスのPRもかねているわけだ。 (ちなみに入場料は$20-$30するが経費を除いて病院や学校に寄付される)
アメリカの人は組織の運営も上手だしコミュニケーションやプレゼンテーションも慣れている。 初めて顔を合わせても非常にフレンドリーに説明してくれるし質問にも答えてくれて気持ちがいい。 
アメリカにはこのようなボランティア活動をする組織が多くありローカルの病院や福祉施設の運営に協力すると共に人々をつなぐ大切な役割を果たしている。 

“Mansion in May”は今年で14回目を迎えるそうだ。 この地域にはそれだけ数多くの見せられる物件があるということだ。 しかし2代-3代にわたってこのような大邸宅を維持するのは並たいていのことではない。 実はこのマンションも売りに出されることになっている。
昨年12月4日のブログで「Moorland Farmは今もFar Hills駅舎と共にBedminsterのLand Markとして残っている」と書いたがちょっと怪しくなってきた。

このマンションは“Froh Heim”と呼ばれドイツ語でHappy Houseという意味である。 1887年ニューヨークからやってきた実業家Grant & Elizabeth Schleyがここの景色が気に入って家造り、町造りを始めた。 

Far Hills/Bedminsterを開発したSchley夫妻の家がこのマンションである。





石造りの南欧風建築も素晴らしいが特に庭園とプールが美しい。丘の上に立っているから眺めは抜群、なだらかに下る牧草地の先に彼がつくったFar Hillsの駅が見える。
牧場とこれに併設されているバーン(農事家屋)を除いた10エーカーのこの家がわずか$8.5 Mil で売りだされていると聴いてびっくりした。 すぐ売れるだろうと思ったがそうでもないらしい。
以前にも述べたが元のオーナーであったAT&Tが売り出すときにも将来の転売の際はパブリック目的以外に開発しないことを条件としていたためコマーシャルベースでは採算はおろか開発さえできない状態ではないか。 しかもこの堅牢な建物はすべて石造りで改造するにも取り壊すにも非常に難しいのではないかと思われる。 

このままの美しい状態を保つにはまた公的機関が買取るしか方法はないだろう。 いつまでもこのままでFar Hills/Bedmisnterのランドマークの役目を果たしてほしいものだ。


2008年5月23日金曜日

ガソリン価格高騰

ガソリン価格高騰の影響

原油とガソリンの価格が連日上げ続けている。 5月23日現在原油価格は$138/バレル、ニュージャージー州のガソリン価格は本日平均$3.76/ガロン(一年前は$2.96/ガロン) どこまで上がるのか誰にも判らないがもう一年前の値段には戻らないだろう。

ガソリン価格の上昇はまず車通勤の人の財布を直撃する。 最近の車は燃費がよくなったので平均25マイル/ガロンとする。 自宅から20マイルはなれたオフィスに通勤する人は年間250日オフィスを往復するとして年間400ガロン消費する。 ガロンあたり$1.00 上がれば$400通勤費が増すことになる。  トラック運送業者やタクシーは走ることが商売だからコストは激増、収入は激減、トラック運転手は走れば走るほど赤字だといっている。 トラックがストップすれば経済は破綻するから止めるわけにいかないのでいずれ運賃は上げざるを得ない。 
運賃のみならず原油の高騰はすべての原材料のコスト高になって表れるのでスタグフレーション(不況下のインフレ)になるのは避けられない。 
国民が生活防衛に走り出したのはすでに統計に表れ各産業も企業防衛に動き始めた。

今年4月までの自動車販売台数は昨年比8パーセントダウン、コンパクトカーが33パーセントもアップした一方、大型SUVは29パーセントもダウンした。 明らかにガソリンを食う大型車は敬遠され小型車に乗り換えているのだ。 中古車も大型車は売れないから新車の価格にまで影響し2-3年前まで人気のSUVも大幅に値下げ、それでも売れないらしい。

フォードは5月22日これに対応して大胆なリストラ策を打ち出した。第2四半期15%生産カット、第3四半期15-20%カット、 第4四半期2-8パーセントカット 主として大型SUVと大型トラックを削減するようだ。 すべてガソリン価格の高騰で売れなくなってしまった車種である。 

一方トヨタと松下はハイブリット車用電池の生産量を2011年をめどに現在の2倍の100万台に引き上げる計画を発表した。 トヨタは2010年代の早い時期にハイブリット車を年間100万台販売する計画を持っておりこれに対応する電池の供給体制を整えるためである。

ここでも日米自動車メーカーの勢いの差が表れている。 トヨタやホンダは着々と将来に向けた開発を怠らず現在のような自動車産業にとって向かい風の時期でも販売を増やすすべをもっている。 一方アメリカの自動車産業は赤字続きで現行車でさえ魅力のある車作りができておらず販売台数が稼げる大衆車と利益幅が大きい高級セダンのマーケットを日本車と欧州車に奪われてしまった。 技術でもデザインでも日本と欧州の後塵を拝している理由はどこにあるのだろうか。 

私は過去半世紀にわたりビッグ3という大きな名前の上にあぐらをかきいつしか競争とチャレンジの精神をなくしてしまったように思われる。 如何にアメリカのマーケットが大きいとはいえ寡占化された市場は守りの姿勢が主になれば活力を失うものである。 GMのキャデラックもフォードのリンカーン・コンチネンタルも老大国の象徴のようになってしまった。 
もう誰も振り向かない。

2008年5月21日水曜日

米大統領選挙(その22) オバマ指名獲得へ

オバマ指名獲得へ

5月20日 予備選大詰めで下記の2州の選挙結果がでた。

            Obama     Clinton
Kentucky     30%       65%
Washington   68%       31%

オバマは一般代議員の過半数(1627)以上を獲得しSuper Delegatesを含む全体の過半数(2026)獲得-指名獲得に向けて一歩近づいた。

両州で同日行われた予備選の結果はどうしてこんなに違うのか。
Kentuckyは従来型産業が多く労働者の多くは組織化・組合化(Union)されている。 Unionに強いクリントンの力がもっとも表れた州である。 特に現在は不況で失業者も多い。 比較的低所得、低教育、高齢者が多くクリントンの支持層が全体としてそっくり当てはまる。
Washingtonはハイテク産業中心で平均所得はKentuckyの2倍、組織労働者の割合は少ない。 教育程度も高く若年労働者が多い。 全体としてオバマ支持層に合致する。
どちらも白人州だから人種的要素は殆どない。

遅れた地域や特定の問題があるところを手当てするのも政治なら先進地域の経済をサポートし環境を整備、投資を呼び込むのも政治である。 しかし遅れた地域のサポートを政治の中核にすると社会に活力は戻らない。 先進経済と投資にばかり偏重すると社会問題はますますひどくなりひいては経済活動も阻害される。 要するに政治はバランスであり特定の階層、産業、社会、人種に偏っては健全な社会の発展はない。 

このような視点から見ればオバマは国政レベルでの経験は少ないが彼の政治思想が全体のバランスを取ることであり複雑な利害が交錯するアメリカを効率的よく調整しかつ新時代へとリードしていくにはオバマが最適であると思う。

ヒラリーが民主党指名がほぼ決着したと見られる2週間前ごろから党内の予備選撤退勧告をものともせず最終プエルトリコの予備選が終わる6月3日までキャンペーンを止めない、予備選からドロップアウトしないと明言している意図はどこにあるのか。 すでに算術的にはオバマに追いつき指名を獲得するのが難しいといわれている中でどうしてこんなに支持者を集め選挙(Popular Votes)そのものでは拮抗しているのだろうか。

クリントンは5月6日のN.カロライナ、インディアナの予備選以降目だったオバマ攻撃をしなくなった。 ヒラリー陣営が新たにキャンペーンのトップに持ち出したのは「すべての人は投票する権利がある」「すべての州が投票する権利がある」 だから最終プエルトリコの予備選が終わるまで撤退しない。 民主主義の大原則“すべての人が投票する権利と機会をもっている” このキャンペーンは効いた。 私もこれには大賛成、ヒラリーは最後まで頑張るべきだと思う。 今まで支持してくれた多くの人のためにも、またこれから支持し投票しようとする人たちのためにも。 ヒラリーは個人的にもオブリゲーションを感じているのではなかろうか。

この原則にかかわるもうひとつの論点は票がカウントされないフロリダ州とミシガン州の問題を持ち出したことだ。 両州は予備選の時期を勝手に前倒しにしたことで民主党本部から懲罰を受け投票しても投票結果は組み入れられないことに決定されている。 民主主義の原則を持ち出して再選挙しようという目論見であろうが途中でルールを変更することは許されない。
それにしてもクリントン陣営とヒラリーのしぶとさ、苦境の中でも決して弱音をはかない強靭な精神力、弁舌の巧みさ - 日本の民主党も見習ったらどうだろう。
もし相手がオバマでなければ、夫がビル・クリントンでなければ、ビルと離婚しておれば予備選はヒラリーの楽勝に終わっただろうなどと事実を横において勝手な妄想を誘うぐらいヒラリーの頑張りは素晴らしい。 
オバマ、ヒラリーこの2人が5ヶ月デッドヒートを続けたからこそここまで予備選が盛り上がり、今まで政治に無関心だった若者たちを記録的な数字で政治に呼び戻した。 
若者こそアメリカの変革を担う中心なのだ。 この意味で2人の功績は大きく大統領になると同じくらい価値のあるものだ。

2008年5月17日土曜日

LPGA Tournament

LPGA Tournament

今週のLPGAトーナメントはニュージャージー州クリフトンで行われているので見に行った。
今日は土曜日、気温は22℃ 少し風はきついが五月晴れでこの上ないゴルフ日和である。
 
お目当ては今年すでに5勝しているLorena Ochoa今年限りで引退するとアナウンスしたAnika Sorenstam, 日本の宮里藍、上田桃子。 

まずパッティンググリーンに行くと上田が練習していた。 初めて見たが体が小さいのに驚いた。 あれでよく250ヤード以上飛ばせるものだと改めて感心。 (後でティーショットも見たがよく飛んでいた) 
ドライビングレンジには韓国の選手が3人いたが体格がいい。 韓国の選手はバネがあり振りがシャープだ。 それにしても最近のLPGAにおける韓国女子プロパワーはすごい。 今回も念のために選手の数を数えてみると139人の参加選手のうち22人が韓国出身である。 層が厚い上に実力もあるので常にトーナメントではトップ10に2-3人は入っている。 どうして韓国の女性はゴルフに強いのだろう。

1人でゴルフを見に来ると気の向くままに選手を追い、気に入った場所でじっくり観戦できるからよい。 男子プロはパワフルすぎてわれわれ素人には参考にならないが女子プロはまだわれわれに近いので参考になる点が多い。しかも自分が勉強したいポイントがライブで観察できるので非常に参考になる。

 
LorenaはTVで見るより背が高い。 細身ではあるが170cm近くあるだろう。 他の選手が大体大きいので小柄に見えたのかもしれない。 彼女の特徴はスイング軸がぶれないこと。普通にスイングしているように見えるがトップからダウンスイングに入るタイミングがシャープでここで力を溜めてスピードのアクセレレーションが生まれているように思う。パットも一直線に転がるようで勢いがよい。 いらないことを考えずたんたんとスイングしてたんたんとパッティングする。 だからよく飛んでパットもよく入るのかもしれない。 
Anikaが今季限りで引退するらしいがまだまだ実力は一流、現に今季すでに2勝して証明している。 彼女もたんたんとしたゴルフで際立って“ここが違う”というゴルフではない。 取りこぼしのない確実なゴルフである。 LorenaとAnikaに共通しているのは安定性があり取りこぼしが少ないということだ。 ゴルフの真髄はそれかもしれない。

このところいろんなスポーツで力を残して引退するケースがふえたがそれもよし。 スポーツ選手は引退といってもまだまだ30代-40代なのでスポーツ以外のいろんなことにチャレンジできるだろう。 一流選手は何をやらしてもできる人が多いのは“仕事のやり方”を知っているのと精神的にぶれないからだろう。

宮里藍はちょっと陰がうすくなった。 ショットもパットも切れがない。 何か迷っているようにも見えるしところどころにポカがでる。 大きい選手に囲まれて心身共に圧倒されてしまったのかな。 彼女はスポーツ選手としては回りに気を遣いすぎ。 まじめすぎるように思う。

宮里も上田も今日を終わって3アンダーと10位タイにつけている。 昨日は雨で試合は取消しとなり本来4日間のトーナメントが3日間に変更された。 決勝はあす日曜日のみとなる。 トップはOchoaの9アンダーであるから追いつくのはちょっと無理かも知れないがぜひトップ10に残るよう頑張ってもらいたい。

2008年5月16日金曜日

地球温暖化と自然大災害

地球温暖化と自然大災害

地球温暖化による気候変動はわれわれが想像している以上のスピードで進んでいる。
2月28日のブログでアメリカの大竜巻のメカニズムと被害について論じたとき今後大きな自然災害が多発するかも知れないことを警告した。 3ヶ月もしないうちにこの予想が当たってしまった
それにしてもこのところアメリカ中部(オクラホマ、ルイジアナ、アーカンソー、ミシシッピ、アラバマ,カンサス、ミズリー)では大型竜巻が立て続けに(ほぼ毎日)発生している。 前線が通るたびに竜巻が発生するのは異常としか言いようがない。  
竜巻は大陸内部で寒冷前線が南下してくるときに南から北上してきた温暖前線に衝突して大気のバランスが崩れ巨大な空気の渦巻きができて発生する。 特に大陸内部では寒暖の差が激しく大きな空気の段差ができて大型の竜巻がとなる。

5月4日にミャンマーを襲ったサイクロン、5月12日に起きた四川省の大地震、アメリカで毎日のように発生している大竜巻、私に言わせればいずれも地球温暖化の影響である。
地球上に大きなエネルギーがたまり過ぎるとサイクロンも台風もハリケーンも大型化する。
海面/海水温が高ければ低気圧がエネルギーを吸収して発達するのだ。 
日本はまだ大型台風で被害を受けていないがこれから台風シーズンに入るので注意が必要だ。

地震も地球温暖化の影響で地表にたまったエネルギーが地中に浸透し地球のプレートが膨張しているためである。 地震も大型化し頻繁に発生するだろう。

地球温暖化は長年の人類の生活から発生した現象(化石燃料を燃やすことによって得た熱エネルギーを利用した生活)であるから対策を打ち出したとしてもすぐに世界中の生活システムを変えるわけには行かないから効果が現れるのは何年も先のことである。 しかも現在はまだ増え続けているのだ。  対策だけでなく早く地球規模で実行しなければ手遅れになる。

2008年5月12日月曜日

サブプライムローン

サブプライムローン

最近の大きな出来事でなかなか理解しがたい事件がサブプライムローンによる金融システムの混乱である。
この事件は誰かが法律を犯したわけでもなく、強制した事件でもない。 複雑な裏取引があるわけでもなく過去に例がない経済事件や経済システムの話でもない。

多くの個人から多くの金融ブローカー、大銀行、投資銀行まですべてが絡み、すべての人が納得して行った金融ビジネスなのになぜこんな世界の金融システムを揺るがすような大事件になってしまったのだろうか。

サブプライムローンという住宅金融は最近始まったものではない。 個人に貸し付ける住宅ローンは個人の信用度によって金利が異なる。 一般に低所得者に貸し付けるのはリスクが高いから貸し渋るかリスクをカバーできるだけの高金利で貸し付けるかのどちらかである。
従来ならば返済能力に乏しい低所得者にはローンしないのが当たり前の話だったが低金利時代の到来と政府の住宅政策によって低所得者にも比較的容易にローンができる環境が整った。

個人的な話だが私はアメリカで1970年代に始めてアメリカで住宅を購入し転勤と家族構成の変化に伴って80年代に2回90年代に1回それぞれ買い換えてきた。 そのときすでに住宅ローンは30年の固定金利と変動型金利が存在しローンを組むときにどちらにするのか選択を迫られた記憶がある。 私は高いときは10%以上から6.25%までそれぞれ経験しているが金利の予想など本来個人には無理な話でそこまで考えてローンを組んだわけではない。
ただし変動型はリスクが多いことは十分承知していたので当然30年固定金利でローンをした。

最近の超低金利時代ではプライムレートが3%で一般の住宅ローンは30年ベースで年5%でオファーされているとしよう。
サブプライムローンはベースが6%(プライム+3%)だが初めの3年間は3%でOK、4年目以降はプライムレート+4%とするというローン契約である。 
4年目にプライムレートが5%になったとするとローン借入者は4年目から9%の金利を支払うことになる。 支払い金利が4%からいきなり9%になっては支払不能になるのは当然だ。

わずかな頭金で支払い金利が3%であればたいていの人が家を買える。 しかも不動産インフレで価格は毎年上がっている。 万一4年目以降支払いが不能になってもそのとき転売すればキャピタルゲインが出て儲かると考える。 個人から不動産ブローカー、住宅ローン会社までほぼ全員こういった感覚ではなかったか。 まさに不動産バブルである。

住宅ローン会社はもともと融資したくなかった信用度の低い個人に融資するわけだからリスクが高いことは承知している。 だから彼らはリスク回避のためこの債権を早く大手銀行に売ってしまう。 大手銀行はリスクが高いことを知りながら高い金利が魅力で買取りさらにリスク分散のため他の債権と共にミックスして証券化し他の金融機関に売ってしまう。 それが世界規模に広がってしまった。 
サブプライムローンはババ抜きのババみたいなものでトランプゲームのババはワンセットに一枚しかないがサブプライムローンのババはほぼババばかりで全員がババつかみになった。
第3ステージ以降はどこにババがあるのさえわからなくなっていたのではあるまいか。
ババが入っている証券は取引しにくいうえ、全員がババもちだからババもちにババを売るわけに行かない。 ババをから必要以上に価格が下がる。 だから大銀行がそろって巨額の損失を出したのではないか。 
しかしたかがサブプライムローンでこんなに損失が出るものか誰か算術的に解説してくれる人はいないだろうか。

では悪いのは誰だ? サブプライムローンのビジネスシステムは異常ではない。 誰もが承知の上での取引である。
ローンの借り手(個人)は少なくとも将来金利が上がれば具体的な金額は別として支払いが増えることは理解していたはずである。 
ローンの貸し手(住宅ローン会社)は支払い能力の低い低所得者であるから金利が高騰すればまたは4年目に大幅に金利部分の支払いが増えれば支払い不能になる可能性が高いことを理解していたはずである。
住宅ローン会社からローンの債権を買取った大手銀行はリスクの高い取引であることを理解していたはずである。 しかも住宅ローン会社は大手銀行の大口貸付先であった。 
大手銀行はリスク回避のためこの債権を転売したいがこのままでは販売が進まないので他の優良債権と共に組合わせて他の金融機関に売さばいたというのが実情であると思われる。

サブプライムローンの取引も従来のようにローン債務者と第一次ローン債権者の間にとどまっておればこのような広範囲に金融混乱が広がることはなかっただろう。 
一般にアメリカの個人の貯蓄率は非常に低い。 アメリカ人の考え方は常に楽観的だが債務者は安易に過ぎたことは否めない。 また住宅ローンの金利支払い部分が所得税控除の対象となっているアメリカの税制が少なからず影響を与えているに違いない。 
住宅を購入したい人々は無数にいる。 住宅ローン会社は競争相手のない顧客に未曾有の低金利でローンを供与するのであるから取引は容易である。 しかし取引が拡大すればするほどリスクが増えるのは知っていた。 そこでローンの債権を証券化して販売しリスクを軽減した。
第一次的な破綻の責任は個人と住宅ローン会社にある。 ここまでなら個人と高利貸しとの関係、またはサラ金システムと大差はない。

しかし大手銀行はこのリスクを知りながらこの債権を意識的に世界中にばら撒いたことは詐欺に似ている。 結果的には自らの首を絞めることになってしまった。 これが金融システムの混乱の原因である。 巨悪は目先の取引拡大と利益の獲得に走った大手銀行ではないか。
大手ほど会社の社会的責任は大きい。 まして大手銀行は半分公的存在に等しい。
もっと社会的責任を自覚してほしい。

しかしどうしてこんな巨額の損失になってしまったのか、金額的にまだ理解できない。

これが私の理解であるが間違いであれば指摘していただきたい。

2008年5月8日木曜日

アメリカの社会保障制度 社会保障番号の重要性

アメリカの社会保障制度

-社会保障番号の重要性-

Social Security System の詳細を知らなくてもSocial Security Number (SSN-社会保障番号)は誰でも持っている。
アメリカで働こうと思えばまずSSNを取得せねばならない。この番号を持っていないとアメリカでは何もできない。 
これは日本で言ういわゆる背番号制であって国籍の如何にかかわらず登録すれば誰でも取得することができる。 
SSNは税金納付、年金受給のほか電気、ガス、水道、各種保険の申込み、銀行口座開設、学校の登録などほぼすべての手続きに要求される。 社会保障番号は頻繁に使うので殆どの人は自分の番号を覚えている。 この番号は9桁だから電話番号を覚えるより簡単だ。この番号をもとに写真付IDとサインを確認すれば本人確認はまず間違いなし。
個人の信用度もインターネットでSSNを入力すれば判明する。 個人相手に銀行や他の企業がビジネスを開始するに当たっても簡単に信用度をチェックできるからずいぶん効率がよい。 国中がこの番号ひとつで個人の管理を行っているから国全体の経済効率は図り知れない。

日本も1980年に背番号制の導入を図ろうとしたが当時の金丸副総裁の一言でお蔵入りになった。 (プライバシー保護を理由に挙げていたが実は自分の脱税が発覚するのを恐れてのことだった。) 背番号制をプライバシーの侵害・保護と同列に扱うこと自体がおかしな論議であって背番号制が施行されなくとも年金問題などでプライバシーの侵害は起っておりプライバシーの問題は管理体制の問題である。
国家としてずいぶん無駄ないことをしたと思うのはこの背番号制を導入しておればこのところ国民の最大の関心事となっている年金問題も起こらなかったかも知れないしたとえ問題があったとしてもいとも簡単に解決できただろう。

アメリカの年金の原資は給与所得に課せられる社会保障税(Social SecurityTax)である。 雇用主と被雇用者がそれぞれ6.2%ずつ負担する。《給与の上限枠$90,000》  それ以外に老齢者医療保険(Medicare)をカバーするための原資として同じく給与の1.45%が課せられる。 

1990年代の初めごろは今の日本のようにSocial Securityの危機が心配されていたけれど最近は誰も心配しているといった声を聴かない。 1990年代の後半から2000年台の初めにかけてアメリカの経済が好調で税収が伸び国家予算が黒字化したことによるのかも知れないが現在はイラク戦争で巨額の戦費を必要としているため再び大きな財政赤字に陥っている。 しかも経済が不況に突入、歳入が減り年金以外の社会保障費が増える傾向にあるので再びSocial Securityの危機が顕在化してくるのではないか。

2008年5月7日水曜日

米代大統領選挙(その21) インディアナ & N.カロライナ

Indiana & North Carolina

5月6日のインディアナとN.カロライナの予備選は最後の大きな票田での決戦で大きな意味をもっていた。 結果はインディアナ州 51% vs. 49% でクリントンの勝利、N. カロライナ州は56% vs. 44%でオバマの勝利となった。 1勝1敗の引分けだがクリントンが両州を大差で勝たねば指名獲得のチャンスはないといわれていただけにオバマにとっては
指名獲得競争でほぼ勝利を確実にした大事な選挙であった。

オバマの勝利(指名獲得)は民主党にしてもアメリカにとってもよい選択であったとおもう。
理由はヒラリー・クリントンに対するNegativityの調査の結果が71%と異常に高い。 ヒラリーは大統領としてふさわしい能力を備えているがあまりにも反対意見が多すぎて国をひとつにまとめていけないとおもわれるからである。 具体的にいえば
1. ヒラリーは個性がtoo strong & aggressiveで共感がもてない。
2. クリントン夫妻が再びホワイトハウスに戻れば現在のアメリカの倦怠感を払拭することができない。
3. あまりに特定層-ミドルクラス(実は国民の半分以下、または低所得層を意識しての発言)を対象にした政策ばかりで分配論に偏りすぎ財政赤字の拡大と経済成長の阻害が心配される。
4. 選挙キャンペーン中の経済政策は論拠に乏しい“人気取り・ばら撒き政策”であり場当たり的な政策を安易に公表するのは国民を低く見ている証拠であり信頼性に欠ける。

予備選後半に入ってネガティヴ・キャンペーンが目立ったがPollの結果では主に仕掛けたのはクリントン陣営と見られている(71%) 特にキャンペーンの失敗は夫のビル・クリントンの攻撃的言動にかかわることが多く、中間・独立層の反感を買ったのが大きな敗因だと思われる。

これを契機にSuper DelegatesのEndorsement が加速するものと見られている。